初めて来日する、アメリカのバラク・オバマ大統領が乗って来たのが、
大統領専用機エアフォースワン。
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今回は、ホワイトハウスとアメリカ国防総省の特別な許可を得て撮影された、
エアフォースワン内部の貴重映像と、
大統領を支えるクルーたちの知られざる奮闘ぶりを紹介。
メリーランド州アンドリュー空軍基地に、エアフォースワンは格納されている。
アメリカ空軍の管轄で、全長70.66メートル。
ボーイング747をベースに改造され、機内には大統領執務室や会議室、
寝室なども備え付けられた、まさに空飛ぶホワイトハウス。
機長を初めとするクルーたちは、アメリカ空軍から選抜された経験豊かな
精鋭ばかりだ。
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さらにエアフォースワンは、もう一機存在する。
実は、バックアップ用の飛行機で、故障などの事態に備え、
飛行の際には少し遅れて同行する。
2008年1月、ブッシュ大統領は、
中東のイスラエル・クウェート・バーレーン・アラブ首長国連邦・
サウジアラビア・エジプトの6か国を8日間で訪問した。
この時のクルーは、メイン機とバックアップ機それぞれに、
26人ずつの計52人。
テロの危険性も高いため、十分なミーティングが行われる。
チーフフライトアテンダントは、備品をチェック。
ヒゲそり一つまで、自ら確かめる。
大統領到着5分前、警備の緊張が一気に高まり、
万が一にそなえた狙撃隊も配置につく。
そして、アメリカ海兵隊の大統領専用ヘリコプター『マリーンワン』が
ホワイトハウスから到着。
しかしこの時点では、まだ飛行機はエアフォースワンとは呼ばれない。
「最高司令官である大統領が乗った空軍の飛行機」であるため、
大統領が機内に一歩足を踏み入れた瞬間に、エアフォースワンとなるのだ。
いよいよ最初の目的地、イスラエルに向けて出発。
会議室では、政府関係者がさっそく打ち合わせを始め、
大統領執務室では、ブッシュ大統領が書類に目を通す。
食堂では食事の準備が始まる。
ボードには大統領や閣僚たちのコーヒーの好みまで細かく記されている
離陸から12時間後、着陸態勢に入る。
機長は歓迎の赤いじゅうたんの位置に合わせ、
エアフォースワンをぴたりと止めなければならない。世界中が注目しているのだ。
この到着から、世界へ向けたアメリカの外交が始まるのである。
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そんな、エアフォースワンで、ブッシュ大統領は一度だけ
極秘のフライトを行ったことがあった。
2003年11月、向かうはイラク戦争真っただ中のバグダッド。
目的は、前線の兵士たちと感謝祭を過ごすこと。
しかしそれはあまりにも危険で、誰かに知られれば間違いなく狙われる。
そのため、この計画を知っていたのは、機長やパイロットを含めた、5人だけ。
ブッシュ大統領は、「感謝祭を家族と共に過ごす」と言って
エアフォースワンに乗り、テキサス州の自宅に帰った。
そこから、こっそりと空港に戻りバグダッドへと飛び立ったのだ。
管制塔には、エアフォースワンではなく、
別の飛行機が飛び立つように見せかけていた。
ところがロンドン上空で、ある民間機のパイロットに目撃され、
管制塔に連絡が入ってしまう。
一大事になるかと思いきや、
管制塔が「それは別の飛行機だ」と答え、事なきを得た。
そして、エアフォースワンはバグダッドに到着。
日が落ちるのを待ち、あたりが闇に包まれると、
ティルマン機長は着陸態勢に入った。
いつ砲弾が飛んできてもおかしくない戦地の真っただ中に、見事着陸成功。
その2時間後、危険を冒してやってきたブッシュ大統領に、
兵士達は大いに感激した。
だが、空港で待つエアフォースワンにとって、本当に危険なのはここからだ。
いつ気づかれて攻撃されるかもしれないエアフォースワンは全くの無防備で、
クルーたちは、ほんの数時間を何十時間にも感じていた。
そしてようやく戻ってきた大統領を乗せ、ティルマン機長はすぐさま
エアフォースワンを発進。高度1万2000mに達した時、
クルーたちはそこで初めて自分たちの感謝祭を祝うことが出来たのだ。
今年の1月、ブッシュ大統領は任期を満了。エアフォースワンも機長が変わる。
そして、新たな主である第44代大統領バラク・オバマを迎えた。
大統領を乗せ、世界の空を飛ぶエアフォースワン。
そこには、大統領を命がけで支えるクルーたちが、
今日も大統領を、厳しい国際政治の舞台へと送り出すのだ。
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