クロード・モネ(Claude Monet,1840〜1926)



 ベルト・モリゾ
 Berthe Morisot,1841〜1895
 印象派の画家として、モネやルノワールは、非常に親しまれています。しかし、知られているのは男性の画家ばかりです。それでは女性の画家となるとどうでしょうか?今回、日本初公開となるルアール・コレクションの中には、女性画家ベルト・モリゾ(Berthe Morisot,1841〜1895)の作品が数多くあります。これまで彼女の作品は日本において紹介される機会が少なかったために、知られることはほとんどありませんでした。ルアール・コレクションは、そういった意味でも、"秘蔵"のコレクションといえるでしょう。
 そして、ベルト・モリゾの素顔とその作品とは―。

 比較的裕福な家庭に生まれたベルト・モリゾは2人の姉とともに良家の子女の良い趣味として絵を描きはじめます。画才があると見込まれたモリゾは本展出品作家でもあるカミーユ・コロー(Camille Corot,1796〜1875)のもとで勉強し、戸外でも制作します。当時、女性の行動範囲が限られていたなか、戸外で絵を描くというのは破天荒なことでした。画家としてのモリゾの背景を追ったとき、忘れてはならないのが、"近代絵画の父"と言われるエドゥアール・マネです。マネから多くを学んだほか、彼のモデルを務め、マネの実弟ウジェーヌ・マネと結婚しました。当時、女性の美術学校の入学は認められていないなど、芸術の世界も男性中心の社会でした。しかし、このような社会背景のもとで、女性画家として活躍しました。
 「今までにない独自の展覧会を開く」という旗印のもとに集まったモネやルノワール、シスレー、ドガらと交流を深め、グループ展開催の中核メンバーにも加わりました。このグループ展は、1874年の第1回に開かれた印象派展、当時の名称でいえば、「画家、彫刻家、版画家など芸術家の共同出資会社」第1回展です。今日とは異なる時代背景のなかで、芸術に対して熱意や意欲をもっていたモリゾは、明るい色彩、自由な筆使い、スケッチ風の描き方など彼女独自の画風を生み出していきます。以後、全8回開かれた印象派展のうち、娘が生まれ育児に時間を費やした時に開催された第4回展を除き、7回に参加しています。
 モリゾが描く世界は、母、姉妹、夫、娘、友人の娘といった身近な人物や、読書や裁縫、散歩をする女性たちの様子など日常的な風景でした。その日常の風景を優しく見つめ、温かな視点で明るい光の中に表現しました。そしてその作品のなかには、現代の女性に通じるような強く魅力的な人間像が感じられます。