所さんの目がテン！

暗渠工事スタート！

　７年も経っているのに、里の畑の水はけはいまだによくありません。実は、土の下に岩盤のようなかたい層があり、そのせいで、大雨が降ると水が地下にしみ込んでいかず水はけが悪い状態になるんです。これまでは堆肥や稲わらをすき込んだり、高畝にするなどしてきましたが、これらは全て岩盤より上の排水対策。根本的な解決にはなっていませんでした。
　そこで今回行うのが、暗渠排水。固い層の上に暗渠パイプといわれる管をいれ、そこを通じて横から排水するというもの。
　そして去年１２月。暗渠工事がスタート。すると、いつものように作業を手伝ってくれていた里の達人・西野さんから“竹”を使った暗渠排水アイディアが。
　これは、“竹暗渠”といわれる竹を束ねて溝に埋める伝統的なやり方。

　でも、本当に竹でも排水できるのでしょうか？
　土木と竹の活用に詳しい佐藤先生に話を聞いてみると、なんと竹暗渠は、江戸時代の遺跡から、その跡が見つかっているとのこと！
　そこで佐藤先生の監修のもと実験。実際に行う暗渠工事と同じ条件で、ミニチュアの竹暗渠を作り、ちゃんと排水されるかやってみます。今回は束ねた竹の周りに、もみ殻を入れます。これは実際の畑でも行うもので、水が、土で目詰まりしないようにするフィルターのような役割。うまくいけば、竹と竹の隙間を水が伝って、排水されるはず！
　すると、土からもみ殻へ水がしみ出しはじめ、竹でもちゃんと排水できました！

　ということで早速、西野さんのお友達の使っていない竹林で竹を切っていきます！
　実は今、日本中で、竹林が山を侵食するという問題が起きているんです。昔は、暮らしの中で、竹を色々利用したため、竹林は手入れされ、増えすぎることはありませんでした。しかし近年、竹が利用されなくなり、放置された竹林が増加。そうなってしまうと竹は上の方にしか葉っぱがないため、その葉っぱを使って下にある植物に日光を当てないようにしてしまうんです。すると、竹より低い生物というのは光合成ができなくなって枯れていきます。
　そしてさらに深刻な問題が。それは木と竹の根の張り方。木は、まっすぐ深く根を伸ばすのに対し、竹の根は浅く、横に伸びます。山を竹林が侵食すると、土砂崩れが起きやすくなる危険があるそうなんです。

　つまり、竹を伐って利用すると、里山整備にもなるんです！
　作業すること５時間。竹を切って間引くことで、竹林がひらけてきました。ようやく切り出しは終了！！
　その数日後。阿部さんは、竹と共に畑に入れる「もみ殻」をこちらも西野さんのお友達からいただくことに。その量実に３トン！これで暗渠排水工事の準備は完了！

　順調に行けば、３月中旬に暗渠排水が完成する予定です！

阿部さんの“住み込み生活”

　１月初旬。暗渠作業のため、かがくの里に来ていた阿部さん。ところが、この日、関東を中心に緊急事態宣言が出され、そのニュースを里で聞きました。県境を越えての移動は控えた方がいいということで、このまま里に住み込んで作業を続けることに！入社１年目の新人スタッフと２人で、しばらく滞在です！
　すると、里に阿部さんがいると知った先生方から続々と作業の依頼が！

　まず高橋先生から“麦踏み”の依頼が。
　実は去年１２月、麦の種をまいていました。１月に入り、順調に芽を出した麦ですが、背丈４㎝程度になるころ麦踏みという作業が必要とのこと。
　寒い日、霜柱ができると、麦の根が持ち上がりダメージを受けます。それを防ぐため、麦を上から踏んで霜柱をつぶし、浮き上がった根を土に戻すのが「麦踏み」。
　数日後の氷点下となった朝、畑を見ると、霜柱が出ていました。

