第100回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。秋田代表の秋田商業は29日の一回戦で東福岡(福岡)と対戦。歴代の秋田県代表は、全国でどんな戦いを繰り広げてきたのか。過去の成績を振り返ります。
■東北の雄
今回、全国最多46回目の全国選手権出場となる秋田県代表・秋田商業。歴代最高成績は「頂点」、つまり全国優勝です。しかも第36回、第45回大会と2回も。(45回大会は、藤枝東(静岡)との両校優勝)
当時「サッカー不毛の地」と言われた雪国・東北に初めて優勝旗をもたらしたのが秋田商業でした。さらに、第64回、65回大会と2年連続でベスト4入り。準決勝の国立競技場に東北勢として初めてたどり着いたのもまた秋田商業。まさに東北を牽引する存在として名をとどろかせました。
■苦しみの時代
秋田県勢で秋田商業の他に全国選手権勝利の経験があるのは、西目(旧・西目農業)のみです。それだけ、秋田商業は秋田のサッカーを引っ張る存在でしたが、徐々に全国大会で結果を残すのが難しい時代が訪れました。
2004年度の第83回大会の一回戦・益田(島根)戦の白星を最後に、全国選手権での勝利から遠ざかったのです。
以降96回大会までの間に秋田商業は10回出場しましたが、1点差負けやPK戦での敗退など、接戦に持ち込みながらも勝ちには届きませんでした。また、その間、西目や新屋といったその他の代表校も勝利に届かず、秋田県勢としても13大会連続初戦敗退と苦しい時代を過ごしました。
■97回大会の“秋商旋風”
そんな県勢に14大会ぶりの勝利をもたらしたのは、やはり秋田商業でした。今から3大会前の第97回大会、同じく過去に全国優勝を誇る名門・四日市中央工業(三重)との一回戦で勝利すると、続く二回戦では92回大会優勝の富山第一に、さらに三回戦でも龍谷(佐賀)にPK戦の末に勝利し、32大会ぶりの準々決勝進出を果たしたのです。
最後は、流通経済大柏(千葉)に接戦で敗れましたが、大会を通じて、「衰えない走力・粘り強い守備・球際の激しさ」を見せ続けた秋田商業には準々決勝敗退時にも大きな拍手が送られました。
実はこの97回大会の2018年度というのは、高校野球・夏の甲子園で、秋田県代表・金足農業が全国準優勝を果たし、“金農旋風”に沸いた年でした。同年の冬、今度はサッカーで秋田商業が久しぶりの初戦突破からの躍進で“秋商旋風”を巻き起こしたのです。
平成最後の一年となったこの2018年、夏には「#平成最後の百姓一揆」というフレーズがSNSで一時流行しましたが、冬には「#平成最後の秋商一揆」が話題を呼んだのでした。
■夢ツナグ選手権
あの97回大会の躍進を当時中学生として目の当たりにし秋田商業に憧れた選手たちが、今回の100回大会の主役となります。DFラインのカギを握る二人の3年生、センターバックの鈴木悠太選手やサイドバックの高嶋綾斗(りょうと)選手は「今度は自分たちが次の世代の憧れに」と口を揃えます。
また、97回大会でベスト8に導いた小林克(かつ)監督は、当時大会終了後「必死にゴールを守ることはできたが、ボールを守ることができなかった」と未来への課題を口にしていました。
「ボールを守る」、つまりボールを失わずに、攻撃を継続すること。今年の秋田商業は、伝統の「走力」とともに、「ボールを守りながらの攻撃」に磨きをかけました。そのつなぐスタイルの中で、MF近野宙安(ゆあん)選手の緩急で相手を揺さぶるドリブルは、チームにとって大きなアクセントにもなることでしょう。
今年のチームは伝統の秋田商業らしさの上に、新たなスタイルも積み上げました。その選手たちの躍動する姿が、また次世代に「秋田商業への憧れ」の伝統もつないでいくことでしょう。
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/秋田放送)
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