人気のファッションアイテム、ヘアエクステンション。
いわゆる、「付け毛」。
多くのエクステには、人毛と書かれているが、いったい誰の髪なのか?
そんな疑問を持ったのが、イギリスのR&Bシンガー、
ジャメリア・デイヴィス。
自分が、仕事で使ったエクステは、一体誰のものか?
そう思ったジャメリア。
彼女は、インターネットで見つけた、
法医学の権威であり、毛髪鑑定で様々な事件を解決してきた
ブラック博士に髪の毛の鑑定を依頼した。
現在、イギリスでのエクステの売り上げは、年間93億円。
街では、一袋700円ほどで様々なエクステが売っている。
だが一方、高級ヘアサロンでその値段を聞くと、
いいエクステを使うと、なんとその代金は30万にもなるという。
ヘアサロンの店主いわく、
「ロシアからくる髪の毛は、ダメージの少ない上質なもの多い」とのこと。
そこでジャメリアは、ロシアから髪の毛の買い付けをしている
バイヤーのタチアナを訪れ、買い付けに同行させてもらうことに。
ロシアの首都・モスクワから、車で4時間。
そんな郊外の小さな村に、髪を売りたいと言う少女が。
彼女は、売る理由を「あきちゃったから」と語る。
そして、少女の腰まである長い髪を肩ほどの長さに切ると、
その代金を支払うタチアナ。
少女の髪のように、パーマやカラーリングをしていない髪は
ダメージが少なく高く売れるため、通常の5倍の値段をつけた。
それは、日本円にして1万5千円ほど。
この地域では、1か月分の収入に相当する金額だと言う。
こうして、ロシアのエクステ事情を見、イギリスに帰ってきたジャメリア。
そこには、頼んでいた、彼女のエクステの毛髪鑑定の結果が届いていた。
「この髪は、インドのチェンナイ北部に暮らす女性のもので、
おそらく1年ほど前に切られ、定期的に魚を食べている人でしょう」
この結果を受け、ジャメリアはインドに飛んだ。
インドのチェンナイには、髪の毛の処理工場がいくつもある。
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実は、インドの女性たちには、美の象徴である髪の毛をそり落とし、
願いをこめて神様に捧げる習慣がある。
髪の毛を大切にする女性にとっては、髪が一番の供え物なのだ。
そして寺院は、その捧げられた髪を、こうした工場に売っているのである。
ジャメリアのエクステも見てもらうと、寺院で剃られたものとのこと。
だが、捧げられた髪の毛で利益を得ている寺院に、憤りを感じるジャメリア。
そこで実際に、寺院で髪を剃る女性に会ってみることにした。
それが、サンドリア。
彼女は、家が立ち退きを迫られているため、家族と生活を守るため、
髪の毛を捧げ、神様にお願いするのだと言う。
そんなサンドリアの長い黒髪が、根元からジョリジョリと剃られていく。
その様子を見て、女性が大切な髪を切り落とすという行為には
強い決意と願いがこめられていることを感じた。
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さらに、ジャメリアは、寺院の一角で大勢の人々が食事をしている所を見る。
実は、貧しい人々は、寺院にくれば無償で食事をもらうことができる。
この食事代に、髪の毛を売ったお金が使われているのだ。
ジャメリアは、それを知り、インド独特の文化をようやく理解したのであった。
そして、いよいよ自分のエクステの持ち主を探すため、海辺の町へ。
「1年ほど前に髪を捧げ、魚を定期的に食べている女性」がいないか
聞いて回ったのである。
すると、条件に会った女性が見つかった。
ワナジャと言う女性が、娘の顔面麻痺が治るようお願いするため、
1年ほど前に髪を捧げたと言うのだ。
実際に、ジャメリアのエクステが、ワナジャのものであるかどうかは分からない。
だが、ジャメリアは、子どもを思うジャメリアの気持ちがこもったものだと
信じることにしたのだ。
そう、あなたがつけているエクステにも、
誰かの願いがこめられているのかも知れない。
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