最近聞きなれない魚の名前を耳にしませんか?“銀むつ”。いったいこの魚は何?と早速調査を開始した矢野リポーター。すると、なんとこれは深海魚だったのです。
深海とは、一般的に水深200メートル以下の海を指します。なかなかなじみの無い所のように思えるのですが、意外と私たちの生活に密着している所だったのです。そして人類の未来も実は深海が握っている?という噂。今回はそんな深海の謎に挑戦します。
銀むつは、標準和名・マジェランアイナメといい、通称メロ。南アメリカ大陸や南極大陸周辺でとられています。その他にも白身魚のフライ、フィッシュバーガーにはメルルーサ、粕漬けにキング、冷凍食品の材料としてホキ…と、意外にも、今や深海魚は大変身近なものになっていたのです。煮付けなどでおなじみのあの身近な魚、キンメダイも、日本近海でとれる深海魚だったのです。
スタジオには深海魚寿司で有名な伊豆の寿司屋さんが登場。所さんが試食する深海魚寿司のお味は、白身に脂がのったものが多く、意外にもいけるとのこと。名前はトロボッチ、ゲホーなど変なんですけど…
日本が世界に誇る潜水船、しんかい6500。深さ6500メートルの世界にまで潜れるその船内に矢野さんが潜入。その内部はとても狭く、日本人好みのお座敷仕様となっていました。この操縦室、深海6500メートルの水圧に耐えるため、チタン合金製の直径2mの球体になっています。そのため中の空間の広さにはおのずと限界が生じてしまうのです。
では、潜水船の浮き沈みのメカニズムを説明しましょう。船には、上に水を入れるタンク、下に重りを入れるタンクがあり、そこには4つの鉄製の重りが入っています。船が潜る時には上のタンクに水を入れ、その重みで潜っていきます。そして海底に近づいたところで重りを2つ捨てます。その軽くなった分で浮く力と沈む力のバランスを取り、水平の移動が可能となります。そして作業が終わると、残った2つの重りを捨てることで船体を軽くして浮上するのです。しんかい 6500よりたくさんの不思議な生物が明らかになってきました。全長4.5メートルもある細長く幻想的な魚、リュウグウノツカイ。なんと海底に長い足(?)で立っている魚イトヒキイワシ。これらの魚は、いったいどうやって深海という水圧の高い苛酷な環境で生きているのでしょうか?ここで実験です。浅い海に棲む魚を水圧タンクに入れて水圧をかけていきます。すると6気圧、大体50mの深さの水圧になったところで、魚は底に沈んで動かなくなってしまいました。これは、魚の浮き袋が水圧で押しつぶされたために浮くことができなくなってしまったんです。深海魚もその祖先たちはもともと浅い海に棲んで浮き袋を使っていました。しかし敵の少ない深い海へと移り住んだときに押しつぶされた浮き袋は使うことが無くなったのです。その代わりに深海魚たちは体内に水より軽い脂を取り込み、その浮力を浮き袋代わりにしているのです。所さんが食べた深海魚のお寿司が、脂がのっていておいしかったのは、このためだったのです。逆に深海魚が釣られて急激に浅いところへ引き上げられると、ペシャンコだった浮き袋が急激に膨張して口から飛び出てしまったりします。
深海というとおなじみなのが、しんしんと降るマリンスノー。採取してみるときれいな雪というよりなんだかゴミのよう。顕微鏡で見てみると、どうやらその正体は、動物プランクトンの死がいや、植物プランクトンの殻などのようでした。さらに分析してみると、金属などのミネラルなど、ありとあらゆる物質が含まれていることがわかりました。これらすべてがマリンスノーを作っていたのです。このマリンスノーは、そのほとんどが、海底に到達する前に、海水に溶け込んだりバクテリアに分解されてしまい、それが海の栄養分となります。その栄養分は、海水の流れで再び浅い海に運ばれます。太陽の恵みを受ける浅い海では、栄養分を使ってプランクトンが発生し、それが他の生物のえさになったり、再びマリンスノーとして深海へ落ちていったりするのです。この循環が海を豊かに保っていました。
| マリンスノーは、海を豊かにする栄養の素だった!
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最近ブームを呼んでいるのが、海洋深層水。飲料水から化粧品など、多岐に渡って使われています。成分を浅い海と比べてみると植物プランクトンの肥料となる成分が、浅い海よりも多く含まれていました。深海の海はマリンスノーのために栄養の宝庫となっていたのです。事実、世界の海で、海洋深層水が海面近くまで来る湧昇海域と呼ばれるところは、すべて良い漁場となっています。そこで今、ポンプで深層水を浅い海にくみ上げることでプランクトンの豊富な良い漁場を人工的に作るという計画が進められています。深海は人類を救う、さまざまな可能性を秘めた、まさにフロンティアなのです。
| 海洋深層水の豊富な栄養は、人類の食料難を救うカギとなる!
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