ハシビロコウ
の科学
第1194回 2013年9月15日
今、動物園で話題の変な動物「ハシビロコウ」。
こわ〜い顔なのに、寝ぐせのような頭の飾り羽。何だかお茶目な立ち姿にファンが急増中なんです。しかし何と言ってもハシビロコウが人気なのは・・・そう!鳥なのに、なぜだかじ〜っと動かないんです。
そこで本日の目がテンは、動かないことで大人気の珍鳥「ハシビロコウ」の生態を科学の力で解明します。
①人気珍鳥ハシビロコウはどれくらい動かない?
②ハシビロコウと肺魚の奇妙な関係
③飼育員にもごあいさつ?ハシビロコウの求愛行動
④ハシビロコウは飛べる鳥なのか!?
①人気珍鳥ハシビロコウはどれくらい動かない?
ハシビロコウは、コウノトリ目ハシビロコウ科の鳥で、アフリカ東部から中部に生息しており、現在1000〜2000羽くらいしか居ないと言われており、絶滅危惧種に指定されている貴重な鳥なんです。
動物園でこのハシビロコウの様子を観察すると・・・まったく動きません。一般的に鳥といえば、せわしなく動いているイメージがありますが一体なぜ?そこで、どれほど動かないのか大検証!
まず比較のため、同じ動物園のフラミンゴを計測。動物園がオープンする朝9時30分から夕方4時30分までの7時間、フラミンゴが動きを止めている時間を測ると・・・・結果、動いていなかった時間はわずか58分30秒でした。そしていよいよ、ハシビロコウが動きを止めている時間を計測。開始から1時間が経過しても一歩も移動しませんでしたが、1時間半が経とうという時!ようやく最初の一歩を踏み出しました。その後、時々場所を変えますが、歩く時以外は、ほとんど止まったまま。結果、7時間中、なんと5時間58分動きませんでした!
では、夜のハシビロコウは一体何をしているのか?
やって来たのは伊豆の動物園。飼育員さんにお願いしてハシビロコウの部屋にカメラをセット。日暮れ時、部屋に戻ってきて30分経った頃、脚を折りたたみ、床に預けて座り込んだ!そして3分後・・・瞼を閉じた!そう!夜、ハシビロコウは座って目を閉じ、寝ていたんです。
動物園にいるハシビロコウに限らず、野生のハシビロコウも、夜は座って寝ているのだ!
②ハシビロコウと肺魚の奇妙な関係
では、ハシビロコウは動かずに一体何をやっているのか? ハシビロコウの生態に詳しい専門家に伺うと、「じっとして動かないのは、ハシビロコウの戦略」だという。ハシビロコウの生息地は、スーダンやウガンダなど、アフリカ東部から中部の湿地帯です。広い湿原に佇む野生のハシビロコウも、石像のように固まって動きません。
では一体なぜ?専門家は「ハシビロコウの餌の取り方にある。肺魚というのが、時々息をしに上がってくる。それを待っている」のだとか。
なんと、ハシビロコウが待っているのは「肺魚」。肺魚は、肺でも呼吸する魚で、数時間ごとに呼吸をしに水面に上がってきます。肺魚が呼吸すると、水面に空気の泡が浮かびます。ハシビロコウは、その泡を見つけて肺魚の居場所を知るのです。実は肺魚は、縄張り意識が強く、あまり移動しません。そのため、もう一度同じ水面に上がってくる確率が高いんです。それを狙って、ハシビロコウは同じ場所で何時間もじっとしているというわけなんです。
では、ハシビロコウはどんな風に魚を捕らえるのでしょう?
そこで実験!動物園のハシビロコウの前に、20センチほどの鯉を3匹泳がせてみると・・・ いつになく鋭いまなざしで魚を見つめ、そのまま7分経過。ハシビロコウの足元に鯉が移動してきたその時!大きなクチバシで一気に鯉を捕らえ、頭から丸飲みしました。ハシビロコウがほとんど動かないのは、魚を一撃で確実に仕留めるため、ひたすらじっと狙いを定めていたんです。
専門家によると、湿地帯は大型の肉食獣やワニなどの天敵が少なく、ハシビロコウにとって安全な場所なんです。そこを住処に選んだ時に、餌として居たのが肺魚だったんです。大きな肺魚を捉えるために、大きなくちばしに進化し、じっと動かない狩りの仕方になりました。このように、すべてが肺魚を食べて生きていくための進化だったのです。
ハシビロコウは縄張りの中に肺魚をとるポイントを数か所持っており、それをローテーションで狩りを繰り返しているのだ!
③飼育員にもごあいさつ。ハシビロコウの求愛行動
伊豆の動物園で、ハシビロコウを観察していると・・・突然、くちばしを鳴らして頭を下げた!この行動は一体何なのか?飼育員さんに伺うと、「挨拶や求愛行動。仲間同士のコミュニケーション。それを飼育員にしてくれる」という。
これは「クラッタリング」という、くちばしをカタカタ鳴らす行動。また、頭を下げるおじぎの仕草も、コウノトリなども行う鳥同士のコミュニケーションの手段なんです。そのため、ハシビロコウは動物園で餌をくれる飼育員さんに喜びや愛情を示す為、この行動をとるそうです。試しに番組スタッフが呼んでみると・・・まったく反応なし。どうやら、知らない人には愛情を示さないようです。
しかしこの行動、本来はハシビロコウのオスとメスがする求愛行動。その行動が唯一見られるのは、野生では繁殖期の時だけ。普段、単独行動をするハシビロコウは、子育ての間だけ、オスとメスがペアになり、一緒にヒナを育てるんです。
おじぎの仕草は、相手に喜びや愛情を示す、鳥同士のコミュニケーション手段だったのだ!
④ハシビロコウは飛べる鳥なのか!?
体に対して大きな頭とくちばし。なんだかアンバランス。ハシビロコウは果たして飛べる鳥なのか?動物園で観察をしてみると・・・観察を続けること3時間。と、その時・・・遂に飛んだ!しかも、助走もなくふわっと浮きました。
ハシビロコウの住処は、湿地帯の背の高い草が生えている場所。横に走るスペースがないため、助走なしで飛ぶんです。ハシビロコウは、大空を舞う、飛べる鳥でした!
助走なしで飛ぶ理由は、背の高い草が多い湿地帯のため、助走するスペースがないからなのだ!
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