第100回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。一回戦で、滋賀県代表の草津東は29日に群馬県代表・前橋育英と対戦。滋賀県大会決勝では、常にビハインドを背負いながらも、最後は大逆転。「土壇場に強い」草津東に迫り、全国の戦いを展望します。
■草津東(2年ぶり12回目)
100回大会の滋賀の決勝は、県立高校の草津東と、私立高校の綾羽の一戦。滋賀・高校サッカーの歴史は、県立高校(公立勢)が全盛を誇ってきました。
首都圏開催以降の全国大会でみても、61回大会で守山が3位。73回大会で守山北が3位。79回大会では草津東が準優勝。そして、ついに野洲が84回大会で全国優勝を果たしましたが、これらの高校は全て、県立高校です。
ところが、令和に入り滋賀の高校サッカー界にも新しい波が訪れます。選手権では、前回99回大会、私立高校である近江が県大会で初優勝し、今年のインターハイ県予選でも私立高校の比叡山が初優勝を果たしました。さらに綾羽は、92回大会で滋賀の私立勢で初めて全国大会出場を果たした、滋賀私立勢のパイオニア的存在。
草津東・牛場哲郎監督は「草津東を選んでくれた子どもたちのためにも、公立勢として何とか踏みとどまる」と、並々ならぬ決意をもって臨んだ決勝戦でした。
草津東は、綾羽に先制を許しますが、後半39分に竹下蓮人選手(2年)のゴールで、同点に追いつきます。喜びも束の間、延長前半に綾羽に勝ち越しを許し、スコアは1対2に。
ここから、草津東の土壇場での強さが発揮されます。延長後半5分に藤田大地選手(3年)のゴールで同点に追いつくと、ついには延長後半8分、河野晟也選手(2年)が、大逆転となるゴールを挙げ3対2とし、優勝を決めました。藤田・河野の両選手はいずれも、途中交代で入った選手でした。
近年、選手権・県大会決勝で際立つ草津東の「土壇場での強さ」。96回大会では、後半アディショナルタイムに決勝ゴール。97回大会は、後半アディショナルタイム・ラストワンプレーかという場面で同点に追いつき、延長で勝ち越しました。この2試合も、得点したのは交代で入った選手という点も、今大会と共通しています。
「土壇場での強さ」の要因のひとつが、小林茂樹総監督の存在です。79回大会の全国準優勝監督でもある小林総監督は、牛場監督の「頼れるアドバイザー」となっています。
牛場監督は、草津東OBで小林総監督の教え子でもあります。牛場監督によると、この師弟コンビで、試合前に緻密なゲームプランを練り、交代選手のシミュレーションも行っているとのこと。
小林総監督に決勝直後、話を聞きに行くと「どれだけ試合内容が劣勢でも、80分間トータルで、延長戦に入っても100分間トータルで勝てばいい」と、笑顔で話していたのが印象的でした。
「公立勢としてのプライド」を持ち、12回目の選手権全国大会へと臨む草津東。1回戦は群馬県代表・前橋育英と強敵相手ですが、再び「土壇場での強さ」が発揮されるか、注目されます。
※写真は決勝ゴールを挙げた河野晟也選手
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/びわ湖放送)
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