09/10/26 OA
クヌートとその仲間たち ワンパク成長日記
マイナス40度にもなる極寒の地・北極。
ここで、生まれたばかりの子グマたちが、母親のおっぱいを飲んでいた。
母グマの母乳には、生きていく為に必要な脂肪分や栄養分が
たっぷり含まれているのだ。
一方、2006年12月5日、
北極から4千8百キロ離れたベルリン動物園でも、
ホッキョクグマの赤ちゃんが誕生。
体重810グラムの小さな男の子は、クヌートと名付けられた。
しかし彼は、母グマに育児放棄された事で命の危機に瀕していた。
そこで、飼育員のトーマス・デルフラインは、自ら親代わりとなり、
世界でも、ほとんど成功例のない
ホッキョクグマの人工哺育を行う事を決意したのである。
そんなトーマスは、
なんとかホッキョクグマの母乳に近いミルクを作ろうと試行錯誤。
そしてついに、キャットフードに粉ミルク、ビタミン数種類に
肝油を混ぜた特製ミルクを考えだしたのである。
クヌートはこのミルクをとても気に入り、順調に大きくなっていった。
北極に短い春がやって来た。
3か月間、巣穴で過ごした子グマたちは母親のおっぱいを飲み、
ふた回りほど大きくなっていた。
母グマが見守る中、コグマの兄弟は仲良くじゃれあう。
野生では、こうした兄弟のじゃれあいが自然と足腰を鍛えてくれるのだ。
しかし、このような機会のないベルリン動物園のクヌートは
後ろ足の発達が遅れていた。
そこでトーマスは、後ろ足の踏ん張りがきくよう床にゴムマットを敷き、
地道に歩く練習をさせると・・・
数週間後、クヌートは元気に歩きまわれるようになった。
北極では、母グマが子グマを連れ、狩に出かけていた。
すると、鋭い目を光らせたオスのホッキョクグマと遭遇。
実は野生では、オスが子グマを殺す事は珍しいことではない。
それを本能的に知っている母グマは、出来るだけオスから遠ざかる。
そしてこの日、ベルリン動物園のクヌートにも、
自分を捨てた両親と対面するという試練が待ち受けていた。
するとクヌートは、自分の事を人間だと思っているのか、
大人のオスグマにも全く恐怖心を見せない。
こうして、両親の初対面は無事成功したのだ。
そして、1年後…
北極に暮らす野性のホッキョクグマたちは、本格的な狩りの練習をスタート。
そして、ベルリン動物園のクヌートは、
110キロの立派なクマへと成長を遂げていた。
しかし、ひとり立ちした今でも、トーマスと気持ちは通じあっている。
世界で類をみない、人口哺育によって育てられた
ホッキョクグマの赤ちゃん、クヌート。
そして、母グマに育てられ、
過酷な大自然をたくましく生き抜く北極の子グマたち。
彼らは、これからも様々な困難に立ち向かい、
立派な大人へと成長していく事だろう。