　霜柱を踏み潰すだけでなく、踏まれることで、麦自体も丈夫に育つんだそうです。

　麦踏みを終え一息ついていたら、今度はハチの専門家、小野先生から、ミツバチの餌やりの依頼が。
　かがくの里では、初めてニホンミツバチの越冬に挑戦しています。本来野生のニホンミツバチは、春から秋にかけて集めたハチミツをエネルギー源に体を発熱させ、一塊になることで冬を越します。
　しかし、去年の収穫祭でニホンミツバチ貴重なハチミツたくさんいただきました。これでは、冬を越すエネルギー源であるハチミツが足りなくなるので、人間の手助けが必要とのこと。
　今回、ハチミツの代わりとなる砂糖水を与え、群れが越冬できるよう手助けします。小野先生から、今回リモートで指示されたのが、砂糖水の与え方。寒い冬を越すためには、気を付ける大事なポイントがあるそう。
　身を寄せ合い寒さを凌ぐ、ミツバチ。しかし、砂糖水をとるため群れから離れると、体温は一気に下がります。そのとき、砂糖水が冷えていると体温が下がりすぎ、ミツバチが動けなくなってしまう危険性があるんです！そのため、４０℃程度のぬるま湯で砂糖水を作ることが重要なんです！
　お湯を足して砂糖水を作り、巣の中へ。ぬるま湯の砂糖水自体の温度は発熱する蜂たちがいる巣の中では、外気にさらしておくほどは下がらないそうです。
　１週間後。西野さんと様子を見にいくと、砂糖水はほとんど残っていません。ハチたちは順調に厳しい冬を過ごしてくれています。

　砂糖水は、エネルギーになるだけでなく、巣板を作るロウの原料にもなっているそうで、ハチにとっての生命線！阿部さんがサボったら寒さで死んでしまいます。無事、越冬できるよう、阿部さんが責任もってお世話していきます！

ミツバチが冬を越す驚きの技！

　冬のかがくの里、住み込み生活１０日目。この日の気温はなんとマイナス２℃。池に引き込んだ山の湧水もツララに。

　阿部さん、特に寒かったこの日にあえてやりたかった調査が！実は、小野先生から、この時期にしか見られないミツバチの驚きの生態があることを聞いていました。
　昆虫は、体温調節ができないため、温度と湿度が安定した土の中や木の隙間などに身を潜め越冬します。しかし、ミツバチは巣の中で自ら発熱し、身を寄せ合って冬を越します。そこで、サーモカメラで、巣の中にいるハチの温度を計測します！
　まずは普通のカメラで見てみると、巣板に身を寄せ合うようにして、塊になっています。では、サーモカメラで撮影！

　巣板は青いのに、ハチたちの体は真っ赤に！青い部分がおよそ１０℃、赤が３２℃。白い部分は、およそ３７℃にもなっています。
　これは、以前番組で紹介した、ミツバチが天敵のスズメバチに襲われたときに、一部のハチたちがスズメバチを囲い込み一匹ずつが発熱することで蒸し殺しにする「熱殺蜂球」と同じメカニズム。
　そこでミツバチ一匹をアップで見てみると、胸の部分があたたかく、お腹と羽は青くなっています。ミツバチは、羽を動かす筋肉をふるわせて発熱するんです。

　すると、さらにおもしろい発見が！
　よく見ると、体が青いハチと赤いハチがいます。実は、この越冬蜂球、交代制のようなんです。

　ハチミツをエネルギーに発熱するこの行動、非常に体力を消耗します。長い冬の間、効率よく巣の中の温度を保つために、ハチたちは交代制で発熱し巣を温めている可能性が！小野先生によると、ニホンミツバチは、トウヨウミツバチの北限の亜種。東南アジアにいるハチたちは冬を知らない。ニホンミツバチだけが雪の中で生き抜く術を獲得しているんだそう。
　寒い冬を乗り越える、ニホンミツバチの生きる技を見ることができました！