高村
「これはあくまでもわたしの想像ですが……乃十阿さんは、逮捕された後、犯行を認めて以来、ずっと黙秘を続けていたので、私が国選弁護人になって、乃十阿さんと接見しても、何も語ってくれませんでした。でも、知的で誠実な人柄は感じられました。最初の接見の時、奥さんとは離婚したいので、そのことも頼むと言われ、わたしはすぐ、奥さんに会いに行きました。奥さんは憔悴しておられましたが、離婚はすぐ承諾されました。その時、3歳になる坊ちゃんがお宅にいらして、奥さんが私のために、ハーブティーを煎れるのを、手伝っていました」
ケイト
尾高
「……!」
ケイト
尾高
「……!」
高村
「犯行現場ではハリヒメソウと言う毒草を乃十阿さんが、共同の飲料タンクの中に入れて、無差別殺人を行ったということになっています。もし、お母さんの手伝いをいつもしていて、水に草を入れることはよいことだと思っていた3歳の子供が、キャンプ場の飲料タンクにハリヒメソウを入れたとしたら」
ケイト
「……その子を庇ったということですか」
高村
「そうです。乃十阿さんが自白したのは、警察が事情を聴きに、乃十阿さんのお宅に行った時のことでした。刑事が、犯行に使われた毒物はハリヒメソウであると言った途端、乃十阿さんが『わたしがやりました』と自白したそうです。いきなり自白したので驚いた、と刑事は言っていました」
ケイト
「……その子を庇ったということですか」
ケイト
「先生は、息子を庇ったのではないかと、乃十阿にお聞きになりましたか?」
高村
「もちろん聞きました。最初に聞いた時、乃十阿さんは一度だけ、動揺したように、わたしには見えましたが、それ以降は二度とそのようなことはなく、自分の犯行であると言う態度は崩しませんでした」
尾高
「子供を庇ったんですか……」
息子の人生を狂わせる記事を書くべきか―?
週刊誌記者として、人として、
今、真実に立ち向かう!
―最終話へ続く―
高村
「そうです。乃十阿さんが自白したのは、警察が事情を聴きに、乃十阿さんのお宅に行った時のことでした。刑事が、犯行に使われた毒物はハリヒメソウであると言った途端、乃十阿さんが『わたしがやりました』と自白したそうです。いきなり自白したので驚いた、と刑事は言っていました」
ケイト
「先生は、息子を庇ったのではないかと、乃十阿にお聞きになりましたか?」
高村
「もちろん聞きました。最初に聞いた時、乃十阿さんは一度だけ、動揺したように、わたしには見えましたが、それ以降は二度とそのようなことはなく、自分の犯行であると言う態度は崩しませんでした」
尾高
「子供を庇ったんですか……」
息子の人生を狂わせる記事を書くべきか―?
週刊誌記者として、人として、
今、真実に立ち向かう!
―最終話へ続く―
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