冬真っ盛りのこの時期。なんとこの時期に咲き始める花があります。それがツバキ。なんとツバキの学名は“カメリア・ジャポニカ”。その名の通り日本原産の植物なんです。しかしなんでこの時期に咲き始めるのでしょう?花粉を運んでくれる虫もいないのではないでしょうか?なぜこの時期に真っ赤な花を咲かせるのでしょうか?
矢野リポーターはツバキの名所、伊豆大島に飛びました。ここに咲いているのは日本の代表的なツバキ、ヤブツバキ。しかしその分布を見るとちょっと意外。北海道より南の、本州の暖かい沿岸の方に分布しているのです。じつはツバキは、暖かい場所を好む花だったのです。ではいったいなぜこの時期に咲くのでしょう?そこで、桜など他の樹木の花が咲くメカニズムと比べてみましょう。桜などの、日本に昔からある樹木は、夏から秋にかけてつぼみをつくります。しかし9月頃になると冬の訪れを知り、一旦開花の活動を止めて深い眠りに入ります。これを休眠といいます。そして3〜4月頃に気温が高くなると、開花活動を再開させて花を咲かせるのです。一方ツバキは、実はその花のルーツは南方にあり、9月頃から入る休眠の眠りがとても浅いのです。なぜかといえば、南国の気候は、日本などのように四季がはっきりしていません。そのため冬が来たといっても気温がほんの少し下がるだけなので、桜などのように深く眠ってしまうと、その微妙な変化に気付かないのです。つまり眠りが浅く、気温のちょっとした変化に敏感なツバキは、1〜2月頃に少しでも暖かい日があると、眠りから醒めて花を咲かせてしまうというわけなのです。
ツバキのもう一つの特徴は、そのぶ厚くてつやつやした葉。そもそもツバキのその名の由来は“圧葉木(アツバキ)”、“艶葉木(ツヤバキ)”という葉に関わる言葉から来たというのです。ツバキは森の中では低い木で、他の木に遮られたわずかな光で光合成をしなければなりません。そのため、弱い光でも光合成できるように葉緑素をたくさん持った厚い葉になったのです。またその表面はクチクラ層という層におおわれたいます。この層はロウのような性質を持っていて、そのために葉の表面がツヤツヤしているという訳です。この層が発達することによって、乾燥から身を守っていたのです。ちなみに冬に葉を落とすブナの葉などにはこの層はほとんどありません。
| ツバキは暖かい場所を好むくせに、花も葉も冬に適していた!
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こんな冬、早春に花開いて、ツバキはどうやって受粉するのでしょうか?どうやら昆虫ではなさそうです。では、スギなどの様に、風で受粉する風媒花なのでしょうか?そこで矢野さんがツバキの花を吹いてみました。しかしびくともしない花粉。どうやら風でもなさそうです。
花の中を見てみると、大量の蜜がありました。ではやはり何か生物がこの蜜目当てに来て、受粉するのでしょうか?そこで矢野さんは花をじっと見つめるという持久戦に出ました。すると、そこに現れたのはメジロ。ツバキはトリが受粉させる鳥媒花だったのです。そしてツバキはトリのために様々な工夫をしていました。ツバキの花びらは、一見すると5枚あるように見えますが、実は下のほうですべてつながった1枚の花びらだったのです。そのためトリが勢いよく飛びついてもはがれないほど頑丈なのです。さらに、花の根元は大きなガクでガードし、内部もおしべが固い筒状になることでトリが花粉の付く正面からしか蜜を吸えないようにしているのです。
ツバキといえば、その油も有名。矢野さんが油工場に向かい、その製造工程を見ました。その味に矢野さんも思わずびっくり。絞りたての油はくせも無く、本当においしいのです。
調べてみると、ツバキの種子に含まれる油分は植物界の中でもピカイチ。60%もの脂肪分を含んでいます。いったいなぜこんなに油を含んでいるのでしょう?そこにはツバキの厳しい生き残り戦術が有ったのです。植物の種子には、脂肪を多く含んでいるものと、デンプンを多く含んでいるものとに分けられます。そこでデンプンを多く含むクリとツバキとの1gあたりの熱量を比較すると、クリが2400kcalなのに対し、ツバキの種子はクリの3倍近くの7000kcalもありました。ツバキはもともと冬でも葉をつけた高い木に囲まれることが多く、その林の地面にはわずか0.5%の太陽の光しか届きません。そんな光の弱い地面に種子を落とすツバキは、発芽して葉を出した後も、しばらくは種子の中のエネルギーに頼って生きていかなければなりません。そのためデンプンよりもエネルギー効率のよい油を、種子に貯えるようになったのです。
| ツバキ油は、生存競争を生き抜くための高カロリー種子の賜物だった!
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何とツバキには意外な親戚が。それはお茶。お茶の木は、ツバキ科ツバキ属チャ節。結構近い間柄なのです。では、ツバキの葉からお茶を作れないでしょうか?早速矢野さんがチャレンジ!ところが普通お茶を作る際にはお茶の木の新芽を摘み取って作るのですが、ツバキの場合、花のこの時期には新芽がありません。このままお茶作りは断念か!?実はまだウラ技があったのです。それは成熟した固い葉から作る番茶。早速ツバキの葉2kgを集めて番ツバキ茶作り開始です。しかし製造過程でも、ツバキの葉がお茶の葉よりも恐ろしく固いため、なかなかうまく行きません。そこでティーバッグを作るためのミンチマシーンに入れ、強制的にツバキの葉を砕きました。そんな苦労を経てやっと出来上がった番ツバキ茶。早速飲んでみました。なんだか草の匂いがしてちっとも美味しくありません。実はツバキの葉にはお茶の成分の一つであるカテキンの一部が含まれているものの、うまみ成分であるテアニンを始め、他の成分は全く含まれていなかったのです。ツバキ番茶、大失敗の巻でした。
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