知識の宝庫!目がテン!ライブラリー


生き物の年齢 の科学
第1295回 2015年10月4日


 目がテンの大ファン・桝太一アナの持ち込み企画第2弾!東京大学大学院時代、アサリの殻に刻まれる線から年齢を読み取る研究に没頭したという、桝アナ。今回は、アサリだけではなく…あの美味しい魚や美味しい貝など、ある方法で水辺に生きる生き物の年齢がわかっちゃう?不思議な模様から生き物の年齢を読み取る方法とは?今回は桝アナが奥深い、生き物の年齢の世界に皆さんをお連れします!

①魚介類の年齢の調べ方

 生き物の年齢を調査するため、後藤アナウンサーとまず訪れたのは、千葉県にある浜焼き屋さん。ここは新鮮な海鮮物を自分で焼いて食べられる人気のお店です。
 さっそく、その場にいらっしゃったお客さんに協力してもらって海産物の年齢をチェックしましょう!まずは、ホタテの貝がらに注目!ホタテの殻には、木の切り株と同じく成長を示す線が年に1本ずつ刻まれる「年輪」があるんです。ホタテは、海水温度が低い冬は、成長が遅くなります。冬の期間は殻もあまり成長しないため、その部分が線のようになって目に見えてくるわけなんです。
 続いて、注目したのは…おいしそうなキンメダイ。魚は頭の骨の中に、耳石と呼ばれるカルシウムの塊が入っていて、そこにしっかりと成長が刻まれるんです。だからその耳石を取り出せば、そこから年齢査定ができるというわけ。耳石は、炭酸カルシウムの結晶で魚の頭の中に左右1つずつあります。平衡感覚を保ったり、音を感じるのに役立っているんです。キンメダイの開きを左右に分けて、それぞれの耳石を2人で探していきます。狙うのは目の横のあたりなんですが…耳石は骨に囲まれていて見つけにくいんです。骨をやぶるとようやく出てきました。一見すると骨のようにも見えますが、直径1センチの耳石の取り出しに成功。
 そして、後藤アナウンサーも発見!無事、両方の耳石を見つけることができました。実は、キンメダイの耳石は、かなり大きい部類になります。
 耳石は、体長とともに大きくなっていき、ホタテと同じく、冬の寒い時期に成長が止まるため、目立った線が刻まれます。木の切り株で見える年輪のように、線を数えると、年齢がわかります。
 キンメダイの耳石に刻まれた線に注目すると…3本線が見えました。つまり、このキンメダイは現在3歳…もうすぐ4歳ということがわかりました。


②世界的発見に貢献したプロ集団

 三重県の北部に位置する、桑名市。生き物の年齢を査定するプロ集団に会うため、訪れたのは「マリノリサーチ」という会社です。こちらの会社はスタッフの7割が女性。年齢査定は細かい作業なので手先の器用な女性が活躍しています。
 この日も耳石を取り出す作業が行われていました…なんと体長3センチ弱の小さなサンマの稚魚から耳石を取り出していたんです。顕微鏡を見ながら、目の横のあたりを細いピンセットでほじっていきます。頭のサイズはおよそ5ミリしかありません。それにもかかわらず、わずか5分で耳石を発見!耳石のサイズわずか0.3ミリメートル。これが、サンマの稚魚の耳石です。
 このままでは、まだ年齢はわかりません。この小さな耳石を目の細かいヤスリで、後ろが透けるほど、薄〜く削っていくんです。割れないように微妙な力加減が要求される、まさに職人技。削った耳石に光を当ててみると、そこには…日輪がくっきりと浮かび上がっていました。魚は昼に比べて夜はあまり成長しないので、昼と夜の成長の差が線となって現れているんです。この日輪、まばたきをせずに一気に数えるのがポイント。日輪を数えてみると、その数およそ30本。生まれて1ヶ月ほどのサンマの稚魚ということがわかりました。
 これまで、さまざまな生物の年齢査定を行ってきたマリノリサーチ。そして、この年齢査定が世界的な発見にもつながったんです。それは、ウナギの産卵場所が発見されたこと!長年謎だった産卵場所の発見にも耳石による年齢査定が役立ったというんです。ウナギの赤ちゃんである、仔魚を採取し耳石の日輪から、何日前に生まれたかを特定。海流をたどっていき、より幼いウナギの仔魚を発見!さらに膨大な数の仔魚の耳石から、ウナギは新月の頃一斉に産卵するのではないかと仮説を立てました。そして、新月付近に捕獲調査を行った所、見事産卵場所を特定することができたというのです。一ヶ月間、膨大な数のウナギの耳石の日輪を数えていたという女性スタッフの方に話を伺い、あの世界的な発見の裏には、地道ながら職人芸といえる年齢査定の努力があったということを実感しました。


③アサリの年齢を知る方法とは!?

