第100回全国高校サッカー選手権。加盟227校・激戦区大阪府の代表・阪南大学高校は3回戦で夏のIH王者、青森県代表・青森山田高校と対戦。シュート本数では相手を上回ったものの激戦の末に1-3で敗れました。試合を振り返ります。
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試合は阪南大高が立ち上がりから、いつもの「前へ!」という迫力のある攻撃で惜しいシュートシーンを作ります。濱田豪監督も選手に拍手を送り、高校年代最強チームと呼び声の高い青森山田相手にも互角に戦っていました。
しかし、状況が一変したのは前半15分。青森山田・松木玖生選手と競り合ったボールがオウンゴールに。先制されたことでここまでの空気が一変。それでも粘って前半を0-1で折り返します。
「0-1のビハインドは想定内、ただ2点差は一気に厳しくなる」と試合前、濱田監督が話していた中で、後半の立ち上がり3分に痛すぎる2点目を奪われると、後半12分には3点目。このまま王者・青森山田に力を見せられて終わってしまうのか…。いや、そんなことはありませんでした。
後半19分、この試合のまさに「秘策」と話していたロングスローが飛び出します。実はこの試合まで今年度、ロングスローを戦術として使ったことはありませんでした。その松本楓悟選手のロングスローから、J1湘南内定のキャプテン鈴木章斗選手が足を伸ばしてゴールに押し込みます。これで1-3。その後も懸命にゴールに向かいますが逆転とはならず、全国ベスト16で敗れることとなりました。
試合後、濱田監督は「自分たちのサッカーをウチの選手たちはやってくれたし、いつも以上の力を出してくれた。青森山田はイメージしていた通りのリスペクトできるチームだったし、これ以上ない対策もしてきた。やれる限りのことはやった中で勝負の運が足りなかった。まだまだ日本一をとる監督ではなかった。それも終わってから正直に選手に話しました」と振り返りました。
キャプテンの鈴木選手は「まず今一番に感じることは悔しい。ただ、大会を通じてチームとしても個人としても名前を刻むことはできたと思う」と語りました。
■3回戦で姿を消すものの7Gの鈴木章斗選手は1/7現在、大会得点王
鈴木選手は3試合すべてでゴールを奪い、全国の舞台で7得点を挙げました。準決勝前の時点で得点ランキング2位の選手が3得点と、4点差をつけています。
目標としていた大会得点王についても日に日に現実味が増してくる中、鈴木選手は「こうやって点数を取れるのは仲間の走りや、仲間のパスがあってのこと。チーム全員のおかげで取れているので仲間全員に感謝したい」と感謝の気持ちを口にし続けていました。
実は鈴木選手は初戦の丸岡高校戦では5本のシュートで1得点。試合後「もっともっと決められるチャンスがあったので悔しい、次は決められるチャンスを決めて3点は取りたい」と話していました。その言葉を超えるように2回戦の奈良育英高校戦では6本のシュートで5得点。3回戦では1本のシュートチャンスしかなかったものの、それを見事に仕留め1得点。「自分がもっと点を取っていたらと思うと申し訳ない」と敗れた後には語っていましたが、決定力を持ち合わせ将来有望な鈴木選手が100回大会の得点王になれるのか。残り試合の動向に注目です。
■阪南大高の歴史を作ったイレブン
今大会を通じて阪南大高は学校の新たな歴史の1ページを作りました。6大会前の初出場の時は果たせなかった全国での勝利、鈴木選手の1試合5ゴール、全国で奪った12のゴール、挙げた2つの勝利。
大阪大会の時には自分の気持ちをプレーに表現できない選手たちに濱田監督が大きな活を入れましたが、全国大会の前には選手たちが自らミーティングを行うようになり、最後はすべての気持ちをプレーにぶつけられるようになりました。
実は阪南大高は選手権の大阪大会から全国2回戦までの7試合すべてで相手より10本以上シュート本数が多く、敗れることになった3回戦の青森山田戦でもシュート本数9-8で相手を上回っていました。
濱田監督は大阪大会の決勝で4度敗れた悔しさを大阪大会中に語り、選手の奮起を促しました。それによって掴んだ全国出場。3回戦で敗れた後、「生徒に指導するうえで、この全国で経験をしたことが大きいものになった」と語った濱田監督。選手権の全国で勝った喜び、そして敗戦の苦さ。全国の舞台で味わった様々なものは、監督の言葉から、先輩の姿から、学校の雰囲気から、また次の世代に受け継がれていきます。
今大会のテーマである「明日へ。そして未来へ!!!」
阪南大高の選手たち、チームにとって、この全国での経験はどのような“明日”そして“未来”を作ることになるのでしょうか。
※写真は3回戦終了直後の鈴木章斗選手
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/読売テレビ放送)
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