『吸血鬼伝説』。それはヨーロッパ各地に古くから伝わる恐怖の伝承。
当時の人々は『疫病などの災い』が発生すると、それを"吸血鬼の仕業"だと
考え、罪を犯した者など「吸血鬼の疑いのかかる人間」の墓を掘り起こしては、
2度と蘇えらないよう、心臓に杭を打ち込み、頭部を切断したと言う。
そんな『吸血鬼パニック』のきっかけとなった人物が、悲劇の人生を送った
「エレオノラ・アマリー公爵夫人」である。
「エレオノラ」は夫である公爵との間に子どもが出来ない事を悩んでいた。
そしてそれを解決する為『悪魔の力』に助けを求めてしまったのである。
当時"オオカミの乳"には『子どもを宿す力』があると信じられていた。
だが、一方で『オオカミは悪魔の仲間』とも考えられていた為、オオカミの
乳に手を出す女性などいなかったのである。しかし「エレオノラ」だけは、
『悪魔の力』を借りるつもりで"オオカミの乳"を飲み続けた。
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そして無事に男の子を出産。「エレオノラ」、実に41歳の時であった。
だがその後、夫である公爵が急死すると、その親族から「悪魔の力を信じる
女に、子どもは任せておけない!」と、「エレオノラ」は息子と離れ離れに
させられ、深い悲しみから、体調を崩してしまった。
すると彼女は、またしても『悪魔の力』に頼ってしまう。
何と、まったく効くハズの無い『怪しげな薬』を買い漁り始めたのである。
更に悪い事に、彼女の体調不良の原因が分からなかった医師たちにより、
『彼女は"悪魔の力"に頼った報いで"吸血鬼になる病"にかかっている!』
という診断を出されてしまったのだ!
こうして1741年、「エレオノラ」は60年の孤独な生涯を終えたのだが、
彼女遺体は"解剖"されたのである。これは「エレオノラ」が吸血鬼として
蘇るのを防ぐ為『心臓にとどめを刺す儀式』だったと考えられている。
そして『公爵家代々の墓』に入ることを許されず、離れた町の小さな教会に
葬られたのである。
だが「エレオノラ」の遺体が埋葬された町『チェスキー・クルムロフ』の住民
は穏やかではなかった。『吸血鬼』の女性が自分たちの町に葬られたと聞き、
大パニックが起こってしまったのだ!
彼らは自分の家に"吸血鬼よけの十字架やニンニク"を飾っただけでは気が
済まず、"襲われる前に攻撃しよう"と、『吸血鬼探し』を始めてしまった
のである!
そしてその"凶行"ともいえる『吸血鬼パニック』は数年間に渡って行われ、
その間、実に多くの死体が、心臓に"杭"を打ち込まれたのである。
今回、「エレオノラ」の埋葬された教会での調査が行われ、地下に埋められた
彼女の"棺の姿"をカメラがとらえた。
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すると、260年ぶりに現れた「エレオノラ」の棺の上には、大きな石や木が
置かれていた。当時の人々が、彼女が吸血鬼として復活する事をいかに恐れて
いたかが伺われる。
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