STORY

2023.01.11

埼玉県のはずれにある、のどかな街・西さいたま市。街では音楽での地域活性化を図るべく、市長・常葉ときわ修介しゅうすけ(生瀬勝久)の旗振りで、立派なシンフォニーホールを建設中。市役所の広報広聴課に勤務する谷岡たにおか初音はつね(門脇麦)は、ホールの4月オープンを告知するポスター配布のため、公民館にやって来る。そこで行われていた地元のオーケストラ『児玉交響楽団』――通称『玉響』の公演を覗いた初音は、驚愕の光景を目にする...!

5年ぶりに帰国した人気ヴァイオリニスト・三島みしま彰一郎しょういちろう(永山絢斗)がニュースで騒がれる中、初音は自宅のレッスン室でひとりヴァイオリンを奏でる。市役所にいるときとは別人のように楽しそうな表情。実は彼女は、「天才」の名をほしいままにしたヴァイオリニストだったのだ。しかし、とある理由で10年前に表舞台を去っていて...。

一方、父・修介に強引に呼び戻され、ドイツから帰国したばかりのマエストロ・常葉ときわ朝陽あさひ(田中圭)は、玉響の練習場にいた。のんびりムードでやる気のない団員たちを厳しく叱責する朝陽。団員たちは、突如就任した悪魔のような指揮者に戦々恐々としている。
玉響を見捨てようとする朝陽だが、初音の存在に気づき、彼女を【ポンコツ改造計画】に巻き込むことに。逃げる初音、追う朝陽。怒濤のスカウト攻撃がスタートする...!!

ステージを降り、ひっそり生きてきた“元”天才ヴァイオリニストが、毒舌マエストロに巻き込まれ、ポンコツオーケストラを一流オケに大改造!?
一発逆転の音楽エンターテインメント、いよいよ開幕!!

※注意 以下、ネタバレを含みます。

市役所に現れた朝陽は、逃げる初音を捕まえ、こう言った。
「谷岡初音さん、うちのオケに入ってください」
第二の指揮者とも言われるオーケストラの要・コンサートマスターとして、初音を玉響にスカウトしたのだ。しらを切る初音だが、朝陽は小野田(岡部たかし)を使って、詳しい経歴を調べ尽くした上、現在、自宅でヴァイオリン教室を開き、報酬を得ていることまで指摘。地方公務員は副業禁止。初音自身はボランティアだと思っていたのだが、実は生徒の保護者たちは、妹・奏奈かんな(恒松祐里)に報酬を渡していたのだ。
翌日から、初音は朝陽の執拗なスカウト攻撃に遭う。朝から晩まで付きまとう朝陽に、「何度来ていただいても、私は二度とステージに立つつもりはありませんので」とキッパリ断る初音。ところが、何も知らない市長の修介から、児玉交響楽団専属の広報担当に任命されてしまう。もちろん朝陽がそう仕向けたのだ。
意に反して玉響に関わることになってしまった初音。実は朝陽も、意に反して玉響に関わることになっていた。――ことの発端は、1か月前。次期市長のポストを狙っている市議会議員の本宮もとみや雄一ゆういち(津田健次郎)が、「シンフォニーホールのこけら落とし公演は、玉響には荷が重すぎる」と、修介の計画に反対。市にとって玉響は、万年赤字続きで集客力もない“お荷物楽団”なのだ。しかし、地元のオーケストラでの地域活性化こだわる修介は「必ず満席にします。もし満席にできなければ、市長を辞任する!」とたんかを切ってしまう。そこで、ドイツで活躍する指揮者である息子・朝陽を帰国させることを思いつく。母・康子やすこ(石野真子)が危篤だと騙され、慌てて帰国した朝陽は、こけら落としまでの4か月という条件で、半ば強引に玉響の指揮を任されることになったのだった…。

朝陽に連れられて玉響の練習場にやってきた初音は、朝陽から「彼女がこのオケの新しいコンマスです」と紹介されると、いきなりヴァイオリンを渡される。
指揮台に上がる朝陽。団員に向かって静かに言う――「では『ファランドール』はじめから」――朝陽の一振りでオケが主題を奏で始める――。その演奏に初音はやっぱりガッカリ。フレーズはバラバラ、リズムもズレている。でも……それぞれの音は悪くない。初音が感じた玉響の魅力に、朝陽も気づいていた。
そして、2曲目『ウィリアム・テル序曲 スイス軍の行進』。朝陽の合図で初音は反射的にヴァイオリンを構え、軽快なテンポで指先と弓を動かす――その音色に感激して聞きほれる団員たち――。初音が団員たちに目配せをし、庄司しょうじあおい(坂東龍汰)と穂刈ほかり良明よしあき(平田満)を皮切りに、土井どい琢郎たくろう(前野朋哉)、佐々木ささき玲緒れお(瀧内公美)、桃井ももいみどり(濱田マリ)と順に演奏に参加。やがてオケ全体の奏でるハーモニーが膨らみ、跳ねる――!曲が終わって小野田が大きな拍手を送ると、朝陽が初音に言う――「楽しかったって顔してますよ」――。
リハーサルが終わり、朝陽は改めて初音にコンマスを依頼する。しかし、「もう舞台に上がるつもりはない」と答える初音に、朝陽は聞く。「妹さんが望んでいても、ですか?」

奏奈がヴァイオリン教室の月謝を貯金していたのは、初音がいつか演奏活動を再開するときに備えるためだった。初音がヴァイオリンを弾かないのは自分のせい……奏奈はずっとそう思ってきたのだ。
10年前、初音が『高階たかしなフィル』とのクリスマスコンサートに臨もうとした矢先、奏奈が自宅で倒れた。ステージを放り出して病院に駆け付けた初音は、奏奈が心臓を患っていることを初めて知り…。奏奈は気をつかって、自分の苦しみを誰にも言わなかったのだ。「初音の公演につきっきりで気付いてやれなかった…」と嘆く両親の言葉を聞いた初音は、その日から舞台に立たなくなった――。
奏奈のせいじゃないと言う初音に、苛立つ奏奈。「お姉ちゃんが悲劇のヒロインやってる限り、こっちもずっとキツいんだわ。好きならあーだこーだ気にしてないで、オケでもなんでもやりゃいいじゃん!」と言い放つと、「やったよ!」と初音。「…楽しかった。もしかしたら、今までで一番楽しかったかも」素直な初音の言葉に、「私も、お姉ちゃんのヴァイオリン、好きだよ」と微笑む奏奈。10年のわだかまりが解け、初音は――。

翌日。本宮は、シンフォニーホールを建設した高階組の会長・高階たかしな藍子あいこ(原日出子)の元を訪ねていた。
「ホールのこけら落とし公演に、高階フィルをお招きできないかと」――。そして三島は、初音の家の前に立ち、ヴァイオリン教室の看板をじっと見つめ――。
その頃、初音は朝陽に会いにきていた。10年かけ続けたメガネは、もうかけていない。朝陽は、コンマスとして初音に求めることは、ひとつだと言う。
「楽しんでください」
「……はい!」
差し出された朝陽の手に、手を伸ばす初音。ガッチリと初音の手を握ると、子どものような笑顔を見せる朝陽。握手を交わす2人と玉響の未来は…!?

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