旭山動物園
奇跡の秘密
第842回 2006年7月30日
今や夏季の入場者数では東京・上野動物園を上回り
日本一を誇る
という、
日本最北端の動物園、旭山動物園
。その人気の秘密は何なのか?その謎を徹底的に解明すべく、矢野さんが旭山動物園を訪れました。
まず訪れたのは、人気施設の一つ
ペンギン館
。そこで、ペンギンが魚を食べる様子を観察していると、なんとプールの中に人の姿が見えたのです。そこで、プールの下にある入り口から入ってみると、そこには
プールの中に作られた巨大な水中トンネル
があったのです。
実は、旭山動物園では
ペンギンが水中を「飛ぶ」ような姿を、トンネル状の水槽の中からも観察できる
のです。さらにトンネルを抜けると、今度はペンギンが水中から陸へと上がる姿が楽しめてしまいました。
続いて訪れたのは
アザラシ館
。人気の
円柱トンネルを上下に行き来するアザラシ
を見た後は、外に出て
アザラシを上から見ることが出来る
ようになっていました。
このように旭山動物園では、
動物を様々な角度から楽しめるよう、立体的な見せ方
をしていたのです。これを
「立体展示」
といい、実はこれこそが、旭山動物園が全国的な人気スポットになった秘密だったのです。
しかし、
なぜ旭山動物園で、「立体展示」が発展したのでしょう?
その秘密は、旭川なのに
「旭山」
という名前にありました。動物園全体を見渡してみると、旭山動物園は、その名のとおり、旭山という山に建てられた動物園であることがわかったのです。
そこで、動物園の人たちは
斜面に建物を作ることで、立体的に動物を楽しめる構造
を考案しました。実は、この普通ならマイナスである坂を、プラスに転じるアイデアこそが「立体展示」だったのです。
旭山動物園は、色んな角度から動物を楽しめる!
それは、山の斜面を利用した「立体展示」に秘密があったのだ!
次に、旭山動物園で最も人気のある
ホッキョクグマ館
を訪れました。ここでは、なんと
ホッキョクグマが水中にダイブする様子を見ることができる
のです。でも、一体どうしてホッキョクグマはこんな行動をとるのでしょうか?
実は、野生のホッキョクグマは、
本能的に水面から出てくる物体に反応し、水に飛び込む習性を持っています
。つまり、ホッキョクグマ側から見てみると、見物しているお客さんが、水面から顔を出しているエサのように見えているのです。さらに矢野さんがアザラシの帽子をかぶってウロウロしてみたところ、見事ホッキョクグマが、矢野さんに向かってダイブ。その大迫力に、矢野さんもタジタジでした。
このように、旭山動物園では見せ物でもショーでもなく、
動物の自然な生態が見られるような工夫
をしています。このような動物の本能を利用した見せ方を
「行動展示」
といい、これは
旭山動物園が発明したもの
なのだそうです。今や、この「行動展示」を取り入れる動物園が全国的に続出しています。
他にも「行動展示」の例では、
お客さんの頭上17メートルの高さを、安全ネットも無しに渡っていくオランウータン
の空中散歩も、一日の大半を木の上で生活する野生の習性を生かしたもの。オランウータンの指の力はリンゴだって簡単につぶせちゃうほどの強さなので、絶対に空中から落ちることはないそうなのです。
さらに、この行動展示には他にも良いことがありました。なんと旭山動物園では、成人してからのペアリングは難しいとされる
オランウータンの繁殖に成功した
そうなのです。実は、これも動物がイキイキと生活できる環境を作る「行動展示」のおかげだと言われています。つまり、
動物にとっても行動展示はプラスになっていた
のです。
旭山動物園の動物たちがイキイキとしているのは、動物の習性を活かした「行動展示」をしているからなのだ!