書道教授
2010年3月23日放送
京都市内で主に顧客回りをしている銀行員の川上克次(船越英一郎)は、新しく書道教室教授・勝村久子(杉本彩)の担当を任され、その屋敷を訪ねた。久子は、呉服商だった夫を亡くした5年前から、書道教室を始めた優雅な物腰の美人で、書体を見て書いた人の運勢を占う筆占いの特技があるという。政治家や芸能人も、お忍びで屋敷に出入りしている、との噂があった。
仕事の話を終えた川上は、書道を多少嗜んでいたこともあり、久子の字に惚れ込んで、弟子入りを申し出た。完全個人教授だという久子は、新規の弟子は取っていないといったんは断わるが、川上の熱い思いに打たれ、他の弟子や屋敷内の一切を詮索しないとの条件で入門を許可した。
裕福な家の娘・保子(賀来千香子)と結婚し、平凡な夫婦生活を送っていた川上。一見、真面目そうな川上は、実は酒も飲めないのにナイトクラブに通い、ホステスの神谷文子(荻野目慶子)を愛人にしていた。川上は、銀行員という立場を自覚しながらも、カネしか信じられないと言い切る文子との愛欲の蟻地獄に落ちていた。
川上は、得意先の古美術『懐古堂』店主の妻・谷口妙子(手塚理美)が久子の屋敷に入るのを目撃したことから、その事実を確かめてみた。妙子は、人違いの一点張りで、書道も久子も知らない、という。一方、保子は、東京にいた頃に盗まれた母親の形見の高価な着物を着ている女を目撃した、と大騒ぎをしていた。
久子の屋敷に何度か通ううち、川上は、そこに漂う妙な空気が気になり始めた。久子は、お手伝いのスマ(野川由美子)と二人暮らしで、他に植木屋の飯田留吉(嶋田久作)が屋敷に出入りするだけ。川上の耳には、屋敷のどこからか、微かに女たちの声が聞こえてくる。川上は、屋敷内で妙子らしき女を見かけるが、確認することは出来なかった。
しばらくして、妙子の変死体が発見された。気になった川上が久子の口座を調べてみると、書道教室には不釣合いな何億もの金が時々出入りしている。それとなく聞く川上に対し、久子は、詮索しないよう告げるだけだった。
保子から妊娠したと明かされた川上は、文子に別れ話を切り出した。納得すると思いきや、文子は、川上が銀行の金を横領している事をネタにして多額の慰謝料を要求。保子の妊娠を知った文子は、さらに銀行にまで押し掛けるようになった。川上は、文子との関係や横領の事実が露見するのではないか、と不安を募らせる。
その文子が、久子の屋敷を2週間ほど張り込みしたと告げ、川上に興味深い事実を明かした。屋敷にはお茶屋女将の日野千鶴(大場久美子)や、女実業家の安西詩織(岡本麗)が、いろいろな男と一緒に出入りしているという。屋敷に凄い悪事が隠されていると言い切る文子は、呉服商の夫を殺した可能性もある久子を、一緒に強請ろうと川上を誘った。川上が話しに乗らないと知るや、文子は自分も妊娠した、と言い出した。
脅迫に怯える日々を過ごすことになった川上は、悪夢と幻影にうなされ、ついに文子の殺害を計画する…。