<西アフリカ、ガーナの首都≪アクラ≫>の町の一角に、使えなくなった電化製品が
山のように積まれている。
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これらはアメリカやヨーロッパ、そして日本などの先進諸国からリサイクルや寄付と
いう名目で送られてきた物。これらは力ずくで壊され、コードやケーブルだけが
引き抜かれて、それを焼却場で子ども達にわずかなお金を渡して焼かせ、中の銅線を
取り出す。こうして取り出された銅は、ガーナ国内の大手輸出業者へと運ばれ、
そこから再び海外へと輸出されていく。
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ここで働く少年たちは1000人以上。その中の一人「ダガラ(15)」は貧しさゆえに故郷
を離れ、仕事を求めてこの焼却場にきて3年が経った。彼は、少しでも早くコードの
カバーを焼く為、燃料代わりにタイヤや発泡スチロールを一緒に燃やす。だが、この
時に出る真っ黒な煙には、発ガン性物質の『ダイオキシン』や、DNAを傷付ける
『ベンゾピレン』、ぜんそくの原因となる『硫黄酸化物』といった有害物質が含まれ、
「ダガラ」の体をむしばんでいる。又、焼けたビニールや火花で、足には、無数の
やけどの傷跡が。
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仕事を終えた「ダガラ」が向かったのは、ゴミで埋め尽くされた道の先にある木造の
コンテナのような自分の家。同年代の4人の友人たちと暮らしているが、トイレも
キッチンもなく、公共の洗い場が風呂代わりだ。
翌日は雨。これでは火が燃やせず、お金は手に入らない。空腹も堪えるしかない。
雨が止み、「ダガラ」は焼却場へと向かった。業者からコードを受け取り、古い
タイヤを使って燃やし始めた。これで昼食代くらいは稼げそうだと思ったら、燃やし
終わった銅を見た業者の男は「燃やし方が汚い」と文句を言い、金を支払わず、
銅だけを持って、行ってしまった。相手が子どもだからといってお金を払わない事は
よくあるのだ。
数日後、「ダガラ」は3年ぶりに里帰り。故郷の町「タマレ」までは、およそ800km。
祖母や兄弟、親戚たちに迎えられ嬉しそうな「ダガラ」。そこへ息子の帰郷を知り、
特別に仕事を早く切り上げた父親が帰ってきた。再会を喜び抱き合う2人。しかし父
は息子の体についた見覚えのない傷跡に黙って触れながら、息子の仕事の話に耳を
かたむけていた。すると「ダガラ」が、ポケットから15セディを取り出した。少ない
収入からコツコツと貯めた彼の全財産。日本円で770円ほどに過ぎないが、ガーナで
は大きな家計の助けとなる。
その後、首都<アクラ>に戻った「ダガラ」は相変わらずコードを焼いている。
彼の将来の夢は、お金を稼ぎ、家族みんなで暮らせる大きな家をつくることだという。
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