アメリカ、カリフォルニア州の高級住宅地<ラグナニゲル>。
お金持ちが多いこの街で、彼らの財産を預かっていた
ユナイテッド・カリフォルニア銀行に、銀行強盗が入った!
ある月曜日の朝、支配人が銀行の金庫に入ろうとすると、扉が開かない。
金庫が故障していないかチェックするため、銀行の屋根裏へと登った。
すると天井に大きな穴が開けられており、
金庫の中はめちゃくちゃに荒らされていたのだ。
さらに、扉のカギが開かないよう、ドライバーが差してあったのである。
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通報を受けたFBIサンタアナ支局の捜査官たちは、現場へと急行した。
すると、この銀行の貸金庫の458個全てがカギをこじ開けられ、
中を物色されていた。そして犯人は、指紋を一切残していなかったのだ。
しかも、警報装置は白いセメントのようなもので固められ、作動不能になっていた。
調査によって判明した被害総額は何と、800万ドル(8億円)。
現場からは、犯行に使われたとみられる、茶色の手袋と、ドリルの刃が見つかった。
捜査官たちは、このドリルの刃が有力な手がかりになると見て、
この近辺でドリルの刃を買ったものがいないか調査した。
しかし、ロサンゼルス周辺では見つからず、捜査の範囲をアメリカ全土に拡大して
国内のFBI全支部に連絡し、情報の提供を呼びかけた。
すると、ロサンゼルスからおよそ3000キロも離れた、
アメリカ東部のオハイオ州クリーブランド支局から、
今回の事件とよく似た手口を使った銀行強盗事件が、
オハイオ州で十数件も発生しているという連絡が入ったのだ。
そして、その容疑者としてマークされていたのが、
アミル・デンジオが率いるプロの強盗団であった。
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ロサンゼルスの捜査官たちは、
事件前後にカリフォルニアを発着した飛行機の乗客名簿を全てチェック。
すると、その中から、強盗団のメンバーの名前を発見した。
そこで、ロサンゼルス国際空港に出入りする全てのタクシー運転手に
聞き込み調査を行ったところ、一人の運転手が
犯人のうちのひとりを、ロサンゼルス市内まで送っていったという。
そこで、ロサンゼルス近郊のホテルをしらみつぶしにあたっていくと、
一軒のモーテルに、リーダーのアミル・デンジオと、
メンバーの一人、チャールズ・モリガンの宿泊記録が残っていた。
さらに、彼らの通話記録を調べた結果、
頻繁に連絡をとったと見られるアール・ドーソンという新たな人物が浮かび上がり、
捜査官たちは、さっそくドーソンの元へ。
するとドーソンは、チャールズ・モリガンとは古い友人で、車を預かっているという。
車を見せてもらうと、銀行の金庫に残されていた手袋と同じものが残されていた。
と、その時、突然、モリガンから「車を引き取るから、今晩会おう」という電話が
ドーソンの元にかかってきた。
その夜、捜査官たちも待ち合わせ場所に潜入。
車を取りに行く途中のモリガンを逮捕。強盗団7人のうち、1人目の逮捕となった。
さらに車の中から犯行に使われたと思われる、指紋が残ったドリルも発見。
強盗団が、犯行当日までアジトにしていたマンションをつきとめた。
しかし、すでにそこはもぬけのからで、指紋も全てふき取られており、
証拠は何一つない。まさに完璧な証拠隠滅のように思われた。
だが、完璧を期した強盗団が、ただ一つ犯したわずかなミスがあった。
なんと、汚れたままの食器を食器洗い機の中に忘れていたのだ!
洗い忘れた食器には、指紋がベッタリと残っていた。
すると、食器に残された指紋と、押収されたドリルの指紋が完全に一致。
これが決定的な証拠となり、リーダー、アミル・デンジオをはじめとする
残りのメンバーを全員逮捕。
こうして、10数件もの銀行から30億円以上を奪い取った銀行強盗団は、
FBIの粘り強い捜査によって、見事に逮捕されたのだった。
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