 続いてむかったのは、神奈川県にある海の公園。桝アナが学生時代、アサリをとるために毎週通った場所です。
 海の公園は、人工海岸にも関わらず、天然のアサリが多く育つため潮干狩りの名所となっています。年齢を調べるためのアサリを捕獲するため、浅瀬の潮干狩りポイントへと移動します。潮干狩りは、浜の潮が最も引く干潮の前後2時間くらいが狙い目。実は、砂に浅く潜る習性があるアサリ。浅く、広い範囲を探すのが、たくさんのアサリを見つけるコツなんです!そして、フルイを使って年齢査定用のアサリを捕獲!
 アサリは、成長するごとに、殻に同心円状の日輪が1日1本から2本刻まれることがわかっています。1日のうちの潮が引く時間帯はアサリの成長が止まり、それが、線となって刻まれているわけです。ただ、このままでは数えるのは難しいんです。加工して、顕微鏡で観察する必要があります。今回は特別に許可を得て、2センチほどの大きさの子どものアサリを数個持ち帰ることにしました。
 アサリの日々の成長を示す線「日輪」は、貝の内部にも刻まれていて、薄くカットして断面をピカピカに磨き上げると鮮明にその線を確認することができます。アサリの殻はもろいため、周りをしっかりと樹脂で固めないと削ることができません。ただ固めるだけではなく、樹脂で上下から殻を挟み込む必要があるんです。
 樹脂は固まるのに一晩かかるので、桝アナはZIP終わりの空き時間に、型の下部分に樹脂を流し込んでおきました。アサリ全体を包み込むように上から樹脂を流し込んでいきます。これを1日置いて、完全に固めます。翌日、型から外してみると・・・。みごと!透明な樹脂の中に、アサリがしっかりと閉じ込められていました。
 固めたアサリの殻を持って、やってきたのは東京大学大気海洋研究所・白井研究室。こちらの白井先生は、二枚貝の殻から海洋環境の変化を読み取る研究を行っています。
 こちらの研究室で、まずは電動カッターを使ってアサリを樹脂ごとカットします。アサリの殻を樹脂ごと厚さ3ミリほどに切り出していきます。この状態が基本形。しかし、ここからの手作業が最も大事なんです!
 この貝殻の断面をつるつるに仕上げていきますが、そのために使うのが、回転ヤスリ。殻の断面をツルツルに磨くことで、日輪が鮮明に見えるようになります。桝アナも学生時代やっていましたが、久しぶりの感触に感動。
 薄い樹脂を指先でヤスリに押し付けます。学生時代は、これで指紋が削れて、よくなくなったものでした。さらに、目の細かいヤスリに変えて、どんどん磨いていきます。このとき、少しでもプレートが斜めに削れてしまったり、傷がついてしまうと日輪が一気に見えにくくなりますから、慎重に削っていきます。指で触ってもツルツルになってきました!しかし、こんなにツルツルしていても、まだまだ日輪は見えません!
 最後にラッピングフィルムとよばれる、研磨用の特殊なシートを使います。
 まずは、研磨粒子が3ミリの1000分の1のものを使います。樹脂のプレートを指先でくるくると廻して、アサリの断面を優しく磨いていきます。
 最後に1ミリの1000分の1というとんでもなく目の細かいラッピングフィルムで仕上げに入ります。これだけ丁寧に磨いても顕微鏡で見てみるまでは、日輪がハッキリ見えるかどうかわかりません。祈るような気持ちで削りつづけます。磨きあげたアサリの殻を顕微鏡室に持ち込み見てみると…アサリの殻の表面にはくっきりと美しい日輪が現れました!
 線がくっきりと見えたので、ここから日輪を見ながら年齢を調べていきます。まず、このアサリの殻の断面を拡大コピー!アサリの年齢査定の方法はいくつかありますが…今回は、大潮に注目して計測!大潮とはおよそ半月ごとにある、潮の満ち引きが最大となる期間のこと。この大潮のときは、浅瀬が干上がる時間が長く、アサリにとっては過酷な状況となる期間なんです。アサリの断面の日輪の間隔が狭いところ、ここが大潮にあたります。
 大潮の期間、アサリは成長が遅くなりますから、日輪の間隔がぎゅっとつまっているんです。大潮と予想される部分に付箋を貼っていきます。9月1日に採取したので、人生最後の大潮は8月30日付近だったということが分かりました。そこからさかのぼって確認できたのは、4月20日付近ですが、残りの線が見えにくい部分は、これまでの成長間隔からだいたい1ヶ月くらいと推測。ということは、このアサリは3月後半から4月の頭に生まれた生後半年の牡羊座のアサリということがわかりました。



動物(水中)編へ
前週 次週
ページトップ

ジャンル別一覧 日付別一覧
番組に対する、ご意見、ご感想等ございましたら、番組メールボックスの方にお寄せ下さい。
宛先は、 megaten@ntv.co.jp です。
原則、質問にはお答えできませんが、頂いたメールは、番組スタッフが閲覧し、今後の番組作りの参考にさせていただきます。