11/02/07 OA
標高8000Mに眠る 弟の遺体を 我が家へ
中国とパキスタンの国境にある標高8047mの山『ブロード・ピーク』。その頂きを
目指した登山家「マーカス」は、頂上まであとわずかというところで力尽き、山の
途中で帰らぬ人となってしまった。8,000m級の山から遺体を回収するのは不可能と
言われていたが、故人の実の兄である「ギーオグ」が、それにチャレンジするという。
2007年7月18日、「ギーオグ」は弟のおさななじみ共に弟の遺体の回収に向かった。
標高7000mにある第三キャンプまでは順調に進んだ。しかしここを出発してしばらく
たった頃、「ギーオグ」の足のつま先が凍傷にかかり、さらに咳と腹痛のため前に
進めなくなってしまった。しかたなく「ギーオグ」は第三キャンプに戻ることに。
他のメンバーがゆっくりと上を目指していると、ついに弟「マーカス」の遺体を発見。
しかし問題はここから。歩くだけでも困難な道のりを、80㎏近い遺体を引きずり
ながら歩いていかなければならないのだ。ここは空気が薄く、筋肉が上手く働かない
為、実際には300㎏以上の重さに感じるという。
呼吸を整えながらゆっくりと進むが、特に空気の薄い『デスゾーン』に彼らが入って
からすでに15時間以上が経過している。早く降りなければ、全員の命が危ない。
そこで一行は、「マーカス」の遺体をいったんその場に残し、「ギーオグ」の待つ
第三キャンプに戻ることに。兄「ギーオグ」もどうにか体調を取り戻したため、再び
全員で弟のもとへと向かうことにする。
そしてついに、「ギーオグ」は弟の姿をその目でみることができた。
一年ぶりの再会であったが、悲しみに浸る暇もなく、遺体を運び始める。
こうして彼らは、これまで不可能とされていた標高8,000mからの遺体回収に、世界で
初めて成功したのである。
その後、家族や多くの仲間たちに囲まれ、登山家「マーカス・クロンタラー」の葬儀が、
しめやかに執り行われたのだ。
