08/04/07 OA
タイタニック号 最後の謎に挑む
1912年4月10日。
全長269m、当時、世界最大の豪華客船タイタニック号は、
ニューヨークを目指して、初めての航海にイギリスを出発。
4日後、北大西洋で氷山に接触し、2時間40分後に沈没。
1513名もの死者を出す、船舶史上最悪の事故となった。
だが、水深3773mの海底で静かに眠るタイタニック号に、一つ大きな問題が。
実は、金属を餌とするバクテリアに、刻一刻と船体が侵食されているため、
早く調査を進めなければ、タイタニック号そのものが
なくなってしまうかもしれない、と言う。
そこでキャメロンは、各分野の専門家たちとチームを組み、
最後の調査に踏み切ったのだ。
最大の目的は、タイタニック号の最深部にあり、誰もたどり着けなかった、
謎の施設を撮影すること。
今回、キャメロンが導入した、
2台の最新型・深海用リモートコントロールカメラ「ボッツ」。
小型潜水艇とケーブルで繋がれ、遠隔操作が可能。
小さなサイズなら、今まで入れなかったタイタニック号の奥深くまで、
入る事ができるのである。
キャメロンは、海上の探査船とケーブルで繋がれた小型潜水艇に乗り込み、
カメラが捉えた映像を見ながら、タイタニック号の位置を探っていく。
すると前方に現れたのは、巨大な影。
それは、まさに沈没した豪華客船タイタニック号。
キャメロンは、その広い甲板の上へ出ると、大きな穴がある場所から、
小型潜水艇を投入した。
実はここ、船内で最も華やかだった大階段ホールの跡。
ヨーロッパの宮殿をイメージして作られたこの階段だが、
現在、その華やかな面影は全く残っていない。
さらに、キャメロンは、「一等客室」に小型リモートカメラを向けた。
そこは、ロンドンの大富豪の部屋。
彼は、女性や子供の避難が優先されていたにも関わらず、
いち早く救命ボートに乗り込み船から脱出。
しかも、極寒の海で助けを求める人々を、一切助けようとしなかったのだ。
キャメロンが、彼の部屋を撮影していくと、飾り付きの窓ガラスを発見。
当時の窓ガラスの写真と比べると、沈没から90年以上経った今も、
飾りの細部まで、しっかりと残っていたのである。
さらに、小型潜水艇を奥へと向かわせると、そこに「無線通信室」が。
ここで働いていたのが、ハロルド・ブライトとジャック・フィリップス。
当時、無線通信は実用化されたばかりで、
乗客たちは、珍しがって電報を大量に持ち込んだと言う。
そのせいもあってか、通信機が故障。
皮肉にも、一日がかりで修理を終えた翌日、事故が起こったのだ。
そして、2人は直したばかりの無線通信機を使って、
沈没直前まで周りの船に救助の要請を送り続け、駆けつけた船によって、
海上で生き残っていた人々は救出されたのである。
そして、いよいよキャメロンは、最大の目的である謎の施設へ。
潜水艇は下へ下へと下っていく。
次第に先が狭くなってくると、その向こうに扉を発見。
扉の脇には、何やら隙間が空いている。
その隙間を抜けると、そこには、かなり状態のいいタイル張りの壁が。
ここはなんと、トルコ式の蒸し風呂。
スチームサウナなども備え付けられた、何とも豪華な施設だったのだ。
さらに、キャメロンの目に飛び込んできたのは、美しくデザインされたタイル。
なんと、これはほぼ当時のままだった。
こうしてキャメロンは、当時の姿を残した「トルコ式蒸し風呂」の貴重な映像を、
カメラに収めることが出来たのだ。
悲劇の豪華客船タイタニック号は、静かな海の底で、
再び永遠の眠りについている。