09/03/30 OA
ある日突然 夫が女性になりました
カリフォルニア州、ナパバレー。
この町に住んでいるのは、ちょっと変わった4人家族。
地質学者の母クリスと、10歳の長女カトリーナ、6歳の長男ショーン。
そして、かつて父ジェフだった、ジェニファーである。
傍目には風変わりながらも、楽しく毎日を過ごしている4人。
だが、父のカミングアウト直後には、家庭から笑顔が消えたこともあったという。
ジェニファーは子どもの頃から、自分が本当に男なのかと疑問を感じていた。
自分の男性の体に違和感を持ち、人知れず悩んできたのだ。
そして、いつしか芽生え始めた、女性になりたいという願望・・・
そんな秘めた願いに火をつけてしまったのが、3年前、
ハロウィンでの女装だった。
その時初めて、女性になりたいとずっと思っていたことを、
妻クリスに打ち明けた。
驚き、パニックに陥ったクリスだったが、
彼女は、愛する夫が深刻に悩んでいたことを知り、
彼の変身を受け入れることにしたのだ。
当時3歳だった長男ショーンは、幼かったせいか、
自然とジェニファーになついていった。
しかし、家族の中で、最後までジェニファーを認めなかったのは長女カトリーナ。
彼女は当時7歳。周りの目が気になり始める歳でもあった。
さらに、父親を失ったように感じてしまったカトリーナは、
ジェニファーに近寄ろうともしなかったのである。
だが、そんなカトリーナの心を開くきっかけとなったのが、
ジェニファーが若い頃からたしなんでいたピアノ。
カトリーナは、ジェニファーの演奏を聴いて、自分にも音楽を教えて欲しいと
言ってきたのだ。
こうして、次第に二人の距離は縮まっていった。
だが、そんな平穏もつかの間、またも家族に波乱の出来事が。
ジェニファーが、ある手術を受けたいと言い出したのだ。
それは、睾丸摘出手術。
ジェニファーは女性ホルモン剤を服用しているが、男性が服用した場合、
頭痛や貧血、ひいては肝機能障害などの副作用があるのだという。
ジェニファーは、睾丸を摘出すれば、体内の男性ホルモンがかなり減るため、
女性ホルモン剤の量を今より減らせると思ったのだ。
しかし、この手術の話は、クリスに不安を抱かせた。
これ以上ジェニファーが女性に近づけば、完全に夫婦とは言えなくなってしまう。
さらに、いつかジェニファーは、男性をパートナーとしたくなるのではないか?
そうなれば、家族はバラバラになってしまう・・・
2人は、一緒にカウンセリングを受け、納得するまで話し合った。
そして、クリスは手術に同意することにした。
家族を思う、ジェニファーの気持ちを信じようと思ったのだ。
手術当日。
病院に到着するなり、さっそく手術が始まった。
その間、落ち着かない様子のクリス。
うろうろと歩き回っては、時計を見つめる。
ようやく手術が終わると、クリスはジェニファーの元にすぐさま駆けつけたのだ。
ジェニファーはこの姿になって、やっと本当の自分になれた気がしたという。
母クリスは、この先、また問題が出てくると思うが、
何とかなるだろう思っている。
そして、長男ショーンは、
「いろいろなことが前よりよくなった。みんな、今が大好きだよ」と話す。
父親のカミングアウトという大きな波に直面しながら、
クリスたち一家は家族であり続けようとしているのだ。