純正医科大学附属病院の研修医・
研修医たちは、2年間の初期研修で、約1か月ごとに様々な科を回り、将来進む道を決める。諏訪野の新たな研修先は精神科だ。「今日から1か月間、お世話に……」と挨拶する諏訪野の目の前で、指導医の
「精神科の診察は患者さんの話を聞くことから始まる」という立石から、諏訪野はさっそく担当患者を任される。
諏訪野は瑠香から話を聞こうとするが、瑠香はうつろな目で天井を見たまま無反応。瑠香が出す“それ以上聞くなという雰囲気”を察した諏訪野は、何も聞けなくなる。
医局に戻った諏訪野は、瑠香の初診からのカルテを見返す。――瑠香は21歳の時、働いていたキャバクラで知り合った岡部彰と結婚したが、岡部を強く束縛してケンカが頻発すると自傷行為を繰り返すようになり、2年前に離婚。以後、睡眠薬の過量服薬が始まった。現在は生活保護を受給。立石が診断した病名は、誰かに依存して自傷行為を繰り返す『境界性パーソナリティ障害』――。しかし、カルテを見ていた諏訪野は、瑠香の左腕のやけどの痕が、ある文字になっていることに気付き――。
カルテには患者の全てが隠されている――。知識も技術もまだない、しかし誰よりも患者の気持ちに寄り添いお節介だけど憎めない研修医・諏訪野良太が、カルテを通して患者たちの秘密と嘘を優しく見破っていく――笑って泣けるハートウォーミング・ミステリーの開幕!!