09/03/30 OA
アメリカン航空11便 最期の1時間
9月11日、7時47分。
アメリカン航空11便には、最後の乗客達が搭乗。
その中には、ビジネスクラスに席をとっていた、
その最後尾で搭乗してきたのが
テロリストの主犯格、モハメド・アタであった。
実は、この11便にはアタをはじめとする、
5人のテロリスト達が乗り込んでいたのだ。
7時59分。
乗員・乗客92名を乗せた11便は予定より14分遅れで、LAへ向け出発。
11便が安全な高度に上昇を続ける中、テロリスト達は、
鞄に忍ばせていたナイフを握りしめ、静かにその時を待っていた。
8時12分。
ついにハイジャックの体勢に入る。
シートベルトサインが消えると同時に、
コックピット内に潜入したテロリスト達は、機長と副操縦士を刺殺。
その間、犯人の1人は、催涙ガスのようなものを噴射しながら
ファーストクラスの乗客を遠ざけていたのだ。
この時、犯人達はファーストクラスを担当していた、2人の客室乗務員を襲撃。
こうして、5人のテロリスト達はコックピット内へ立てこもり、
11便をハイジャックしたのだった。
8時17分。
機内では客室乗務員達が出来る限りの情報を地上に伝えようと、
まず座席表から誰がハイジャックに関わっているのか割り出す。
8時19分。
11便がハイジャックされてから約7分後。
ベテラン客室乗務員のベティ・オングは、アメリカン航空の予約センターに電話。
必死に状況を伝え続けるベティの声が残されている。
そして、エイミーもコックピットとのコンタクトを何度も試みていた。
騒ぎになる事を恐れたアタは、乗客にアナウンスしようと思い、
間違って地上との交信スイッチを押してしまうのだった。
「我々は、飛行機を数機乗っ取った。大人しくしていれば、何もしない。
これから、空港に引き返すつもりだ」
このアタのアナウンスは、ボストンの管制官に伝わっていた。
11便からの無線交信によって、ボストン管制官は
11便がハイジャックされた事に初めて気づき、厳戒態勢がしかれた。
8時25分。
11便の機内では、エイミーがアメリカン航空フライトサービスに連絡。
エイミーは犯人の内、3人の座席番号を伝える。
客室乗務員達は、ハイジャック犯に襲われた状況下でも冷静に対処するよう
訓練を受けていたのである。
乗客たちがパニックにならなかったのは、
乗務員達の的確な指示があったためだと考えられている。
8時27分。
11便は、無謀とも言える急旋回を行い、NYを目指す。
8時37分。
ボストンの管制塔は、直接、軍に救援を要請。
あまりに突然の要請だったため、軍もにわかには信じがたい様子であった。
そんな中、アタの操縦する11便はNYに近づいていた。
ベティとエイミーの報告から、機体が激しく揺れていた事が分かっている。
8時46分。
マンハッタン上空、11便は急速に速度を上げた。
エイミーの
「川が見える。ビルも見える。ビルがいっぱい。すごく低い。低すぎるわ。
ベティ、何があったの?ベティ、聞こえる?ベティ…」
という声の後、11便はワールドトレードセンタービルに激突。
この日、多くの人々が命を落とすことになった。
世界中を震撼させた同時多発テロ事件。
その犠牲となった11便の機内では、死の直前まで任務を全うした
誇り高き客室乗務員達がいた。