吉祥寺
の科学
第1229回 2014年6月1日
いま、様々なメディアで「住みたい街ナンバーワン」として取り上げられる街・吉祥寺。実はTokyoWalkerで1998年に始まったこの調査では、2005年以降、10年間不動のトップなんです!
一体、吉祥寺はなぜ、住みたい街のトップに君臨し続けるのか!?
そこで今回の目がテンは、吉祥寺の魅力を科学の力で解明します!
①10年間連続第1位!吉祥寺に"住みたくなる理由"とは?
東京都武蔵野市、吉祥寺。住みたい街ランキングで、2位以下は毎年のように入れ換わる中、なぜ変わらず1位を守り続けているのか?
今回、世界の都市の構造を調査・研究し、学問的な観点で吉祥寺を分析している専門家に、その特徴を伺いました。
「吉祥寺は、『コンパクトシティ』なんです。コンパクトシティというのは、駅から半径400m以内に出来ている街のことです。400mというのは、子ども連れでも高齢者でも気軽に歩ける距離なんです。『歩く人が主体』の街づくりになっています」。たしかに、駅から半径400mを見てみると・・・スーパーや映画館だけでなく、公園や学校・病院など、住環境に必要な施設も揃っています。しかし、街の作りには、もう1つの特徴があるというんです。
専門家によると、「『回遊性』が挙げられます。商業施設を1か所に隣接して集合させるのではなくて、点在させることによって、人々がそこを歩き回って街全体に賑わいが生まれることになります」。
つまり、商業施設を渡り歩く途中に小さなお店がたくさんあり、そこでの消費も増え、街が活性化するという仕組み。実際に吉祥寺の魅力を、吉祥寺を歩く人達聞いてみると…「歩いているだけで楽しい」という声が多数。
吉祥寺の魅力その①
「街のコンパクトさ」と「回遊性」が高いため魅力的に感じるのだ!
②吉祥寺の街歩きはなぜ楽しい?共通点の多い丸の内と比較
吉祥寺は、ただ歩くだけで楽しいという人がたくさんいましたが、一体、吉祥寺と他の街での街歩きの楽しみ方には何か違いがあるのでしょうか?実験です!今回は、新しいビルも色々できて賑わう街・丸の内と比較。実はこの2つの街には、「ガラス張りの2店」と「オープンカフェ」が多いという共通点があります。2か所とも、来るのはほぼ初めてという3人の男女に『お店の中へは入らない』というルールで、1時間程度、自由に歩き回ってもらいます。まずは、丸の内の街歩きがスタート。20代の女性は並木道を歩き、30代の男性はガラス越しに洋服をながめています。
1時間後、丸の内の街歩きが終了し、続いて吉祥寺で実験。50代の女性は、多くの人で賑わう商店街へ。お店の外に並ぶ商品を手に取ってながめています。そして30代の男性は、食べ物屋さんの出店をながめたり…、20代の女性は、雑貨をながめたり。1時間後、街歩きが終了。では、丸の内と吉祥寺で、3人の歩き方の違いを調べてみると…信号以外で立ち止まった時間に大きな差が!なんと、丸の内で立ち止まった時間は『50代女性:10分27秒』『30代男性:5分58秒』『20代女性:0分00秒』。
一方吉祥寺では『50代女性:20分45秒』『30代男性:17分38秒』『20代女性:3分34秒』と、3人とも大幅に時間が増えていたんです!なぜこんなに、立ち止まっている時間に差が出たのでしょうか?
専門家に伺うと、「吉祥寺は、商品が外に出ていたり、音も聞こえて匂いもする市場のような街です。」
たしかに、商品が店の外に並んでいたり、開かれたドアから音が聞こえたりいい匂いがしてきたり。丸の内に比べて1つ1つのお店も小さくまさに市場のよう。さらに専門家は、こんな特徴も!「吉祥寺は、十字路やT字路など、角が多いんですよ。実際に数えてみたんですが、世界有数に多い街だったんです」。アメリカの環境デザインの研究者が世界の代表都市50か所を調べた文献があります。1マイル四方にある十字路やT字路の数をカウントし、角の多さをランキング。この50か所の中に吉祥寺は入っていなかったので、専門家の先生が同じ方法で数えたところ、なんと!ベネチア、アーメダバードに次いで吉祥寺は3番目に角が多かったんです。でもなぜ、角が多いと、街歩きが楽しくなるのでしょうか?
専門家に伺うと、「角が多いと、選択肢が増えて、どの道を歩くか色んな歩き方ができる。魅力的な街角が増えると、1日では回りきれないのでまた来たくなる、という流れが生まれます。」
吉祥寺の魅力その②
世界でも有数の"角が多い街"であるため、街を歩いているだけで楽しく感じるのだ!
③街中に緑が多いと住みたくなる?プランターの有無で実験!
