女性の人生は、ほんの40年前までは一本しかレールがなかった。
働く男を陰で支える良き妻、良き母になる事。
しかし、ウーマンリブが“女の時代”の幕を開き、今、女のレールは三つに分岐してしまった。
仕事が出来て高収入、都市生活の便利さも味方し男に依存しない自由な生活を送り、社会的に認められる自立した女タイプ。だがこのレールにはいつか訪れる孤独と言う落とし穴がある。
次は昔から言われる良妻賢母タイプ。良くできた妻等と呼ばれ、家庭に納まり、古くから言われる「女の幸せ」をきちんと掴んだ女性達。ただしここにも、自立していないというコンプレックスと不安が待ち構えている。
最後は仕事も家庭もどちらも選択できず、無理をして両方手にしてもどちらも中途半端になってしまい、途方にくれる。自己嫌悪に陥り易くコンプレックスの強いタイプ。
女も若い頃は、レール(選択肢)が多い事に胸をときめかせる。
しかし、20代後半から30代になると、どの道を選ぶべきか、決断しなければならない。
男も女も、生きるのが大変なのは同じ事。
ただ、モテたり子供を産める年齢には限界があるから、男以上に真摯な選択を迫られる。
そういう迷いの中にいる三人の女を主人公にすえてみた。
『おとなの夏休み』をひとことで言えば、女の“生き方”物語。
女性は、必要以上に対人関係や体裁に気を遣うので、なかなか本音をさらけ出せる関係を作れない。
しかし、主人公の三人は、『海の家』を経営するという未経験の難事に挑み、いやでも本音をぶつけ合わざるをえない。
子を持つ主婦が仕事一辺倒のキャリアに抱く優越感。
しかし夫に依存しなければ生きていけない劣等感。
そういった、各人にとって“痛い”部分を、『海の家』経営騒動、つまり「細腕繁盛記」の中で、優しい笑いにつつまれたドラマとして描いていく。
しかし三人は、夫や恋人にはピンとこない、女にしか分からない痛みや悲しさに占められた時、必ず身を寄せ合って、励まし、助け合う。
冗談にくるみながらも本心をぶつけ合う事が出来、しかし転んだ時には押しつけがましくなく、でも温かく包んでくれる、「友達」。
これは、今の女性達が憧れる理想の関係ともいえる。
大人として自分の生き方に直面する時こそ、女は本当の意味での友人を必要としているから。
『海の家』は、そんな三人の友情を育むために存在する。
経験やお金よりももっと貴重な、本当の“人生のたからもの”を得る事ができる場所として・・・。
琴原みゆき…寺島しのぶ
琴原和幸…石黒賢
琴原洋介…ささの貴斗
榎壽美子…中島知子
蔵田優…中越典子
春日部健人…姜暢雄
岡崎元一朗…大倉孝二
少女A…佐田真由美
田端橋椿…中尾ミエ
蔵田松夫…小野武彦
蔵田ふね…南田洋子
為さん…宇津井健
脚本
一色伸幸
音楽
GONTITI
プロデューサー
田中芳樹
演出
雨宮望、長沼誠 ほか