第100回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。熊本代表の大津は29日に愛知代表の中部大第一と1回戦で激突。大津の注目選手たちとチームの特長を紹介します。
■良い守備から良い攻撃へ、隙のない大津サッカー
大津は県大会4試合32得点無失点で熊本の頂点に立ち、全国の切符をつかみました。決勝では、前半開始早々にコーナーキックから身長191センチの小林俊瑛選手が頭で合わせて先制。さらに、前線からハイプレスを仕掛けボールを奪い、早い切り替えで主導権を握り続けました。小林選手をはじめ高身長の選手が多く、流れの中はもちろん、セットプレーでも得点を生み出せるのが今年の大津の武器の一つです。
■1点の重みを知り、こだわった先の全国舞台
大津は、選手権では1999年から2006年まで県で8連覇、2014年には夏の全国インターハイで準優勝するなど、「公立の雄」としてその名を全国に広めましたが、ここ2年の選手権県大会では悔しい結果が続いていました。2年前は決勝に進んだものの、熊本国府に開始早々決められた1点に泣き全国出場ならず。去年は、0対0で迎えたPK戦の末、ルーテル学院に敗れ、準決勝敗退。あと一歩で全国を逃してきました。
山城朋大監督は「今年のチームでこだわってきたのはシュートにたどり着くラストの部分。サッカーは点をとりあうスポーツなんだということへの執着心について考えてきた」と言います。選手が各々の役割に徹し、何が何でも点をとりに行く。このスタイルを貫き続けた先に、3年ぶりの全国が待っていました。
■「最弱世代」と呼ばれたチームが「これまでにない成長」を遂げた
それでも、今年のチームは決して順風満帆ではありませんでした。「今の3年生たちは1年の時からなかなか勝てなくて、最弱世代といわれたこともあった」と、3年生DFの川副泰樹選手は話します。
そこで、去年の県大会準決勝で敗れた翌日に、新チームでミーティングを行い、「上の代のチームに勝っているところはどこか」を洗い出しました。技術に全く自信がなかったという中で唯一見つかったのが「学年の一体感」でした。チームで一つになり基礎から固めていく中で、夏のインターハイは全国ベスト8、高校年代の最高峰・プレミアリーグWESTでは、Jリーグクラブのユースにも勝利するなど、着実に成長を遂げていきます。
この1年を振り返り、山城監督は「最初はボールも持てないし、ゴールも守れないし、点もとれないし、何もできなかった。でもあったのは、真面目さやひたむきさ。この状況を変えたいという思い。彼らは純粋にそれに向かって努力や話し合いをやってくれた。逃げずにそれに向き合っていた」と、例年以上に団結した選手たちを称えました。
平岡和徳総監督も「去年の12月からの今までの時期までの伸びしろで言えば、これまでにないぐらい彼らは成長してきた」と、その成長ぶりに驚いたそうです。
■まずは県大会を勝って全国へ 選手の言葉ににじむ全国への思い
この1年取材をしてきた中で驚いたことがありました。それは選手の言葉の変化です。10月のある日、キャプテンの森田選手に当時のチームの様子を尋ねると、返ってきたのは「まずは『県大会を勝つこと』にフォーカスして、練習をやっています」という言葉。
これまで、大津サッカー部の部員たちは「全国制覇」という横断幕が掲げられた校内のグラウンドで練習を積み、歴代の選手たちも常に「全国制覇をして日本一の集団になる」と意気込みボールを追いかけてきました。もちろん森田選手も、2月の新人戦の際には「全国制覇を狙って行きたいです」と話していました。しかし、半年以上が経ち、さらには選手権直前という時期に掲げた目標は「県大会をまずは勝つ」。何が何でも全国のピッチに立ちたい、という執念を感じました。
全国のピッチでも、勝利への執念、全国大会への執念を表現します。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/熊本県民テレビ)
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