タイの国技『ムエタイ』。
だが タイにはムエタイに勝るとも劣らないほど、
人々を熱狂させる格闘技があるのをご存知だろうか?
それが!昆虫の王様・カブトムシを戦わせる『カブトムシ相撲』!
|
|
タイ北部に400年もの間、受け継がれる伝統の格闘技である。
そこで、年に一度開催されるのが、世界最大の昆虫の祭典「カブトムシ祭り」。
そのメインイベント『カブトムシ王座決定戦』で優勝することこそ、
トレーナーにとって最高の名誉となるのだ!
カブトムシ相撲に使われるのは、東南アジアに広く生息する「ヒメカブトムシ」。
大きな物は体長8センチ。オスはたくましい2本の角を持ち、
自らの体重の800倍もの重さを持ち上げる、怪力の持ち主。
もともとオスは、この角を武器にメスを奪い合う。
相手を持ち上げ宙に浮かせた方が勝ち、負けたオスはその場を立ち去り、
勝ったオスだけがメスとむすばれることができる!
そんな習性を利用したのが、この「カブトムシ相撲」なのである。
ルールは丸太の上に置かれた2匹のオスを調教棒で刺激して戦わせ、
相手を持ち上げるか、丸太から落とせば勝ち。
|
|
そして、この業界で彼こそ最高のトレーナーとして、尊敬を集めるのが、
昨年のチャンピオン<パイラット>。
今年そんなパイラットが絶対の自信をもって送り込むのが、
相棒の「レッドライオン」。
しかし、そんな彼の栄光の座を脅かす若者がいた!
それが自動車修理工場兼トレーナーの<マン>と相棒の「キングコング」。
だが、彼には大事な大会を前に、ある心配事があった・・・
妻<ニン>が妊娠しており、出産予定日が大会期間中だというのだ。
そんな心配事を胸に、マンは、チャンピオン・パイラットと
大会の前哨戦とも言える練習試合をすることに!
結果は、レッドライオンがキングコングを持ち上げ、勝負あり!
さらに丸太の外にたたき出し、練習試合はチャンピオンが貫禄の勝利を飾った。
敗れたマンは 早速、猛特訓開始。まずは朝のウォーキング!
次に、水泳でスタミナアップ!さらに、土の上を走らせ、爪の強化をはかる。
大会本番で、王者パイラットへのリベンジを果たすために!
だが、その一方で、大会の存続にかかわる事態が発生していた。
ヒメカブトムシが、メスとの交尾をする前に
オスが乱獲されてしまっているというのだ。
実は、タイ北部には様々な昆虫を食べる習慣があり、
カブトムシはもちろん、カラッと揚げられたコオロギやバッタも
スナックとして人気があるのである。
そこで最近では、カブトムシの減少を食い止めるため、
養殖も盛んに行われるようになってきており、カブトムシ相撲大会でも、
養殖カブトムシが活躍し始めているという。
いよいよ大会当日!
華々しいパレードで始まった、世界最大の昆虫の祭典「カブトムシ祭り」。
巨大なカブトムシみこしも繰り出し、千人を越す観衆は、
大変な盛り上がりと興奮に包まれる。
そんな中、チャンピオンパイラットは、あっという間に人々に囲まれ英雄扱い。
だが、若きライバル<マン>の姿が見当たらない!
実はマン、肝心な大会当日になって、妻に出産の兆候が現われたのだ。
病院で、ただ待つことしかできないマン。
果たして大会に間に合うのか?
しかし無情にも、会場では、カブトムシトレーナー達の激しい戦いが始まり、
この時点で、マンは失格となってしまった・・・
ライバルのいない、カブトムシ相撲大会は
チャンピオン・パイラットとレッドライオンの独壇場!
圧倒的な強さで、連覇を成し遂げたのだ!
そして、祭りも終わりに近づいた頃、会場に、あの若きマンが現れた!
手にしているのは、相棒のキングコング!
マンは、無駄を承知で会場に駆け付けのである。
だが、チャンピオン・パイラットも、ライバルの到着を待っていた。
こうして 本当に強いカブトムシを決める<幻の決勝戦>が始まった!
王者レッドライオン、連戦の疲れも見せず、キングコングを激しく押しまくる!
だが、キングコングも何とか持ちこたえた!まさに実力伯仲!世紀の名勝負!
と次の瞬間!!
キングコングがレッドライオンを高々と持ち上げたではないか!
パイラットを打ち破り、若きマンが、幻のチャンピオンに輝いたのだ!
それはまさに、世代交代の瞬間でもあった。
人々を熱狂させつづけるカブトムシ相撲。
そして人はカブトムシの戦いを通じて、成長していく・・・
|