知的夏休み
軽井沢
特集
第1047回 2010年8月14日
連日続く、うだるような猛暑。そんな時こそ、避暑地に行きたいですよね。そこで今回はキング・オブ・避暑地、「
軽井沢
」を科学しちゃいます!
まずは軽井沢のブランド力を確かめるべく、街でこんな実験!
同じハムを同じ形に切り分け、「清里」、「那須高原」、「軽井沢」と名前を付けて食べ比べてもらいました。すると、30人中17人の人が「軽井沢ハム」が一番美味しいと答えたのです。
なぜ、ここまで軽井沢は人気があるのでしょうか?まずは、軽井沢の定番、テニスから検証!およそ50年前、天皇皇后両陛下がテニスをされて以来、テニスの聖地となった軽井沢。現地でプレーすれば上手くなるかも!ということで、東京と軽井沢で、同じ50cm四方の的に、10球中、サーブを何球当てられるのか実験です!まずは東京で、都内のスクールコーチ2名が挑戦したところ、2人の結果は、10球中、7球と6球とまずまずの命中率。2人にそのまま車で軽井沢に移動してもらい、同じ実験をすると…なんと命中は3球と2球だけと2人揃って散々な結果に。今度は反対に、軽井沢のコーチに同じ実験に挑戦してもらうと、ホームの軽井沢では10球中6球命中したのに、東京ではわずか3球しか命中せず…。話を聞くと、
軽井沢のコーチは、東京では球が重く感じ、東京のコーチは、軽井沢では球が軽く感じたというのです。
専門家によると、その秘密は気圧の違いにあると言います。
そこで、大学の実験室で気圧の違いによるボールの弾み方への影響を調べます。2mの高さから床にテニスボールを落とし、弾んだ高さを測定。5球行った結果、東京と同じ標高0mでは、平均は約118cmでした。続いて標高1000m、東京の気圧よりおよそ10%下がる軽井沢の気圧で実験すると…平均は約125cm。
実は、気圧が低い軽井沢では、ボールが膨張して硬くなり、よく弾むのです。実際に、東京から軽井沢の気圧に変化させると、ボールの直径はおよそ1mmも膨らんでいたのです。
軽井沢がテニスには向いていない場所にもかかわらず、盛んにテニスが行われる秘密は「土」にあるといいます。そこで実験!軽井沢と東京のテニスコートの同じ量の土をペットボトルに入れ、1リットルの水を流し込み、同時にキャップをはずしてどちらが早く水が抜けるのか調べます。すると、軽井沢の土は52分。一方、東京の土から、水が全部抜けるまで約3時間もかかりました。理由を専門家に伺うと、
東京の土壌は粘土質で、水はけが悪い一方、軽井沢は主に浅間山の火山噴火物でできた土壌なので、水はけが良いそうです。つまり、軽井沢は地面を平らにするだけで簡単にコートが作れるので、テニスが盛んだったのです。
軽井沢でテニスが盛んなのは、土壌の水はけがよく、平らにするだけでクレイコートを簡単に作ることができるからだった!
軽井沢といえば、日本有数の別荘地!ならば、セレブ達をうならせる美味しい高原野菜もいっぱい採れるのでは?と、矢野さんが農家を探してみると、畑も田んぼも全然見当たらず…
実は、軽井沢の農地面積は町全体のわずか2%だったのです。
軽井沢で数少ない畑を持っている方に伺うと、野菜や果物がほとんどできないといいます。
しかし、同じ長野県で、軽井沢と標高もほぼ同じなのに、至る所に田んぼや畑が広がり、野菜が豊富な松本市梓川とは何が違うのでしょうか?
そこで、軽井沢と松本、それぞれの畑の土を持ち帰り、同じ数の小松菜の種を蒔き、同じ環境で同じ量の水を与え、その成長を観察してみます。すると、2日後にはそれぞれの土から芽が出始めましたが、1週間後には、葉の大きさや茎の長さに明らかに差が出たのです。
専門家に分析してもらったところ、松本の土はph5.8、軽井沢の土はph5.2と、軽井沢は酸性の強い土だったのです。どうやら、軽井沢は農作物の育ちが悪く、永住には不向きなため、別荘地となったようです。
しかし、酸性の土壌を好むブルーベリーなどの植物は育ちやすい軽井沢。お土産屋さんでもよくジャムを見掛けますが、他にもハチミツやソフトクリームなど甘いものが大人気!その理由を専門家に聞いてみると、高地だと味覚が鈍感になるためだといいます。そこで実験!
濃度が違う3種類の砂糖水を、甘さが薄いと思う順に並び替えてもらいます。まずは、東京の街で飲み比べてもらった結果、20人中16人が正解!ところが、軽井沢で、日本各地からやってきた観光客の方に同じ実験をすると…なぜか20人中正解者はたったの8人という結果に。
このポイントは酸素量にあるといいます。そこで、酸素濃度が変えられる部屋で実験!4人の方に、まずは標高0mの東京の酸素量と同じ部屋で、同じ飲み比べ実験をしてもらうと、見事全員正解。そこで今度は4人に、富士山5合目の酸素量と同じに設定した部屋で1時間過ごしてもらった後、コップと中身を入れ変えて再び実験すると…なんと3人が不正解。塩味でも同じ実験をしましたが、同じく3人が不正解と、本当に酸素が薄いと味覚が鈍くなったのです。専門家によると、
高地では、酸素が薄いことに慣れるまで、一時的に脳の判断能力や、舌の味覚センサーまでも鈍くなると考えられているそうです。実際、日本航空ではこれを計算し、上空で食べる機内食の味付けを濃くする工夫をしているのだそうです。
軽井沢のような高地では、酸素が薄いので一時的に味覚が鈍るため、ジャムやソフトクリームなど甘いものが大人気なのだ!