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科学で美味旬のマグロ
#621 (2002/03/03)
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日本人はマグロが大好き!世界で獲れるマグロのおよそ4割も食べているんです!赤身でもよし、トロもよし。しかしこんなマグロも、江戸時代には人気が無かったって信じられますか?そこで矢野さんが古くからの江戸前の伝統を守るお寿司屋さんに行ってみました。すると出てきたのは、しょう油につけられた赤身の“づけ”、というもの。トロに至っては食べられるようになったのは戦後なのです。いったいなぜ、づけなのでしょう?今回は矢野さんがおいしいマグロを求めて東西を駆け巡ります。
矢野さんは世界で初めてマグロの養殖に成功した、和歌山県串本町にやってきました。とれたてピチピチのマグロを食べてしまおうという魂胆です。許可を得て矢野さんは、マグロの水槽に入りました。すると目の前にマグロが泳いでいるのですが、捕まえることは出来ません。マグロの泳ぐスピードは平均時速30キロ、時には100キロ以上ものスピードで泳ぐこともあるのです。
結局1本釣りにしたマグロをその場でさばいてもらうことに。するとその切り身はなんと全身トロだったのです。養殖マグロはたくさんのエサを与えられ、さらに泳ぐ範囲も限られているので、脂肪たっぷり。このため体全体がトロに近い状態になるんです。
早速このとれたてのトロを試食。しかしお世辞にもおいしくなかったのです。
なぜとれたてのマグロはおいしくないのでしょう?そこで矢野さんは、生のマグロにこだわる、マグロずしの名店に行きました。すると出てきたマグロは獲れてから4日たったもの。このマグロを試食して、さすがに矢野さん、笑顔がこぼれました。「うまい!」とれたてのマグロとこのマグロの違いはどこにあるのでしょう?
それは熟成でした。「焼肉」の回の牛肉でもそうでしたが、エネルギーの素となるATPという成分が、マグロの死後、うまみの成分であるイノシン酸に分解されるのです。そしてイノシン酸は死後3日から4日めでピークを迎えるのです。
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マグロは獲れたてよりも、数日寝かせたほうがうまい!
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日本で流通するマグロの8割が冷凍です。これはマグロが主に遠洋で獲れるため、冷凍しないと痛んでしまうからなのです。そしてここに江戸時代、マグロの人気がなかった理由がありました。江戸時代にはもっと近海でマグロが獲れていたのですが、冷凍技術がなかったため、運搬途中で傷んでしまい、魚河岸に並ぶころには美味しくなくなってしまうのでした。
そこで登場したのがしょう油につけ込んだ“づけ”。塩分の強いしょう油には防腐効果が有るのです。保存食としても優れたづけのお陰で、ようやくマグロは寿司ネタの仲間入りを果たしたのでした。
しかし冷凍マグロはなかなか解凍が難しいのです。そこで「目がテン!」では、解凍の名人、お寿司屋さんのテクニックを科学することにしました。なんと名人、40度ほどのお湯を準備。そこに塩(水の3%の量)を入れ、マグロを浸すこと1分。ペーパータオルで包み冷蔵庫で自然解凍したのです。
しかしなぜお湯につけるのでしょう?それは「0度からマイナス5度の魔の温度帯」をすばやく通過するため。この温度帯は氷の結晶が一番成長しやすい温度。溶け始めた水が、他の氷の結晶と結びつき大きな氷となってしまうのです。結果、細胞膜を壊してしまい、その亀裂からうまみ成分が逃げていってしまうのです。お湯を使うことで魔の温度帯をすばやく通過させ、うまみ成分を逃がさないというわけだったのです。
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冷凍マグロはぬるま湯につけて、0度〜マイナス5度の“魔の温度帯”をすばやく通過させよ!
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