日頃何気なく使っている電気。しかしその電気がどうやって家庭まで届いているか、皆さんご存知ですか?そこで科学の素浪人・矢野左衛門が立ち上がりました。休養のため泊まった群馬の温泉から、電気の来る道のりをさかのぼります。果たしてそこで矢野左衛門が出会ったものは?今回は電気・送電の科学です。
旅に出る前に矢野左衛門、電気の基本について勉強です。電圧・ボルトと電流・アンペア、さらに電力・ワットの違いとは?その仕組みは水道の蛇口に当てはめるとよくわかります。水道の蛇口には、常に一定の水圧がかかっていて、蛇口をひねるとすぐに水が流れてきます。この時、蛇口を大きくひねれば流れる水の量は多くなり、小さくひねれば少なく流れるのは、皆さん御存知の通りです。これを電気に当てはめると、コンセントには常に100ボルトの電圧で電気が来ていて、ここにプラグを差し込むと電気は流れます。この時低いワット数の電球を取り付けると、電気は少ししか流れず暗くなり、逆に高いワット数の電球に取り替えると電気はたくさん流れて明るくなります。つまり、電圧は水圧、電流は流れる水の量に例えることができるのです。そして電力・ワットとは、1秒あたりの電気の仕事量を指し、電圧(ボルト)×電流(アンペア)で表します。
| 電圧は水圧、電流は水流に当てはめるとよくわかる!
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さらに電線をさかのぼりたどっていく矢野さん。すると今度は電線がみんな謎の建物へと消えていってしまいました。その建物は変電所という、電線の電圧を変えるための施設で、さらに幾つかの変電所を経て、電圧は最大50万ボルトまで達していました。つまり、発電所を出たばかりの電気は、50万ボルトで送られ、その後どんどん電圧を減らしていき、最終的に100ボルトにして家庭へ届けられているのです。
しかし、なぜこれほどまでの高電圧で電気を送らないといけないのでしょう?魚住アナウンサーが、高電圧小電流の回路と、低電圧大電流の回路で同じ電力を送ってみました。同じ明るさの電球で比べてみると、高電圧小電流の方が明るく輝いています。届いた電力を比較してみても、低電圧大電流の方が届いた電流が少なかったのです。それぞれの電線を触ってみると、低電圧大電流の電線は熱を帯びて熱くなっています。なぜかというと高い電圧で送ると少ない電流がスムースに流れ、一方低い電圧で電流をたくさん流すと、送電線の中でスムースに流れない電気が熱に変わってしまい、電力のロスが大きくなるのです。
| 同じ電力を送るなら、電流が小さくなるように高電圧で送った方がロスは少ない!
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高圧電線と鉄塔の間に、何やら白い磁器のようなものが連なっているのに皆さん気がつきますか?身近な電線にもついているこの白い物体、がいし、といいます。がいしは茶碗と同じ磁器でできていて、電線の電気が鉄塔に伝わらないように絶縁していて、送電線電圧の大きさの違いによって数や大きさが違ってきます。さらに過酷な自然条件に耐えられるように様々な研究実験が行われているのです。
矢野左衛門が向かった研究所では、巨大ながいしに塩水をかけた後に高電圧をかけていました。すると大音響と共にカミナリのような火花が飛び散り、がいしは割れて絶縁状態が失われてしまいました。これは海水がかかった状態での送電実験だったのです。海の側に立つこともある送電鉄塔、がいしは塩水にも耐えなければなりません。高電圧で送電するということは、最悪なケースにも耐えられるよう、高度な技術が要求されるのです。
このように、電気を送るということは、実に大変な仕事だったのです。沢山の人の努力と研究があってこそ安全に便利に電気が使えるのだと、改めて噛みしめる矢野左衛門でした
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