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エレベーター の科学
第1154回 2012年11月24日


 私たちの生活になくてはならないものを考えてみると、色々ありますが、エレベーターもその一つではないでしょうか。これだけ高層建築が増えた現在、都会暮らしでエレベーターに乗らない日はないと言っても過言ではありません。でも身近にあるのに意外と知らないことの多いエレベーターが、今回のテーマです。ポイントは3つ。
「エレベーターを待っていると結構イライラするのはなぜなのか?」
「エレベーターは何キロで重量ブザーが鳴るのか?」
「開閉ボタンを上手に使うと早く目的階に着くってホント?」 の3本立てです。

①エレベーターの待ち時間ってなぜこうもイライラするの?
 実はこれ、日本テレビでエレベーターを待っている多くの人が感じている疑問でした。今回のテーマもこれがきっかけとなったぐらいの大疑問です。「信号」も「電車」も「行列」も待っている時はそれなりにイライラしますが、エレベーターの待ち時間のイライラの比じゃありません。なぜこうもイライラするものなのか?まず、そのイライラ度合いを見るためにこんな実験をしてみました。実験に協力してもらう男女10人に信号待ちをしてもらって、どのくらい待ったと感じたかを矢印の長さで表してもらいました。実際の待ち時間は1分でしたが、10人中8人が1分以内と回答し、平均の体感時間は57秒、ほぼ実時間どおりに感じていました。ではこれがエレベーターだとどう変わるのか?同じ10人にエレベーター待ちをしてもらいました。実際の待ち時間は信号と同じ1分です。結果は、1分以上待ったと感じた人が10人中7人に急増し、体感の平均時間も1分24秒と大幅に長くなったのです。中には2分半も待たされたと感じた人もいました。体感時間の長さは、イライラの度合いと関係しています。

 ではなぜエレベーターはイライラ度が高いのか?人間の時間感覚などを専門としている千葉大学の一川誠准教授によれば、以下の4つの要因がエレベーター待ちをイライラさせる元となっていると言います。

 1) エレベーター待ちは他にすることがない。
 2) 待っている場所は概ね視覚情報が少なく気が紛れない。
 3) 待ち時間の予想がつきにくい。
 4) 予想や期待が裏切られる場合がある。


イライラの体感時間  そして特に3)4)はイライラ感を強める働きをするというのです。そこで実験。エレベーターに細工をして、期待や予想通りにエレベーターがこない状況を作ってみましたすると、1分以上待たされたと感じた人は、10人中8人にのぼり、その平均体感時間は1分48秒とより長くなってしまいました。どうやらエレベーターにイライラするのは、期待や予想が裏切られることに起因しているようです。

所さんのポイント
ポイント1
待ってる間にやることがない上に、予想が裏切られるから、エレベーターの待ち時間はイライラするのだ!

②エレベーターは何キロで重量ブザーが鳴るのか?
 定員オーバーのブザーが鳴ってしまって、乗れなかったという経験はありませんか?特に女性は気まずい思いをしてしまいます。そんな時は絶対に乗らないという女性の方もいました。言うまでもなく、安全のために重量制限が設けられているのですが、最大積載量は、エレベーターの大きさや機種によって様々です。でも、どこまでは鳴らないのかちょっと知りたくないですか?積載重量1000キログラムというエレベーターで実験してみました。真ん中を空けるとブザーが鳴らないまず、10人の男性を用意して、100kgマイナス体重分の砂袋を持ってもらいました。つまり一人乗ると100キロの重さがかかるようにして実験開始です。一人一人順番にエレベーターに10人乗りましたが、ブザーは鳴りません。もう少しいけそうです。次に水を入れた2リットルのペットボトルを沢山用意しました。1本が2キロです。1本目は難なくクリア、しかし2本目でブザーが鳴ってしまいました。1004キロ。あわよくば1人ぐらいいけるのではと考えたのですが、意外に厳密でした。専門家によれば、多くのエレベーターには床のほぼ真ん中に重さをはかる秤センサーがあって、一定重量の重さがかかるとブザーが鳴る仕組みなんだとか。

 であれば、真ん中に極力重さがかからないようにすればもう少しいけるのでは・・・?再度実験してみました。エレベーターのはじにあらかじめ2本のペットボトル2本を入れておき、10人が壁にへばりつくように次々に乗ると、予想通りブザーは鳴りません。その後次々にペットボトルを増やして行った所、16本目で鳴ってしまいました。表示された積載重量より20キロ多く乗せることができました。とはいえ、今回はあくまで実験。積載重量の表示もブザーも利用者の安全のためのものですから、守るのが大切なのは言うまでもありません。

所さんのポイント
ポイント2
壁際にへばりつくようにエレベーターに乗ると、ほんの少―しだけブザーが鳴りにくくなるのだ。

③開閉ボタンを上手に使うと早く目的階に着くってホント?
 番組MCのユージさんと佐藤さんの間でエレベーターに乗ったら、まず閉じるボタンを押すか押さないかで話が盛り上がっていました。そこで、閉じるボタンを押すとどのくらい早く目的階につけるのかを実験してみました。ちなみに定員によって扉が開いている設定時間は異なり、マンションにある程度の小さなエレベーターでは何もしないと5秒程度で閉まり、15人乗りぐらいのものでは10秒前後で閉まるように設定されているそうです。理屈でいえば、自然に閉まる前に閉じるボタンを押せば早く目的階につけることになりますが、でもどの程度早くなるのか?エレベーターに4人が乗り込んだ状態で、一つの階では一人が降りるという条件とし、7階までいくという実験です。その結果は、何もしないよりも他の人が降りるたびに閉じるボタンを押して扉を閉めた方が28秒ほど早く7階までつきました。しかし、当然と言えば当然のこと。では閉じるボタンを連打すればもう少し早くつけるのではないか?実験してみましたが1回押しても連打しても早さはかわりませんでした。また、閉じるボタンが有効な条件も限定的です。閉じるボタンを使っても、途中から乗ってくる人が多ければ、何もしなくても早く着く場合だってあります。早く着きたいという気持ちはわかりますが、気持ちに余裕を持ってエレベーターを利用することをオススメします。何しろ予想が難しい、予想が裏切られるのがエレベーターなのですから。



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