第100回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。秋田代表の秋田商業は29日に東福岡(福岡)と1回戦で激突。秋田商業のチームの特長を紹介します。
■歴史を表す全国最多出場
全国選手権出場は「46回目」、これは4000近い高体連加盟校の中でも最多の秋田商業。積み重ねた歴史を誇る、まさに「伝統校」です。
100回大会という歴史で見れば「半分近く」と映る数字かもしれませんが、秋田県勢が全国大会に初めて出場したのは1953年度の第31回大会から。つまり、実質70回分ほどの歴史の中での46回出場となれば、これは相当な数です。
ましてや一県一代表制となる第62回大会より前は、お隣・山形県代表との西奥羽大会の勝者のみが全国大会出場を勝ち取りました。積み重ねた「46回」という数字、“秋商半端ないって”。
100回大会となる今年の県大会を戦う中で、秋田商業の小林克監督は「『46』という数字を積み重ねるのが自分の仕事」と話しました。小林監督自身もちょうど30年前の第70回大会の全国選手権に、秋田商業の選手としてピッチに立ちました。
そして現在、伝統ある母校を託され、ましてや「全国最多出場」の看板を背負い、それを更新し続けるプレッシャーは、背負った者にしか分からないものでしょう。伝統をつなぐという大仕事を、後輩にあたる選手たちと見事成し遂げました。
■大きな変化
そんな伝統校に今年、一つの大きな変化がありました。秋田商業サッカー部の一つの象徴だった「全員丸刈り頭」が見られなくなったのです。歴代取材してきた選手たちからも「強制ではなく、あくまでも自主的に」丸刈りにしていると話を聞いていましたが、秋田商業OBでもある小林克監督も、学校が昨年度100周年を迎えたことや時代の流れにも合わせ、今年度から髪型は「選手個人の判断」を求めました。
今もなお自ら望んで丸刈りにしている選手もいますが、髪を伸ばす選手がほとんどです。
■伝統が宿るのは髪型じゃない
変化の年となった2021年、「『髪型のせいで負けた』と周囲に言われたくない」と、秋田商業の選手たちは強い覚悟を持って臨み、見事100回大会の全国切符を掴みました。
「100回大会こそ自分たち伝統校が!」との決意も実りました。髪型が変わっても、秋田商業は強さを示したのです。変わらぬ秋田商業の伝統は、決して髪型だけではありません。むしろ、その魂は他の部分に宿っているということです。
秋田商業といえば、試合終盤でも決して衰えない走力です。笛が鳴るまで走り抜く、その脚に“纏う”のは、赤と白の縞のソックス。1961年度の第45回大会で秋田商業は二度目の全国制覇を達成しました。
まだテレビの映像も白黒だった時代、秋田放送に残る当時の映像にも縞のデザインのソックスは残っています。そのデザインは今もなお変わりません。
歴代の先輩たちも、冬の間は雪の上を走り鍛え抜き、選ばれし選手たちがその縞のソックスでピッチに立ってきました。伝統は足元から今もチームを支えます。
そして、変わらないものはもう一つ。ユニホームの左胸には「秋商」の二文字。このデザインも不変です。どんな厳しい戦いでも、最後まで気持ちを切らさず、彼らは走り続けます。
“秋商魂”は、彼らの左胸に、選手の心に、今も昔も宿っています。最後まで走り続ける彼らの情熱と魂が、100回大会の冬を熱くさせることでしょう。
※写真
左:髪型は変化したがソックスは変わらない秋商イレブン
右上:第45回大会決勝でも縞のソックス
右下:今も左胸に宿る「秋商」魂
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/秋田放送)
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