放送内容

第1393回
2017.09.24
朝市 の科学 場所・建物 人間科学

 新鮮な魚介類や、地元農家が育てた旬の野菜がズラリと並んだ「朝市」。
 その場で、出来立ての料理を味わうこともでき、いま、地元の人だけでなく、多くの観光客も訪れる人気のスポットなんです。そこで、日本最大級の規模を誇る青森県の朝市へ行きその魅力を専門家と一緒に徹底解明!
 今回の目がテンは、早起きまでして行きたい魅力が満載!朝市の科学です!

日本最大級・八戸市の朝市!早起きまでして行きたい魅力とは?

 この「館鼻岸壁朝市」が始まるのは、日の出から。そのため、暗いうちから準備を始めます。
さっそく準備をしていたのは、地元の人に大人気の唐揚げ屋さん。中でも評判なのが、1本40円の手羽先。あまりに人気のため、開店2時間前には・・・すでに行列が!お店もお客さんも、早い時間から動き出す朝市。普段は漁船が停泊している静かな漁港ですが、夜、朝市の準備がはじまると・・・ぽつぽつと、お店の灯りがつきはじめ、夜が明けた午前5時。漁港には、巨大な朝市が出現!

 全長800メートル。漁港の端から端までズラリと並んだお店の数は300店以上!日の出から朝の9時まで開かれるここでは、地元でとれた海産物はもちろん、野菜や果物、その場で食べられるグルメ、さらには日用品までそろっているんです。多い日は、わずか数時間で3万人以上のお客さんが訪れます。では、なぜ朝市はここまで人気なのか?その魅力を、科学の目線で徹底調査!
今回、協力してくれるのは、心理学の観点から朝市を解き明かしてくれる東北大学の坂井信之先生。そして、経済学の視点から朝市に迫る、東京大学の古川雅一先生。この二人の専門家と一緒に心理、経済の面から朝市の魅力に迫ります!
 まずは、朝市を自由にまわり、気になるお店をチェック。様々なお店がある中、朝市の通りを歩いていると・・・さっそく気になるお店を発見!こちらは、回転式の魚焼き器で焼き立ての魚介類が食べられるお店。

 これぞ漁港ならではの朝市グルメ!先生たちを横目に、八戸のさばをいただく裕太くん。すると、朝市を楽しむ裕太くんの様子を見ていた心理学の坂井先生が・・・その魅力を解説!坂井先生は「人間は、最初に見るものがすごい印象に残って良い。五感は全て、一回寝るとリセットされるのでそのときに朝初めて触れるものっていうのは非常にポジティブにとらえられるという特徴がある。もちろん素材が良いので、さらにその良さが今まで見たこともないくらい綺麗に見える」と解説。
 朝市の魅力・・・その1。ヒトは朝起きると、様々な感覚がリセットされ、その状態でものを見ると、魅力度が増し、普段より良い印象を受けるというんです。朝市そのものの魅力に加え、このリセット効果が働いていたんです。

 さらに朝市を回っていると、地元ならではの新鮮な魚介類を発見!オススメは、八戸産の「平かに」。なんと一皿で300円!値段の安さも朝市の魅力のひとつなんです。さらに先へ進むと・・・またもや気になるお店が。どうやら八戸のご当地グルメだそうですが、売っていたのは八戸の名物「南部せんべい」を天ぷらにしたもの。85歳の明るいお母さんがお店をやっており、愛嬌もたっぷり!
 すると、ここでお店の人とのやりとりを聞いていた経済学の古川先生が・・・魅力を解説!古川先生は「これを経済学的に見るとポジティブハロー効果と言う。お母さんのユニークな対応があると、すべてのものがより魅力的に、より強く感じる。元々、美味しいものたくさんあるうえで、さらに魅力を感じる」と解説。
 朝市の魅力・・・その2。お店の人の"笑顔"や"気さくな対応"など、商品以外の良い特徴があると、すべての評価が高くなると言うんです。

 確かに、朝市のお店の人はみなさんユニークな人ばかりでした。そのほか、この朝市には“変わったモノ”を売るお店も。鹿のはく製やお皿、ひょうたんなど、朝市のイメージとは異なるモノを売っていました。
 では…なぜ、朝市とは関係ないモノでも買ってしまうのか?坂井先生によると「心理学的にいうと、朝市でいろんなものを見てすごく楽しいんで、嬉しい気分になっちゃう。その嬉しい気分っていうのが、すごく大事。気分が良くなると、財布の紐が緩む。これを気分一致効果という」と解説。朝市に来て気分が高揚すると、自分に必要のないモノでも魅力的に見え、つい買ってしまうこともあるというんです。

 確かに裕太くんも、楽しくていろいろ買っていました。朝市には、人をいい気持ちにさせる魅力がたくさん詰まっていたんです!

朝市はお店の人もお客さんも“健康になる効果”がある!?

 朝市には、元気で健康になれる効果がある!?その理由を調べるため、向かったのは・・・日本三大朝市の一つ「勝浦朝市」。市民の台所として400年以上の歴史を誇り、最近は、観光スポットとしても人気の朝市なんです。そんな歴史ある朝市で、お店の方に健康の秘訣を聞いてみました。
 さっそく、美味しそうなアジとイワシを売っている元気おばあちゃんに"健康の秘訣"を聞いてみると…「朝市に毎日出てきてリハビリ!家にいたら、動いていないと思う。ここに来れば歩かなきゃいけないし、いろんな人と会話できるから私の活力!」と言います。皆さん、朝市で働きながら、お客さんとコミュニケーションを取ることが健康の秘訣だと言います。
 確かに、朝市の介護予防の効果について研究した論文にも、人との交流や、朝市で活動することが健康につながるとあります。しかし、朝市の健康効果はお店の人だけではないというんです。お年寄りの健康問題について研究する、健康科学大学の金信敬先生に聞いてみると、金先生は「朝市に店を出している人だけではなく、やっぱりそれを利用しているお客さんにも、健康、あるいは元気になれる色々な要素が含まれている」と解説。なんと、朝市に来るお客さんも健康になれるというんです!さらに先生によると、朝市で買い物をすれば反射神経が良くなるというんです。本当に、そんなことがあるのでしょうか?
 そこで…反射神経を測定する機械を使い、朝市によく来るお客さんと、普段、スーパーなどで買い物をするお客さんの反射神経を測定。次々と光るボタンをすばやく押し、実年齢と反射神経年齢の差を見ます。まずは、スーパーで買い物を終えたお客さんを測定します。すると、12人の反射神経年齢を調べた結果・・・ほとんどの人が、実年齢よりも反射神経年齢が高く、その平均はプラス4歳。

 では、朝市によく来ている人の反射神経年齢はどうなのでしょうか?12人を測定した結果…反射神経年齢が実年齢より若い人が多く、平均でマイナス7歳でした。

 結果、朝市に来るお客さんの方が反射神経が良かったんです。でも・・・一体なぜなのでしょうか?金先生によると、朝市では“体を動かしながら脳を働かせる”ため、反射神経が養われるそうなんです。
 朝市では、食材を探して色んなお店をまわるため、移動距離も長くなり、荷物を持ちながら歩くので軽い運動になります。一方、スーパーは食材が売っている場所もある程度決まっているため、そこまで運動にならないんです。さらに朝市では、それぞれのお店でお会計をしたりとお店の方との交流があり脳が常に活発に働きます。そして反射神経が良くなると、転びづらくなりケガの防止にもなって認知症予防など、健康増進につながるというんです!