第472回日本テレビ放送番組審議会は、10月2,9日放送の『ダンダリン~労働基準監督官~』に関しての合評が行われました。
『ダンダリン』は、働く人を守る、働く人を守るルールを守るために働いている「労働基準監督官」の仕事を通して、働くということは何かを考える番組です。
- 労働基準監督官の仕事を全く知らなかったので、興味深く見た。ブラック企業や労働問題など、時代に合ったテーマだと思ったが、引っかかってくるものが少し少ない感じがした。最近、アクの強いドラマが多いので、弱く感じたのかもしれない。
- 一匹オオカミ的なヒロインの設定から、今のドラマの王道を行っている堅実な作りだが、逆にそれがパターンとして見透かされてしまうようなところがある。そういうものを一度ご破算にして、逆の方向に行く考えもあるのではないかと思う。
- 役所ならではの、凄いとんでもない対応などを見てみたい。また、「日本人って、こんな変な働き方をしちゃうんだよ」みたいな、外国人が見て大笑いするドラマもよいと思う。
- マンガが原作なので、これは無いだろうというところと、コミカルなところがギリギリだと感じた。匍匐前進のところは本当にマンガチックで面白いが、何もあそこまでしなくてもよいのではないかと思った。
- ブラック企業として取り上げられたのがあまりに弱小なので、爽快感がない。もう少し大きなところに勇気を出して切り込んでいくと、もっと爽快感が出てくるのではないかと思う。
- 主役のダンダリンが、見方によってはエキセントリックで偏屈な女性として描かれすぎている。女性が持っているブレない強さ、粘り、決め細やかさや勘、信念などをもっと出せば、主役がさらに生きてくると思う。
- マンガチックな構成になっているから、逆に救いがあって良いのではないか? 暗いままだと到底見る気がしない。確かにオーバーな行動はあるが、それは見逃しても良いのではないかと思う。また、社会労務士のように日の当たらない職業の人をみんなに知らせるという点で、非常に意味があると思った。
- 初回を見ただけでは2回目は見る必要がないとさえ思ったが、2回目を見終わったら、単純に「正義は勝つ」というところが、ある種のファンタジー、現代風の「水戸黄門」のような爽快感さえ感じた。ただ、単純な作劇術のままでは、シリアスにもコメディにも徹しきれず、中途半端だと思う。
- コメディテイストの中で、主人公たちが社会悪と戦うという図式になるのだろうが、一話を見たときに「これで解決したのか?」という「もやもや感」が残った。爽快感は必要だが、あまり簡単にすると薄っぺらくなってしまうし…と、制作側が悩んでいるのではないかと思った。
この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。
働く問題は「勧善懲悪」だけで片付く問題ではなく、労働者を助けても会社がつぶれてしまうこともある。労働基準監督官の仕事は危険をはらんでいることが大きいので、とにかく見やすく、伝わりやすく、少しでも思いが伝われば良いと思う。働いている人にも、いない人にも「相談できるところがある」「働く人に権利がある」ということが伝われば良いと思っている。