1996年4月1日。
ワシントン州スポーカンのスポークスマン・レビュー新聞社で、
強力な鉄パイプ爆弾が爆発!
その数分後、2キロほど離れたUSバンクの支店でも、すさまじい爆発が起こった。
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なんと銀行にやってきた、覆面をかぶった二人組の男たちが
手際よく現金を奪うと、鉄パイプ爆弾に火をつけ逃走したのである。
この二つの現場には、犯人を特定出来る手がかりは
何一つ残っていなかったが、犯行声明のような、
妙なマークの書かれたビラが発見された。
そこには、アルファベットのPに十字架を重ねたマークが記されていたのだ。
実はこれ、狂信的なカルト集団『フィネアス・プリーストフッド』のシンボルマーク。
このメンバーは、自分たちが神からアメリカ政府転覆を命じられたと信じ、
日々、戦闘訓練を行っていると言う。
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ただ、フィネアス・プリーストフッドは、まとまった組織を持たず、
少人数に分かれてバラバラで活動している為、
犯人を特定することは出来なかった。
そして、連続爆弾事件から3か月後…
今度は産婦人科病院の前で、爆弾事件が発生。
すると同じ頃、最初に襲われたUSバンクが、またしても襲われていた!
唯一の手掛かりは、銀行の防犯カメラが捉えた犯人の映像。
だが、覆面に、ひざ丈の長い上着、ジーンズをはいたその姿からは、
何の特徴も見つける事が出来なかったのだ。
一方、FBIは、この爆破強奪事件を、最初の事件と同一犯だと確信。
捜査を進めるうちに3人の男が浮上した。
その内の一人には、武器を不法購入した前科があったため、尾行を続けた結果
この3人が犯人であると確信し、とりあえず逮捕に踏み切ったのだ。
だが、この3人が連続爆弾犯であるという、確固たる証拠がない!
そこで、スーパー頭脳集団、FBI科学捜査班が登場。
逮捕した3人と、防犯カメラに映った犯人が、
同一人物であると証明することは出来ないか、その難題に挑んだのだ。
その担当となった、リッチー・ボーダブディ科学捜査官は
まず、銀行の防犯カメラの映像をコンピューターで拡大し、
犯人の衣服や所持品を、3人組のアジトから押収したものと比較。
しかし、覆面は市販のスキーマスク、上着も市販のもの、
銃にも、目立つ傷などを見つけることは出来なかった。
そこで次に、リッチー捜査官が目をつけたのは、
なんと犯人が履いていた、どこにでも売っているような普通の『ジーンズ』。
そんなものから、いったい何が分かると言うのか?
実は、ジーンズの脇にある、縫い合わせ部分の色の落ち方は千差万別。
ジーンズを縫い合わせる作業は、ミシンによる手作業で行われており、
この時、職人の力の入れ方によって、
縫合わせの部分に、そのジーンズ特有の凹凸が出来るのだ。
そして、その縫い目の凹凸が、履きこんでいくうちに、
そのジーンズ独自の色落ち模様となって現れるのである。
リッチー捜査官は、防犯カメラに映った犯人のジーンズの縫い目を拡大、
最新の画像処理を施して、色落ち具合を確認。
さらに、アジトから押収したジーンズを、防犯カメラ映像と同じ角度から撮影し、
その2つを重ね合わせてみた。
すると、押収したジーンズと、犯人のジーンズの色落ちがぴったり一致!
3人と犯人を結びつける、重要な証拠となったのだ。
こうして逮捕から1年後の1997年10月31日、
ヴァン・メレル、ロバート・べリー、チャールズ・バービーの3人は、
強盗などの罪で終身刑を言い渡されたのである。
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