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2021

12/31

【高校サッカー戦記・秋田】秋田商業 伝統と進化を見せたが…及ばず

第100回全国高校サッカー選手権。秋田代表・秋田商業は一回戦で福岡代表・東福岡と対戦し、接戦の末、0-1で敗れました。試合を振り返り、未来を展望します。

    ◇

第36回・45回と2度の全国選手権優勝を誇る秋田商業は、第76・77回・94回と3度全国制覇、福岡代表・東福岡と一回戦で対戦しました。

序盤からリズムをつかんだのは秋田商業でした。伝統の走力を生かし、出足鋭く相手にプレッシャーをかけ、東福岡に自由を与えません。さらに、秋田商業はこの一年磨いてきた「ボールをつなぐ攻撃」を全国大会でもしっかりと発揮し、ペースをつかみました。この「つなぐ」スタイル、実はこの一年間、学校のグラウンドでの「紅白戦」で磨かれたものでした。

今年の秋田県の高校スポーツは、サッカーに限らず、感染症予防対策として、夏のインターハイに出場したチームを除き、夏休み期間の県外遠征が認められませんでした。夏のインターハイ出場を逃していた秋田商業は県外遠征が叶いませんでしたが、そういった条件の中、意識を変え、「練習の質を高めよう」と、紅白戦での切磋琢磨がチーム全体のレベルアップにつながったのです。

この一年間の集大成となる東福岡との一回戦。秋田商業は自分たちのスタイルを出してはいましたが、前半30分、サイドを崩されたところから一瞬のスキを突かれ、先制を許します。

失点直後、ベンチの小林克(かつ)監督は、選手たちに声をかけようとテクニカルエリアの前へ出ていきますが、すぐに踵を返しました。選手たちが自ら円陣を組み、自分たちで話し合いを始めた姿を見て、声をかけずにベンチに戻ったのです。小林監督は「自分たちで試合の中で解決していくこともサッカーという競技は必要。そういった部分を今年の3年はお互いに意見を出し、主張しあいながら、相手の意見を聞いたり、反論したり、サッカーに対して一生懸命取り組んでくれた」と評価していました。まさにそれが表れたシーンでした。

試合は後半も秋田商業は1点を追いかけ何度も絶好機をつくりましたが、ゴールが遠く、0-1で敗れました。

秋田商業・中野宏宣(ひろのぶ)主将は「自分たちが積み上げてきたものはしっかりと出せていたので、このまま続ければ勝つチャンスもあると思っていた」と手応えも感じていました。そして、高校でサッカーは一区切りと決めていた中野主将は「選手権は最高の舞台。1つ1つのプレーに歓声が沸き、選手としてはうれしい限りだった。後輩たちには、またこの舞台に戻ってきてほしい」と次世代へ想いを引き継ぎました。

敗れはしましたが、先輩たちが積み重ねてきた伝統の「走り」に、「ボールをつなぐ」という進化を上積みした秋田商業。小林監督は、3大会前の97回大会・準々決勝で敗れた後に「ゴールを守ることはできたが、ボールを守ることができなかった」と未来への課題を口にしていました。今回の進化も、当時の課題を未来につなげたからこそのものだと思います。

「100回の大会の歴史を全て見てきた人はいないが、それでもつないでつないで、今がある。次の世代が憧れる試合をしたい」と試合前に話していた小林監督。

この経験を未来へ――100回大会は、次の世代につなぐ、新たな秋田商業の姿を見せた大会となりました。

その小林監督は、100回を迎えた全国高校サッカー選手権について、「勝ちたいからこそ選手は努力し、指導者も学び、他校と練習試合もして、切磋琢磨してきた“絆のある大会”。日本全国で選手・指導者・保護者が成長し“サッカー界を動かしてきた大会”」と表現しました。

今大会、秋田商業が見せた進化と変化は、それを見た秋田県内のライバル校にとっても大きな刺激となることでしょう。ここからの切磋琢磨で、秋田県勢がもっと強くなることを期待したいと思います。

(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/秋田放送)
 

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