お正月公開される話題の映画「ダイナソー」。コンピューターグラフィックで表現される恐竜は恐ろしいほどリアルです。スピルバーグ監督の「ジュラシックパーク」をから始まった恐竜のCG映画は恐るべき進歩を遂げているのです。けれど、いったいこの恐竜、どこまでが本当なのでしょう?出てくるの化石は骨だけなのに、なぜ色や体格や鳴き声や走るスピードまで分かるのでしょう?
さらには、よく見てみると、恐竜たちは私たちが子供の頃に比べて、ずいぶん動き方や、すむ場所が変わっているんです。
いったいどこまでが本当で、どこからが想像なのでしょうか?今回の「目がテン!」で、恐竜映画の見方が変わります!
「ダイナソー」の主役はイグアノドン。草食の恐竜です。しかし草食恐竜と肉食恐竜の区別はどうやっているのでしょう?その違いは、歯にあります。肉食恐竜の歯は鋭くとがり、ステーキナイフのようなギザギザがついています。一方イグアノドンなど草食恐竜の歯は一つ一つが平たくなってびっしり生えています。
さらにイグアノドンの口を見てビックリ。何だかやたらおちょぼ口なのです。恐竜といえば、大きく裂けた口が印象的です。実際、イグアノドンもかつては大きく裂けた口で描かれていました。しかし現在生きている動物で口が大きく裂けているのは、ライオンなどの肉食動物です。それは、エサである獲物にガブッと噛みついたらそのまま丸飲みしてしまうためです。ウシやウマなどの草食動物は、草をすりつぶすようによく噛むために、口が裂けていたらエサをみんな口からこぼしてしまうので、みなおちょぼ口なのです。イグアノドンを草食動物と考えた場合、やはり食べ物をこぼさないよう、おちょぼ口だったと考える方が自然だったのです。
恐竜の代表格といえば、肉食恐竜ティラノサウルス。「ジュラシックパーク」でも車を追いかけるシーンが印象的でした。ですが、よく見ると、このティラノサウルスはやたら前傾姿勢で走っていました。しかし私たちが子供の頃、ティラノサウルスは直立して尾を引きずって歩いていたはずです。実はこの変化は、生体力学的に検証された結果だったのです。それぞれの模型を歩かせてみると、現在の水平歩行型は、体の揺れが少なく安定しています。それに対し昔の直立型は、体全体の揺れに伴い、尻尾も大きく揺れています。つまり直立型よりも水平型の方が無駄な動きがないのです。生物は、基本的にエネルギーの消費が少ない動きを選択すると考えられるので、ティラノサウルスは前傾姿勢で復元されるようになったのです。
またそれに伴い、ティラノサウルスは非常に活動的な生物として描かれるようになりました。けれど恐竜に一番近いとされるワニは、変温動物であまり活動的とはいえません。そこで最近ではトリが恐竜に最も近い生物として考えられています。その証拠に5年前に中国で発見された「中華竜鳥」の化石には、羽毛のような痕跡が残っていました。そのため恐竜はトリの先祖であり、恒温動物として非常に活発な生物であった可能性が高くなったのです。
| 恐竜は、鳥類の祖先であり、恒温動物として活発に動いていた!
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長い首で知られる巨大草食恐竜・ブラキオサウルス。これまた最近の映画ではのしのしと地上を歩いています。かつては水中で生活し、首から上を出している絵でおなじみだったのですが・・・
その根拠は、体重が重すぎて陸上では暮らせなかったと考えられていたことと、ブラキオサウルスの足跡の化石が、前足だけのものだったからなのです。水中で半分体が浮いていたためにこうなったと考えられたのです。
しかし最近のブラキオサウルスは、陸上で生活していたように描かれています。実は、これも最近の研究で、陸上でも十分体重を支えることができたということがわかり、陸上生活説が有力となったのです。前足だけの足跡も、彼らの前足と後ろ足の大きさの違いで説明することができます。彼らは足の大きさの違いで前足にかかる体重が後ろ足の3倍になることがわかりました。つまり前足のほうが地中深くまで足跡を残すので、足跡の化石が深い地層で発見されると、前足のものだけが見つかるというわけです。
さらに、約46tの体重を、約35cmの直径の足で支えているブラキオサウルスは、水辺や沼地では足がズブズブと沈んでしまい、逆に生活できなかったのでは?と考えられるようになりました。
足跡の化石は実は色々なことを物語ってくれるのです。その一つが、歩いたり走ったりする速度。なんで足跡一つでわかってしまうのでしょう。実は今生きている動物から推察することができるのです。例えば、ヒトがいろいろな速度で歩いた時、そのスピードに応じて歩幅も変化します。スピードが速くなれば、歩幅も比例してどんどん大きくなっていきます。この法則は他の動物にも当てはまります。つまり同じ公式に恐竜を当てはめれば速度がわかるのです。また同じ方向を向いている足跡がいくつもあることで、ある種の恐竜は群れで行動するということも明らかになりました。
そのほかにも、骨格から肉付き、皮フの跡の化石から皮フ感など、様々なことが化石からわかります。しかしわからないことも、まだまだたくさんあります。皮フ感はわかっても、その色まではわかりません。現在の復元図は、今のは虫類を基本に想像しているにすぎません。また鳴き声も、だれも聞いたことがないのでまったくの想像です。
そしてなんと言っても恐竜最大の謎は6500万年前の絶滅の原因です。現在有力な説として、巨大隕石が地球に衝突してその大量のチリに大気がおおわれて気候が変化したために絶滅したという説と、世界規模の火山の大噴火のための気候の変化を原因とする説の2つがあります。しかし、どちらもはっきりとした証拠に欠け、その答えは21世紀を待たなければなりません。
| 歩くスピード、肉付き、皮フ感など、化石からわかることはたくさんある!
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