韓国・ソウル。
この街のラジオ局で活躍している、人気DJ、ユン・ソナ。
彼女は、生まれた時から、極めてまれな骨の病気「骨形成不全症」を抱えていた。
この病の特徴は、骨が弱く折れやすいということ。
ソナは、これまで実に60回を超える骨折をし、たび重なる手術によって、
背骨や太ももの骨は、S字に変形。
その影響で身長は120センチほどしかなく、松葉づえなしでは歩くことが できないのだ。
そんな彼女をやさしく気づかい、懸命に支えているのが、夫ビョン・ヒチョル。
2人は、周囲の反対にあいながらも、愛をつらぬいて結婚。
そして、ある強い想いを抱き始めた。
それは赤ちゃんを授かり、パパとママになること。
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だが、子どもを産むのは決して容易でないことを、ソナ自身が一番わかっていた。
そこで2人は医師と相談し、体外受精の方法のひとつ、顕微授精を行うことに。
顕微授精とは、取り出したソナの卵子に、ヒチョルの精子を注入して受精卵を作り、
これをソナの子宮に戻すという方法。
だが・・・ソナの体に、新たな命が宿ることはなかったのだ。
あれから、3か月後。
ソナとヒチョルは、再びクァンドン医大第一病院にいた。
あきらめきれない2人は、もう1度だけ、チャレンジすることにしたのだ。
すると1週間後・・・ついに念願の命が、ソナのお腹に宿っていた!
だが、ソナの体は大丈夫なのか?無事に出産まで行きつくことは、できるのだろうか?
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2007年11月(妊娠6か月目)
2人が暮らすマンションでは、身重な妻の体を気づかい、
夫のヒチョルが、一人でいっさいの家事をすべて行っている。
そして、病院で撮影したソナのお腹の超音波映像をながめては、
順調に育っている我が子の姿に、2人で胸をはずませていた。
だがそんな中、ソナの心には、ある大きな不安が・・・
生まれてくる赤ちゃんが、自分と同じ病気を抱えていないか、が心配なのである。
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2008年2月(妊娠8か月目)
この日、引っ越しが行われた。
実は、ヒチョルが、『ソナに何かあれば走って戻れるように』と、
自分の会社のすぐ近くに新しい部屋を借りたのだ。
この頃になると、ソナは一人で立ち上がることさえ、できなくなっていた。
日に日に重くなる赤ちゃんが、この体にかける負担は相当なものなのである。
そして、2008年3月(妊娠9か月目)
定期検診のため、2人は病院を訪れた。
ヒチョルが見守る中、ソナの腹部にセンサーがあてられ、胎児の状態を確認する。
すると・・お腹の赤ちゃんを外に押し出すために起こる、子宮の収縮、
いわゆる陣痛が予定より早く始まっていたのである。
この連絡を受け、ただちに担当医師がソナのもとにかけつけた。
実は、骨形成不全症を抱えているソナの場合、骨だけではなく、
体の組織も弱いため、本格的な陣痛が起これば、
子宮が耐えられない恐れがあると、医師は考えていた。
そのためソナには、陣痛が激しくなる前に子どもを出産できる、
帝王切開の手術を行うことになっていた。
しかし、赤ちゃんの発育を考えれば、もう少し長く、お腹の中で成長させたい・・・
医師チームはソナを入院させ、いつ起こるかわからない、本格的な陣痛にそなえ、
24時間、万全の態勢を整えたのである。
そしてこの日から、ヒチョルも、泊まり込みで付き添うことにした。
だが、ソナの出産には、さらなる問題が・・・それは・・・
「一般的に、帝王切開を行う時は、子宮を切開し、
赤ちゃんが出やすいように、お腹の上部を押します。
しかし彼女の場合、ろっ骨が弱く折れる危険があるので、
お腹を押すことができません。
そのため、出血量が増えるのを覚悟の上で、
子宮を通常より大きく切るしか方法がないんです。」
医師の話にショックを受け、思い悩むヒチョル。
「ソナの体のことを考えると、これで本当に良かったのかと思います。
僕たちは、他の夫婦と同じように子どもを授かり、
幸せな家庭を、築きたかっただけなんですが・・・」
そして、入院から2週間後の3月20日。
ついに、ソナの帝王切開が行われることになった。
非常事態にそなえて、輸血用の血液が大量に用意され、
15人もの医師たちによる、大手術が開始された。
ソナのお腹にメスを入れ、子宮を切開、なるべく赤ちゃんを早く取り出し、
ソナの出血を最小限におさえられるかは、医師たちの腕にかかっているのである。
すると、子宮切開からわずか2分・・・赤ちゃんの姿が・・・
吸引器で必死に羊水を吐き出させる。そして・・・
ついにソナとヒチョルの宝物が、この世に生を受けた。体重2200グラムの男の子。
しかも、ソナが心配していた骨形成不全症ではなかったのだ。
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いくつもの苦難を乗り越え、ようやく授かることができた、念願の赤ちゃん。
ソナは、その腕で、初めて抱きかかえる時がやってきた。
想い抱いていた2人の夢が、ついに現実のものになったのである。
その後、赤ちゃんはスンズゥンと名付けられ、すくすくと元気に育っている。
さまざまな困難をのりこえ、夢をかなえた、ソナとヒチョル。
これからは、親子3人、愛情に満ちた家庭を築いていくに違いない。
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