オーストラリアのメルボルンで開催された
「楽しく・健康に・いつまでも若く」をテーマに掲げた
中高年でも気軽に参加できるスポーツの祭典、
≪ワールド・マスターズ・ゲームス≫。
世界中から約2万5千人が集まり、年齢別に別れてさまざまな競技で競い合う。
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中でも、ひときわ注目を集めているのが、
開催国オーストラリアの≪ヴィック・ヤンガー≫、御年90歳。
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付き人の孫に支えられ、これまで様々な競技に参加しては、
メダルやトロフィーを獲得してきたというスーパーお爺ちゃんである。
自宅の部屋には、金銀銅に輝く栄光のメダルやトロフィーが
壁一面にびっしりと飾られている。その数なんと650個。
そんな元気いっぱいのお爺ちゃんを誰よりも誇りに思い、
影ながら支えてきたのが、付き人を務める孫のマシューなのだ。
いよいよ大会初日を迎えたお爺ちゃん、孫のマシューが運転する車に乗り、
重量挙げの会場に向かった。そこには…
元オリンピック重量挙げ選手の≪チャーリー・ヘンダーソン≫(80歳)が。
重量挙げの最年長グループは、「80歳以上」のため、
90歳を越えているヤンガーお爺ちゃんは、
10歳も若い選手を相手に戦わなければならないのだ。
ヤンガーお爺ちゃんは、27.5キロのバーベルを一気に頭上まで持ち上げ、
体重別でトップに踊り出たが、
元オリンピック選手のチャーリーはクリーンアンドジャーク競技で、
さらに重たいバーベルを持ち上げ総合優勝。
ヤンガーお爺ちゃんは、惜しくも2位の銀メダルとなった。
あいにくの雨となった大会2日目は、走り高跳びに挑戦。
90歳以上のグループは、なんとお爺ちゃんただ一人。
1メートル10センチのバーを跳び越えた時点で金メダルが確定。
しかも、世界記録を樹立したのだった。
ところが、喜びにわくお爺ちゃんとマシューの元に
ある問題を指摘する知らせがはいった。
それは、お爺ちゃんの年齢を確認できるものがないため、
このままでは世界記録として認められないというもの。
慌てたマシューが、お爺ちゃんに確認すると・・・
「パスポートのコピーを全部出したよ。それでダメなら世界記録のことは忘れよう」
と記録よりも大会を楽しみたい様子のお爺ちゃん。
世界記録更新の名誉にこだわる孫のマシューとは、
意見が分かれたまま、この日を終えたのだった。
大会3日目。
空も晴れ渡り、ヤンガーお爺ちゃんは、新たな気持ちで
競技を楽しんでいる様子。
一方、孫のマシューはお爺ちゃんのお昼寝時間にこっそり抜け出し、
記録担当者を捕まえて、パスポートのコピーを提出したことを訴える。
しかし、記録担当者は、世界記録として認めるには、
ルールブックにもあるように「出生証明証が必要だ」と一点張り。
話合いの結果、後日、出生証明証を出せば記録を認定するということになった。
喜んでお爺ちゃんに報告をしにいくと、
「記録には興味ないよ。それよりなぜ黙って彼らの所にいったんだ」
と怒られてしまったマシュー。
その後もお爺ちゃん、90歳以上の重錘(じゅうすい)投げでも世界記録を上回り、
またまた金メダルを獲得!
あとは、出生証明証を提出すれば、世界記録として正式に認められる。
しかし、ロシアからオーストラリアに移り住んだお爺ちゃんが、
出生証明証をもらうには、生まれ故郷の村まで
本人が取りに行かなければもらう事ができない。これは、大変な負担である。
大会最終日、高齢者グループ男子棒高跳びの会場。
各選手達は、世界記録の1メートル20センチに挑戦するも、失敗を重ねていた。
そんな中、ヤンガーお爺ちゃんは、世界記録よりも1センチ高い
1メートル21センチに挑戦。見事、跳び越えてみせたのだ。
再び、世界記録を更新したお爺ちゃん。
こうして、今大会で実に9個のメダルを獲得し、
ライバルたちにも祝福され大満足の様子。
しかし今回、走り幅跳び、重錘投げ、棒高跳びで出した3つの世界記録は、
出生証明証が提出されないことを理由に、残念ながら公式に認められなかった。
孫のマシューにとっては、なんとも悔しい結末となったが、
当の本人は、そんな事は微塵も気にせず、
今大会を取り上げたテレビのニュース映像に釘付け。
自分が世界記録を塗り替えた栄光の瞬間を、
じっと瞼に焼き付けるように見入っている、ヤンガーお爺ちゃんだった。
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