今年、日本の科学界で最も輝かしい話題といえば、なんと言っても白川英樹博士のノーベル化学賞受賞。そして今日は、その授賞式が行われる日なのです。そこで今日の「目がテン!」は、これを記念してプラスチックを科学します。白川博士の受賞理由が、電気を通すプラスチックの開発。いったい電気を通すプラスチックとは何なのでしょう?そしてプラスチックはどれだけ生活の中に入り込んでいるのでしょうか?
プラスチックは日常生活の中でどれだけ使われているのでしょう?そこで矢野リポーターが、ある一人暮らしの男性の一室を訪ねました。ここで何にプラスチックが使われているかを大調査!すると矢野さんが玄関をくぐるやいなや、床はポリプロピレン、壁もビニール樹脂と、いきなりプラスチックに囲まれてしまいました。その他にもソファなどの家具やほとんどの家電製品がプラスチックでできていました。さらにカーテンや、矢野さんが身につけている衣類までもが、ナイロンヤポリエステルといった化学繊維と呼ばれるプラスチックだったのです。そして「目がテン!」ならではの、車1台の解体にチャレンジ。金属で出来ているイメージの自動車ですが、ハンドルなどの内装部品のほかにも、バンパーやバッテリーなど、合計240個ものプラスチック部品が使われていました。もはや私達は、プラスチックなしには生活できないのでした。
さてそもそもプラスチックとは何なのでしょう?その定義はJIS日本工業規格によると、“高分子物質を主原料として、人工的に有能な形状に形作られた固体”となっています。高分子って、いったいどういう事なのでしょう?まず、物質の成り立ちを説明すると、物質の最小単位を分子と呼び、その分子を構成しているのが原子です。例えば水の分子は酸素原子1個と水素原子2個で、水の分子が作られています。一方プラスチックは、例えばポリエチレンの場合、炭素原子2個と水素原子4個でできたエチレンという分子が実に千個以上つながって、ポリエチレンの分子を作っているのです。そのため、水の分子に比べ、プラスチックの分子は原子の数が多く、分子自体も大きくなります。このように、ある分子が数百から数千つながってできた大きな分子を、高分子と呼びます。
| プラスチックとは、数百から数千の分子がつながった高分子によってできている。
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プラスチックの大きな特徴は軽さです。それは、軽い原子がスカスカにつながっているためなのです。そして分子がたくさん絡み合っているためにとても丈夫です。さらにプラスチックの大きな特徴は、電気を通さないことです。しかし、今回、白川博士がノーベル賞をとったのは“電気を通すプラスチック”。これはどういうことなのでしょう。
それを説明するには、まず電気の流れる仕組みを説明しなければなりません。分子を構成する原子は、原子核と電子でできています。電子は、原子核の周りを回っていて、電気的にはマイナスの性質を持っています。分子から電子が抜けると、プラスの性質の不安定な状態になります。すると安定した状態になろうと、横の分子から電子を奪います。これが次々と繰り返されて、電子の受け渡しが行われます。このように電子が分子間を動く状態を、「電気が流れる」というのです。プラスチックは、普通電子の状態が非常に安定しているため、分子間の電子の受け渡しが行われないため、電気が流れないのです。
そこで、電気が流れるプラスチックを、ポリピロールというプラスチックを例に見てみましょう。このポリピロールというプラスチックは、塩化第2鉄とポリビニールアルコールを混ぜ合わせたものに、ピロールという液体を付着させて作ります。このポリピロールに含まれる塩化第2鉄が、ピロールの分子から電子を奪うことで、分子の電子バランスが不安定になり、分子間の電子の受け渡しが可能になるのです。
白川博士が開発したにはポリアセチレンというプラスチックで、実は何と23年前の1977年のことでした。今では携帯電話の画面や、駅のタッチパネルなどに利用されています。
高分子物質である吸水性ポリマー。紙おむつなどで使われているのがこの吸水性ポリマーなのですが、なぜ水を吸収し、そして逃がさないのでしょうか?その秘密は高分子そのものにありました。吸水性ポリマーを構成する、大量の分子の間にはすき間がたくさんあり、そこに科学的に水を閉じ込めるために、吸水力も保水力も優れているのです。その実力を試すために、「目がテン!」はまたもや無茶な実験にチャレンジ。100ャの子供用プールの水を吸水性ポリマーで残らず吸い取ってしまおうというのです。するとたった350gで、100リットルの水をすべて吸い取ったのでした。しかもどんなに絞っても、1滴も出て来ませんでした。
素晴らしいことだらけのプラスチックですが、大きな弱点があります。丈夫で形が安定しているという特性を持つプラスチックは、ゴミとなったとき、巨大な邪魔ものとなってしまうのです。しかもダイオキシンなどの環境汚染の恐れもあるため、簡単に燃やすこともできません。しかし、微生物が分解できるプラスチックがあったのです。その名は生分解性プラスチック。ごく普通に川にいる、ラルストニアピケッティイという微生物が、分解酵素を口から出して体内に取り込み、無害な水と2酸化炭素に分解してしまうというのです。さらに驚くことに、このプラスチックは、微生物が作り出すのでした。この微生物はアルカリゲネスラトゥスといいます。この微生物が食物として糖分を体内に吸収したとき、体内で糖分から2酸化炭素が離れ、残った分子がつながって高分子となり、プラスチックが生成されるのです。まだまだ試作段階ですが、将来のゴミ対策におおいに役立つことが期待されています。
| 21世紀のゴミ問題は、生分解性プラスチックが解決する!
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