第101回全国高校サッカー選手権は12月28日に開幕します。3大会ぶり3回目の佐賀代表となった・龍谷高校。11月13日に行われた佐賀決勝を振り返り、全国での戦いを展望します。
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佐賀決勝は、3大会ぶり3回目の出場を目指す龍谷(準決勝まで3試合12得点3失点)と10大会ぶり14回目の出場を目指す佐賀商業(準決勝まで4試合13得点1失点)の一戦となりました。ハードワークとサイドを起点とした攻撃が特徴、3-5-2の龍谷と、粘り強い守備から攻撃のリズムを作る4-4-2の佐賀商業、選手権決勝では初の対戦カードです。
序盤から攻勢を強めたのは龍谷、前半14分。左ウイングバックの11番・竹内侑希選手(3年)から右ウイングバックの9番・今野友聖選手(3年)へサイドチェンジ、右サイド奥のスペースへ流したところに8番・山並仁貴選手(3年)が走り込み中央へクロス、ニアサイドの20番・中田脩斗選手(3 年)がヘディングシュート。惜しくもゴールポストの右に外れますが、決定機を作ります。
龍谷の両ウイングバックが押し込む展開の中、佐賀商業の松尾智博監督は前半25分ごろからシステムを変更します。アンカーの6番・篠原颯太選手(3年)が2センターバックの中央へ。サイドバックだった3番・田島元稀選手(3年)と4番・山口龍佑選手(3年)がウイングバックとなって3-4-3の形に変更。
サイドの幅を大きく使い、龍谷を押し込みます。前半31分にはセンターバックの5番・木田悠翔選手(3年)がゴール前30mほどの位置から左足を振り抜きミドルシュート。枠を捉えますが、龍谷のゴールキーパー1番・音成啓太選手(3年)が両手を伸ばし、はじき出します。
一進一退の攻防が続き、前半38分には龍谷の山並仁貴選手がループシュートを狙いますが、クロスバーを直撃。ともに決定機を作りながら、前半0―0で折り返します。
後半に入っても接戦の様相は変わらず。両チームの選手の強い思いが球際の激しさに表れます。試合が動いたのは後半12分。佐賀商業から中盤でボールを奪った龍谷は、左インサイドハーフ6番・花田真之介選手(3年)から左ウイングバック竹内侑希選手へつなぎ、その竹内選手が右足クロス、ゴール前の10番・乗冨璃弥哉選手(3年)がヘディングシュート!枠の右側に決まって龍谷が先制点!龍谷のエース・乗冨選手の今大会単独トップに躍り出る7ゴール目で、均衡を破ります。
1点を追いかける状況になった佐賀商業は後半17分、左サイドからの攻撃で14番・前田朔太郎選手(1 年)、8番・中島悠選手(3年)、13番・西村琉維選手(3年)と立て続けにシュート。これを龍谷のフィールドプレーヤー9人がペナルティエリア内で体を張って対応し、ゴールを割らせません。
それでも後半18分、佐賀商業・田島元稀選手が左サイドからクロスを上げ、9番・平山颯汰選手(2年)が点で合わせのヘディングシュート。鋭い軌道のボールはクロスバーを直撃。平山選手は天を仰ぎ、悔しさをあらわにします。
後半19分には、龍谷・今野友聖選手のロングボール、背後へ抜け出した中田脩斗選手がGKをかわしたところ、佐賀商業・篠原颯太選手が体を投げ出し決死のディフェンス。絶体絶命のピンチを防ぎます。
後半29分に佐賀商業は動きます。チームトップ4ゴール、佐賀東との準決勝で2ゴールを決めた長身186cmのフォワード20番・古賀航太郎選手(2年)を投入します。直後の攻撃で、古賀選手を狙ったボールを龍谷DFがはじき、こぼれたところを前田朔太郎選手が左足シュート、しかし枠を捉えられず。後半アディショナルタイムには佐賀商業が右サイド深く、高い位置でのFKを獲得。木田悠翔選手が左足で直接狙うもボールは枠の外へ。
最後まで龍谷ゴールに迫った佐賀商業ですが、あと一歩及ばず。試合終了のホイッスルとともに、両チームの選手がピッチに倒れ込みました。私立龍谷高校が3大会ぶり3度目の県大会制覇、全国大会出場を決めました。
試合後、3大会ぶりの優勝となった龍谷高校の太田恵介監督は「久々に勝ったのですごくうれしい。選手たちの主体性を求めてつくった1年だったので、選手たちが表現してくれたのが本当にうれしかった」と話しました。
決勝点を決めた乗冨選手は「ハーフタイムに監督からも後は自分が仕留めるだけだと言われた。後半は点を取ることだけを考え、竹内のボールも信じながら中に飛び込んでいった結果、しっかり点を取ることができて良かった。佐賀の龍谷高校が強いところを全国に広めていきたい」と意気込みを語りました。
太田監督は今年の3年生について「コロナが始まった年に入学した選手たち。子どもたちの変化をすごく感じ考えさせられる年だった」と振り返ります。「集団で何かを成し遂げることが少ない年代なので、自主性を求めて『自分たちで勝ちにこだわるんだ』と言い続けてきた」と話します。
「厳しく向き合い、指示を与える」指導から、「ヒントを与え、自分たちで答えを出させていく」指導に変えた一年。キャプテンの今野選手は「最初は難しかったが、自分たちで考えて動くようになった。太田監督は自分たちが成長できるように変えてくれた」と話します。
「選手の変化を感じるから指導も面白い。選手たちが自分たちで判断できるようになってきているのが一番うれしい」と選手の成長に目を細める太田監督。決勝でも「選手たちがやれると確信していたので、指示を出す必要はなかった。よくやってくれたと、普段あまり褒めないので褒めたいと思います」と笑顔がこぼれました。
「今まで自分たちがやってきたことを信じて戦った結果が優勝につながったと思う」そう振り返った今野選手は今年の夏からキャプテンを任され、「みんなと一緒に歩んでいこう」と個性の強い仲間たちをまとめてきました。神奈川県から「選手権出場」を目指して龍谷に入学、仲間との寮生活、努力を積み重ねた 3 年間の最後につかんだ夢舞台。優勝決定の瞬間、今野選手の目には嬉し涙があふれました。
97回・98回の県大会連覇から3年。変化を恐れず選手たちと向き合った監督・スタッフ、その思いに応え主体性を持った選手たちが自らの手でつかみ取った全国への切符。101回目の選手権、生まれ変わった龍谷高校は全国に向けて、さらに進化し続けます。
【近年の佐賀県代表の成績】
91回大会で佐賀商業がベスト16
95回・100回大会で佐賀東がベスト16
97回大会で龍谷がベスト16
4大会ぶりの初戦突破、そして学校史上初のベスト8入りを目指す龍谷高校です。
※写真は決勝点を決めた乗冨璃弥哉選手
(取材・文:高校サッカー選手権民放43社/福岡放送)
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