「ここまで順調にいっているようね、密子さん」――。九条開発の会長・五十鈴(小柳ルミ子)と人目を避けて会う密子(福原遥)。2人の関係は……!?
運命の社長選を目前に控えた夏(松雪泰子)に思わぬ逆風が吹きつける。どこで夏のことを調べたのか、放蕩無頼な夫・丈晴(山中聡)が九条開発に押しかけてきたのだ。勝手に家を出ていって以来、何年も連絡が取れなくなっていた丈晴。夏たち家族を捨てておいて今さら何の用かと思えば、「借金あんだよ、今」。相変わらずお金にだらしない夫にあきれ返る夏は、お酒をやめて心を入れ替えるつもりだという丈晴を放っておくことができず、お金を渡してしまう……。
しかし、九条開発の次期社長候補にスキャンダルは厳禁。夏が丈晴と籍を入れたままだと知った密子は、夏の前から丈晴を遠ざけようとするが、思いがけず自分の過去と向き合うことになり――「いっそ殺してしまった方が、世の中のためになるかも」……。 一方、密子の素性を暴こうとする遥人(上杉柊平)と千秋(桜井日奈子)は、自分たちだけではラチが明かないと判断。やり手の記者を雇って密子の素性を調べさせ、衝撃の事実にたどり着く――。
密子は何のために九条家に近づいたのか!?暴かれる密子の秘密……その壮絶な過去とは……!?
夏にお金を無心する丈晴は、借金返済のためだと言っていたにもかかわらず、夏から受け取ったお金でパチンコに興じていた。家賃も滞納し、働いてすらいない。それでも夏は「お酒さえなければ、本当に誰より誠実な人なんです」と丈晴をかばう。もともと働き者だった丈晴は、仕事のストレスからお酒に頼るようになり、いつしか智(清水尋也)や彩(吉柳咲良)もおびえるほどの暴力を振るうようになった。「だけど、もうお酒もやめたみたいで。どんな人でも、あの子たちの父親です。……密子さん、あの人のこと助けてあげてください」。夏に頭を下げられた密子は「お任せください」と笑顔で答える。
ところが、密子は丈晴に会うなり、「夏さんが九条開発にいると、どなたからお聞きになりましたか?」と詰め寄り、口ごもる丈晴に対して間髪を入れずに脅しをかける。会社に現れて金銭を要求したり、夏に何度も電話をしたことは業務妨害罪に当たり、告訴することも可能だ、と。「もう夏さんには近づかないでください」とクギを刺す密子。丈晴を助けるどころか突き放してしまった密子に、夏は「あの人は私の家族なんです」と訴えるが、密子は「家族なんて、心を縛る鎖でしかありません」。いつもとは明らかに違う密子のとげとげしい態度に、夏は困惑するばかりで……。
丈晴に夏の情報を教えたのは、美樹(渡辺真起子)と玲香(志田彩良)だった。2人は丈晴に、借金の肩代わりを餌に夏を蹴落すよう頼んでいたのだ。密子から脅しをかけられて一度はひるむ丈晴だったが、美樹と玲香から「本宮密子を裏で操っているのは今井夏ですよ。全部、今井夏の入れ知恵。あなたは捨てられたんです」とけしかけられ――。夏への憎悪を膨らませる丈晴は、九条開発に乗り込んで夏に襲いかかる!「おまえのせいで、メチャクチャだ!」。慌てて止めに入る智を突き飛ばし、暴れ狂う丈晴。その姿を見た密子は、過去の記憶がフラッシュバックして固まってしまう――幼い密子の目の前で酔って暴れる父親――その記憶に支配されて震え始める密子……。そんな密子に向かって「おまえのせいだ!」と拳を振り上げる丈晴!「やめて!」と身をていして密子を守る夏!飛び交う怒号の中、密子の脳裏に再び過去の記憶がフラッシュバックする――父親に殴られそうになる密子をかばい、代わりに殴られる少女――。ハッと我に返った密子は、目の前で警備員に取り押さえられる丈晴を、ただぼうぜんと眺め……。