道路沿いや商店街など、街のいたるところで緑を目にする吉祥寺。
このように、街中で見かける緑が多いと、その街に「住みたい」と思うものなんでしょうか?そこで実験!引越に興味があるという20代から50代の男女を2つのグループに分け、同じ物件を見学してもらいます。物件は、住宅街に佇む一軒家。2つのグループは、同じルートで物件に向かいます。ただし、片方のグループだけ、物件に通じる道路に目がテンスタッフがおよそ40個のプランターを設置しました。
果たしてプランターが道路に有るか無いかで、住みたさに違いは出るんでしょうか?今回は実験の為、吉祥寺以外の街で検証。カーテンを閉め切ったワゴン車から降りたった場所がスタート地点です。
まずは、プランターなしのグループ。街並みの雰囲気を感じてもらいながら、およそ250mの道のりを歩き、物件へと向かいます。その後、この家に住みたい人はA、そう思わない人は、Bの札をあげてもらいます。すると…Aの住みたいと答えたのは、6人中4人でした!続いて、プランターありのグループ。街並みに溶け込むようプランターが置いてある道を通り、物件へ。先程と同様に、物件の中も見学してもらいました。Aの住みたいと答えるのは何人でしょうか?結果は…6人全員が住みたいと答えました!
どちらのグループにも人気のようなので、さらにこんな質問を!『経済的に多少無理をしても住みたいですか?』
まずは、プランターなしのグループに聞くと…「住みたい」と答えたのは、6人中1人。続いて、プランターありのグループは、なんと!6人中5人が、『多少の無理をしてもここに住みたい』と答えました!!
街並みにプランターがあるだけで違いが表れたのは一体なぜなんでしょうか?心理学の専門家に伺うと、「きちんと手入れされた緑というのは、訪れた人にファミリアリティを起こさせることになります。親しみを感じる、身近に思うっていう意味なんですが、とても手入れの行き届いたプランターを店先や庭先で見ると、『自分の生活を大切にしている人なんだ』という印象を持ちますので、そういう方々が住んでいる街をとても好きになる」。
吉祥寺の魅力その③
吉祥寺の街角にある鉢植えやプランターが、訪れた人により好意的な印象をもたらしていたのだ!
④街中のイスで食べる人は何人?恵比寿と比較実験!
吉祥寺を歩くと必ずと言っていいほど見かける「行列」。
中でも、最近ブームの「クロワッサンたい焼き」は、クロワッサン生地であんこを包んで焼いた、ちょっと新しいスイーツ。連日大行列ができているそうです。また、購入した人の多くは、街に数多くあるベンチに座り、買ったものをおいしそうに食べています。
そもそも吉祥寺には、できたての物が食べられるのはもちろん、休憩できるベンチやイスが、たくさんあるんです。目がテンスタッフが数えたところ、駅から半径400m以内にあるイスやベンチは約400!では、吉祥寺の街中にはなぜこんなにベンチやイスがたくさんあるのでしょうか?専門家に伺うと、「街中に気持ち良く居てもらう工夫がなされている。江戸時代のように店先の縁側や縁台に座って会話や食事を楽しんだ、活気ある雰囲気が作り出されています。ただイスを置けば良い訳ではなくて、吉祥寺では、街の景色を楽しみながらできたての物を皆で食べるような環境になっています」。
皆が道端で気軽に食べられる環境は、吉祥寺特有だというんです。ならば、イスを置けば他の街でも同じ状況になるのでしょうか?そこで、実験!吉祥寺と、もう一つ別の街で、同じ食べ物を販売した場合、違いは表れるんでしょうか?吉祥寺と比較するのは、こちらも住みたい街ランキングの常連・恵比寿。条件は、吉祥寺も恵比寿も同じ。揚げたてを提供する唐揚げ屋さんの横にイスを置き、販売します。唐揚げを購入したうち、イスに座って食べて帰るお客さんは何人いるのか?まずは、恵比寿。すると、18個売り上げたところで90分が経過し販売終了。
しかし!!イスに座って食べた人は…ゼロ。恵比寿では、職場に持って帰る人が多いというのが原因のようです。続いて、吉祥寺。すると…まさに、「みんなで一緒にできたての物を楽しむ」様子。結局吉祥寺では、90分間で12人が購入し、そのうち6人が座って食べました。恵比寿では1人も座らなかったのに、なぜこんなに違いが出たのでしょう!? 専門家に伺うと、「食べるというのは非常にプライベートな行為。恵比寿のようなオフィスもたくさんある場所はフォーマリティが高い。その状況では物を食べるという、とてもプライベートなことはしづらくなる。これに対して吉祥寺のような、リラックスできるインフォーマルな場所であれば、物を食べることは抵抗なくできるようになる」。
吉祥寺の魅力その④
吉祥寺は、恵比寿と同じ賑わいがありながらも、オフィス街の要素が少ないので、気負わずに自由に振る舞える街だったのだ!
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