ピアノのレッスン
 ギュスターヴ・カイユボット
　　　（Gustave Caillebotte,1848〜1894）
 ※ 油彩・カンヴァス　1881年　81×65cm
　印象派の画家カイユボットは、19世紀末の都市やブルジョワの日常生活、レジャーの光景を数多くの作品に残した。ピアノ演奏の主題は、弟がグランドピアノに向かっている作品の他、本作品が知られる。ここでは羽飾りのある帽子をかぶった婦人がピアノのレッスンに来ている。ピアノを演奏する優雅な女性たちを描いたルノワールやマネらの作品、そして自身の他の一作とは異なって、本作では主人公たちは斜め後ろから捉えられた。このため、手でリズムをとっている教師の背中に隠れて、鍵盤上を動く生徒の手の様子はわからない。多少、窮屈な感がなくもない構図、女性たちの衣服やピアノの色彩の重々しさがレッスンの厳格さを想像させるが、ピアノの上の花瓶と花がそれを和らげている。カイユボットからモネに贈られ、ジヴェルニーの寝室に掲げられていたという事実は、後者にとって特別な女性がモデルであったという推測をもたらしている。
（解説・宮城県美術館　学芸員　西村勇晴）