一方、密子の素性を探る遥人は、ついに衝撃の事実にたどり着く。幼い頃に親からひどい虐待を受けていた密子は、親に殺されかけた姉と共に児童養護施設に逃げ込んだ。その姉は、九条開発の元秘書で、火災事故で亡くなった小原鞠子(泉里香)だったのだ――。
丈晴に憎き父の姿を重ねる密子は、暗い衝動に突き動かされるまま、丈晴を拉致してナイフを突き付ける。「警告したはずです。夏さんには近づくなと」。しかし丈晴は「おまえに殺しなんでできねぇよ」と薄笑いを浮かべ、「その目だよ。俺が昔、家で暴れてた時、智と彩もおんなじ目してた。おびえ切ったガキの目だ」と密子を挑発。再びフラッシュバックに襲われる密子の呼吸が、徐々に荒くなる……。丈晴は「夏もおまえも、絶対許さねぇからな。逃げられるなんて思うなよ。もし逃げたら……ぶっ殺してやるからな!」。恐怖に震える密子。その耳に鞠子の声がハッキリと聞こえてくる――「助けて、みっちゃん」――その瞬間に密子の中で何かがプツンと切れ、持っていたナイフを丈晴の首に突き刺す……寸前、その手を夏が止めた――。「何をしてるんですか……!」。丈晴をかばうようにして密子と対峙する夏は「この人は、私が愛した人なんです。密子さんにも分かるでしょ……?家族、恋人、お友達……。誰でもいい、顔を思い浮かべてください」。しかし、密子には誰もいない。愛していた人も、愛してくれた人も。もう、誰も……「あなたには、この痛みが分からない」と胸の苦しみを訴える密子に、夏は「私がいます!私は、密子さんを愛しています」。密子がいなければ、夏の人生は暗いままだった。密子がいてくれたから、夏は変わることができた……「密子さん。私が、あなたの分まで、ちゃんと痛がるから。だから、あなたはもう苦しまなくていい。……あなたが変われば世界は変わる……そうでしょ?」――夏の偽りない言葉が、密子の胸に届き――。
「やっぱり、似ています。夏さんを見ていると、姉のことを思い出してしまう」。夏に姉・鞠子の面影を見る密子は、鞠子が九条開発の火災事故で亡くなったことを打ち明け、「私には、どうしてもあれが事故だったとは思えない」。なぜなら、前社長の旧プロジェクトを発案した鞠子は、九条家に圧力をかけられていたからだ。鞠子の死によって、九条家の望み通りに旧プロジェクトは打ち切りになった。鞠子を殺して得をする人間の仕業に違いない……。その真相を探るために、密子は「前社長の依頼」とウソをついて夏に近づき、九条開発に潜り込んだのだ。そんな密子に、夏は「よく頑張ったね。ずっと独りで……。これからは私がそばにいるから」。夏の優しさに、密子は涙をこらえることができないのだった――。
丈晴の一件で夏に対する社内の信用はガタ落ち。おそらく、次の社長選で夏に投票する人は誰もいない。次の手を考えなくてはならなくなった密子と夏に、丈晴から電話がかかってくる。「もう会うこともねぇだろうから」と別れを口にする丈晴から、「夏のことを九条から守ってほしい」と頼まれる密子。実は半年ほど前、丈晴の借金仲間が、ある人物から放火を依頼された。仲間は依頼を断ったが、しばらくして本当に火事が起きた。九条開発の火災事故だ。当時、気になって現場を見に行った丈晴は、現場から車で逃走する人物を目撃していた……「よく聞け。現場から逃げ去ったのは、九条遥人――」。そう言った直後、丈晴は何者かに命を奪われ――!密子と夏は衝撃に包まれる!!