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舞踏会で |
ベルト・モリゾ (Berthe Morisot,1841〜1895) |
※ 油彩・カンヴァス 1875年 62×52cm
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ここで描かれているのは舞踏会に出席するために美しく着飾った女性である。大きく肩を出した「デコルテ」の服装、手袋、きれいに結い上げ花飾りをつけた髪、ロココ風の絵の描かれた扇子。これらは当時舞踏会に出席するために求められた完璧な服装であった。白く透明感のあるドレス、大げさすぎないリボンやコサージュ、イヤリングは、その表情とともに、この女性の出自の高貴さや品格を物語っている。
舞踏会は劇場と並んで、19世紀当時ブルジョワジーの女性たちが、着飾って外出する華やかな場所であった。マネやドガ、ルノワールなど同時代の印象派の画家たちは、これらの場所やそこに集まる女性たちに、「近代生活」を見い出し多く描いたが、モリゾもまた例外ではなかった。しかしモリゾの場合、これらの画家たちと少し視点が違う。彼女が取り上げているのは、あくまでも舞踏会や劇場に行くための服装に身を包んだ女性の姿のみであって、舞踏会や劇場の情景が描かれることはない。この作品でも、女性が座っている背景にみえる花の植えられた大きな鉢は、モリゾの家の室内にあったものであり、ここが実際の舞踏会場でないことは明らかだ。女性は、たしかに完璧なまでに美しく着飾っている。だがきりりとした意志的な目つきと顔立ち、態度は、彼女が、ドレスや飾りといったうわべの虚飾に負けない、内面をもった女性でもあることをひそかに強調した肖像となっている。
(解説・美術史家 坂上桂子)
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