世界まる見え!テレビ特捜部
08/12/15 OA
燃えよ 小さな村の小さなファイター

タイ北東部の小さな村、バーンコークサガー。
ここに住む、8歳の少年、タックはある夢を持っている。
それは、「スネークファイター」になること。

バーンコークサガーは、スネークファイターの村。
大人たちが戦うのは、何と体長5m以上!象をも倒す危険なヘビ「キングコブラ」。
スネークファイターたちは、そんなキングコブラを激しく挑発し、
その攻撃を紙一重でかわして見せることで収入を得ているのだ。
特に、花形スネークファイターともなれば実入りはいい。



まだ8歳のタックがスネークファイターを目指すのも、お金が稼ぎたいからであった。
実はタック、今から3年前、5歳の時に父親を事故で亡くしていた。
そこで彼は、一刻も早く家計を支えたいと考え、
わずか6歳で、村一番のスネークファイター・トンカムに、弟子入りを志願したのだ。
そんなタックの熱意に打たれたトンカムは、弟子入りを許し、
以来タックは、トンカムのそばで、戦いのテクニックや、
舞台を降りた後のヘビの世話などを学ぶこととなったのだ。



スネークファイトは、一試合が2分。
その間、キングコブラの攻撃をあえてギリギリでかわし続けるのだが、
それは当然ながら、かなり危険な行為。
師匠トンカムでさえ、これまでキングコブラにかまれ、
命を落としかけたことが4回もあるという。



そして、タックに、念願のデビュー戦が決まった。
その舞台は、村最大のイベント・キングコブラ祭り。
数千人もの観光客が、国の内外から詰め掛ける、大イベントである。
タックはさっそく特訓を開始。相手は、毒こそないが、すばやい強敵・ネズミヘビ。

懸命に攻撃をかわす練習をするが、なかなか思うように行かない。
そんな特訓の様子を見て、心配で涙するタックの母親。
だが、師匠のトンカムは、さらなる課題をタックに与えた。
それは、ヘビの頭にキスをすること。
スネークファイターの初級テクニックだが、タックにとっては勇気のいる技だ。



そして、トンカム自身も、キングコブラ祭りで、ある危険な挑戦を行う。
それは、野生のキングコブラと戦うこと。
人間に慣れていないため、飼われているものより攻撃的なのだ。
過去には、ステージ上で噛まれ、命を落としたスネークファイターも多い。
まさに、命がけの挑戦。



しかも、トンカムは、今回新たな技を披露するという。その技とは・・・
キングコブラの前に指を突き出し、全神経を集中、
ゆっくりと胴体に手を伸ばし、キングコブラを直立させたまま、持ち上げる。
これぞ新技、「浮かぶキングコブラ」。
コブラが、簡単に噛み付ける距離で行われる、危険な技なのだ。
そして、何より危ないのが手を離す時。
コブラが怒り出す直前に、すばやく手を離さなければならない。
こうして、二人の特訓は続いた。



祭り当日。タックがデビューする晴れの日だ。
会場には多くの観光客がつめかけ、
スネークファイターたちの戦いぶりに歓声を上げる。



そして、村のナンバーワン・スネークファイター、師匠トンカムの出番。
すると、野生のキングコブラが、いきなり襲い掛かった。
そのまま、激しい連続攻撃を仕掛けてくる。
トンカムは、それを紙一重でかわしながらも巧みに挑発。
細かく動き回り、狙いを絞らせない。観客も固唾を呑んで戦いを見守る。
と、ここでトンカムが両手を構えた。
いよいよ新技、「浮かぶキングコブラ」を繰り出そうというのだ。
果たして野生のキングコブラ相手に、成功するのか?すると・・・
キングコブラが動きを止めた。
直立したまま、宙に浮くように持ち上げられていく。そして・・・
無事に手を離し、見事に決まった。
トンカムは、野生のキングコブラとの戦いに勝利したのである。



そして、ついにタックの出番がやって来た。
かわいらしいスネークファイターの登場に、客席から笑みがこぼれる。
相手となるネズミヘビが登場し、いよいよデビュー戦の開始。



タックは、シッポをつかんでヘビを挑発。
ネズミヘビもすばやい動きで反撃、大きく口を開け、タックを威嚇する。
タックも負けじと懸命に動く。
心配そうに母親が見守る中、タックのファイトぶりに、客席は大いに盛り上がる。
そして、ヘビの動きが止まったところで、すかさず頭にキス。だが!!
顔を噛まれてしまった。
それでもタックは臆せず、ヘビへ立ち向かっていく。そして、思わぬ技を出した!
指をヘビの前に差し出し、軽く噛ませると、そのまま持ち上げたのだ。
これぞ、「浮かぶネズミヘビ」。
師匠の技「浮かぶキングコブラ」を、自分なりに応用してやってみたのである。
こうして、タックは無事デビュー戦を飾った。



盛大な拍手をくれた観客にお礼の挨拶をすると、
タックはすぐさま母親の元に駆け寄り、その胸に抱きついた。
スネークファイターから、8歳の子どもに戻った瞬間であった。
タックは、いつか、師匠を超える立派なスネークファイターになりたいという。
小さな村の伝統は、澄んだ瞳を持った小さな戦士によって、受け継がれていくのだ。


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