世界まる見え!テレビ特捜部
10/06/07 OA
ジュゴンに乗った少年

コバルトブルーの海に浮かぶ<マレーシア> の小さな島<マンタナニ島> に
暮らす8歳の少年「ディン」は、伝説の海洋生物『ジュゴン』と出会った。
「ディン」がカヌーをこぐと、その音を聞きつけ、すぐさま『ジュゴン』が
近寄ってくる。
ある日彼は、『ジュゴン』を水中で観察しようと思いつき海へ飛び込むと、
『ジュゴン』の全体像を初めて間近に見ることができた。
『ジュゴン』は、海生哺乳類としては、唯一の草食性動物。
海草の食べ方も独特で、浅瀬の海底に生い茂る海草を食べるため、
海底の砂を吸うのだ。その姿からジュゴンは「海牛」(かいぎゅう)とも
呼ばれている。



眠る時も独特だ。まるで意識を失ったかのように沈んでいき、海底で動かなく
なったら寝ている証拠。この時、鼻の穴は特殊な弁でぴったり塞がり、
内部に水が流れ込むのを防いでいる。しかし、呼吸をするため、20分ごとに
目を覚まし、水面に顔を出さなければならない。



<ディン> と『ジュゴン』の心の距離はどんどん近くなり、彼はまるで
サーフィンのように『ジュゴン』の背中に乗り、『ジュゴン』もまた彼を
受け入れ、浅瀬の海を二人で進んでいく。



しかしある日、海中で爆音が鳴り響く。これは、大量の魚を一気に捕るために
水中爆発を起こす、「ダイナマイト漁」と呼ばれる違法の漁法によるもの。
『ジュゴン』はその爆音に驚き、<ディン> のもとを離れていってしまう。



<ディン> は親友である『ジュゴン』を毎日必死に探し続けた。
ダイナマイト漁の犯人も逮捕され、これから海には魚の群れが戻ってくる。
そうすればきっと、『ジュゴン』も帰ってくるはずだ。



1年後のある日、<ディン> は捜索中の海に見覚えのある黒い影を見つける。
あの『ジュゴン』は生きていた。『ジュゴン』もまた、とても嬉しそう。
ところが、この1年の間に、『ジュゴン』はメスのパートナーを見付け、
数頭の小さな群れを形成していた。
「ジュゴンには、僕より大切なものが出来たんだ。」
<ディン> は、この再会の日が、本当の別れになることを悟った。
彼らは互いに、大人への階段を一段上り、別々の道を進み始めたのである。



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