1989年のアカデミー賞作品『レインマン』。
ダスティン・ホフマン演じる自閉症の主人公が、
ウェイトレスが落とした爪楊枝の本数を、
ひと目見ただけで言い当てるというシーンがある。
今回は、劇中の主人公のように、わずか数分建物を眺めるだけで、
窓の数はもちろん、細部に至るまで完全に記憶し正確に書き上げるという
驚異的な能力をもつ、自閉症の青年スティーブン・ウィルシャーを紹介しよう。
イギリス・ロンドンにある、かつての王宮ハンプトン・コート宮殿。
様々な装飾が施された歴史ある宮殿を10分ほど眺めて自宅に帰ると、
何の迷いもなくハンプトン・コート宮殿を描き始めたスティーブン。
まるで写真を見ているかのように装飾の細部に至るまで、
たった1時間で見事に再現してしまった。
彼のように脳の発達障害と同時に、超人的な能力を併せ持つ者の事を
サヴァン症候群と呼び、世界に100人ほどしかいない極めて稀な能力なのだ。
彼の能力は「直感像記憶」と呼ばれており、一度見た映像を細部まで記憶し、
その記憶を長い間留めることができるというもの。
スティーブンが、この驚くべき能力を開花させ始めたのは6歳の頃。
6歳の子どもが描いたとは思えない精密な絵画が、
瞬く間に評判になり、11歳の頃には、天才少年画家としてテレビでも紹介。
今では、ロンドンの一等地に自らの画廊を開くなど、
一流アーティストの仲間入りを果たしているのである。
世界中を巡り作品を描いてきたスティーブンだが、
やはり一番のお気に入りは故郷ロンドン。
スティーブンの夢は、
ヘリコプターで大好きなロンドンの町並みを上空から観察し、
ロンドンの町並みを描くこと。
飛行時間はたったの15分。
ロンドン中に無数に存在する建物を脳裏に焼き付け、
記憶だけで縦1メートル、横4メートルの巨大キャンパスに
大都市ロンドンの全景が描きだされる。
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と、まるで地図のように正確な彼の絵に、専門家も舌を巻く。
そしてついに、スティーブンの作品が完成。
5日間、延べ25時間かけロンドンの巨大パノラマを見事に書き上げた。
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自閉症でありながらも、驚異の記憶力を発揮するスティーブン・ウィルシャー。
彼はこれからも、素晴らしい絵画で我々の目を楽しませてくれることだろう。
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