森岡隆志(佐藤健)が目覚めるとそこは暗い部屋の中だった。後ろ手に縛られ、床に倒れている。口の中が切れているようで、鉄っぽい血の味がした。目の前には、赤と青の拘束衣を着せられた男が二人。そして不気味に笑う結城美智雄(玉木宏)の姿。結城が言った。「究極の選択を知っているか?」
一体何が起こったのだろうか? そして、これから何が起ころうとしているのだろうか?
「変えようと思えば世界は変えられる。変えてみるか? 世の中を」
それは簡単な仕事のはずだった。物を受け取って指定の場所に届けるだけ。ただ一つ決められていたのは、一切の質問をしない、そして、中は絶対に見てはいけない、見たらこの仕事は終わり―。
勤め先の工場を派遣切りにあった隆志は、先輩の桜田浩介(小出恵介)に紹介された怪しげなバイトに飛びついた。あるときは大企業の受付から繁華街の喫茶店へ。あるときは街中で、あるときは尾行をまきつつ…アタッシュケース、小包、封筒…運ぶ物も運ぶ先もさまざまだった隆志は一抹の不安を抱きつつも、破格のギャラもあり、黙々と仕事をこなしていた。
そしてある日の仕事で受取人だった結城に出会う。「中が何か知りたいか?」「いえ、私の仕事は運ぶだけですから」結城が隆志の運んできたアタッシュケースを開けると、そこには1枚の紙きれが。
「YOU CAN CHANGE THE WORLD」
結城が言う。「合格だ。次からが本当の仕事だ」
折りしも隆志が育った養護施設が財政難により閉鎖されようとしていた。隆志の幼馴染のゆかり(谷村美月)は、子供たちがバラバラになるのをさけようと、必死に施設存続のために働いていた。自分のお金で養護施設を再開できれば…。心配するゆかりをよそに、隆志は仕事にのめりこんで行く。
この腐った世の中を変えよう、という結城の言葉に魅せられる隆志。結城の明晰な頭脳、冷静な判断、確信に満ちた言葉は、隆志を罪だと知りつつも新しい価値観を作っているような気にさせた。結城のいう本当の仕事、それは、ヤミ献金や収賄の金など表に出ない金を奪うことだった。「ただ、胸を張って家に帰りたいだけなんです」
一方、隆志がどこからか用意したお金で施設を買い戻したことを知ったゆかりは不安にかられる。そして、寄せられた差出人不明の多額の寄付。警察からの問い合わせの理由を隆志に詰め寄るゆかり。だが、隆志は大丈夫の一点ばりだ。結城の次のターゲットには、隆志の出生の秘密が絡んでいるらしい。命じられるまま、隆志は自らの出生の秘密を探し始める。そして浮かび上がった過去の殺人事件。口を閉ざす関係者と消された記録。見え隠れする巨大な陰謀。
いつしか、本当に大切なものに気づいた隆志は浩介に仕事を辞めることを伝える。地道に施設の再開を目指して働くことを決め、向かった最後の仕事の日。預かったアタッシュケースを開けるとそこには拳銃が。そして何者かに襲撃され、薄れていく意識…。目が覚めるとそこは暗い部屋。
「人は2種類の人間に分けられる。いざというときに人を殺せるか、殺せないかだ」
そして、悪魔のような結城のゲームが幕をあける。
「彼女を助けたければ、起爆装置の導線を切ることだ。導火線は2本、赤と青。犯人の色の導火線を切るんだ」
赤と青の拘束衣を着せられた二人の男。どちらかは母親を殺した犯人、どちらかは本当の父親。弾が一発だけ入った銃。実の父親を探りあて、犯人を殺し、そしてどこかに囚われているゆかりを助けるために与えられた時間はたった60分。
本当の恐怖とは大切なものを奪われること―。隆志は結城の悪魔のゲームに挑んでいく。そこで待ち受けるのは、裏切りに次ぐ裏切りの果ての、誰も予想できない衝撃の結末。
隆志の出生に秘められた謎とは? 結城の本当の狙いは? そして、政府が関わっているとされる巨大な謎「MW」とは一体?