第483回日本テレビ放送番組審議会は、11月9日に放送された『ドキュメント‘14 この腕に抱くまで 横田夫妻 哀切の道のり』に関しての合評を行いました。
『ドキュメント‘14』は、1970年にスタートした報道ドキュメンタリー番組で、11月9日の放送では、北朝鮮の拉致被害者家族の横田夫妻を記録し続ける映像技術者の田辺信道さんの記録を基に、横田夫妻の素顔とその思いに迫りました。

  • ドキュメンタリー番組としては、NHKも含めて最も長寿の番組であることに敬意を表したい。この番組があるからこそ、地方局が地域の様々なテーマを全国に発信できる上、系列局もある一定の高い制作力を保てるのではないかと思う。ニュースをつなぎ合わせただけではない、人間横田夫妻は、ドキュメンタリーでないと描けないと思った。
  • 横田夫妻が激情に流されないで、知的な態度を保っている陰に、どれほどの苦労や悲しみがあったかを知ることができた。こういう被害者家族の本当の苦労は、ニュース番組で取り上げられないので、ドキュメンタリー番組の貴重さをすごく感じたが、もっと大勢の方々に見てもらいたい。深夜ではなく、見られる機会があるとよいと思った。
  • 横田早紀江さんとキリスト教徒の関係、その周りの方々との関わりなどが分かって、ほっとした。ニュースを見ているだけでは埋まらない部分が腑に落ちて、ドキュメンタリーを見て良かったと思った。
  • こんなに良い夫婦が、長い間、辛くて悲しい思いと闘っていかねばならないのかと見ていて苦しかったが、一人でも多くの人に分かってもらいたいと思うのが応援するということだと気づかせて貰った。自分にできる形でどういう風に応援したらよいのかと素直に思えた。
  • トピックがある時だけ取り上げる報道とは違って、もっといろんな素顔があり、それを見てみたい、知りたいという気持ちになった。日曜の深夜というのは、なかなか見るのがつらい時間だが、だからと言って、ゴールデンタイムなどで勝ち抜く番組作りはして欲しくないという思いもあり、複雑な気持ちになった。
  • この番組は日本テレビの良心であり、この枠があるから出来ることも沢山あるし、掘り下げていけることもある。ただ、記録者の田辺さんのスタンスが良く分からなかった。また、拉致問題そのものが宙ぶらりんなために、番組も落としどころがなくて苦しいものになったところがあると思う。
  • 横田さん夫妻のこれまでの活動に焦点を当てて、苦しみや努力、支える人たちの映像を見ているだけで、心を打つ番組になっている。夜見ると、心をしっかり持って見なければいかんと思った。
  • あの時間帯は高齢者が寝ているので、若い視聴者が見ているのだろうと思うが、彼らはおそらく事件を知らないと思われるので、導入部に事件の経緯を説明する必要があるのではないか?もっと早い時間帯、ゴールデンタイムにやってもらえないものだろうかと思った。
  • 拉致から37年、夫妻のたどった道のりの重さを十分に感じることが出来た。田辺さんの位置や意図が判然としないところが不満だったし、ほかの拉致被害者家族の思いや家族会の中の相違も分かればよかったと思う。

この御意見を受けて、日本テレビ側は次のように答えました。

「毎回、番組作りで大事にしているのは、どういう視点で問題を伝えていくかということで、今回は『近所の人が拉致被害者だったら』という視点で見ていただこうと考えました。また、映像技術者の田辺さんはスタッフの一人であり、これまで記録してきた2人の映像を少しでも長く伝えたいという思いがありました。今後は他の拉致被害者家族の方々も取り上げていく予定です。」